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第352回/空へ続く灯りが見える - あの灯りの向こうに(岸田ソラ)

不思議系
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あの灯りの向こうに

あの灯りの向こうに準推薦
■制作者/岸田ソラ(公開終了)
■容量/243MB

真澄は、過去の事故により記憶の一部を失っていた。そんな彼は、母方の祖父清照が住む幸生村へ、10年ぶりに遊びに行く事にする。真澄の目の前には、彼をよく知るらしい少女が現れたが、真澄には覚えがない。少女、葉月に隠された秘密とは? 定番の「夏に帰省」もの。

ここが○

  • 背景の使い方がいい。
  • 清照じいさんの存在感。
  • 王道ながら小技を効かせてしんみりできるラスト。

ここが×

  • テキスト表示速度が変更できない。
  • ちょっと説明不足の感あり。
  • ラストがあっさり過ぎて余韻に欠ける。

■空へ続く灯りが見える

おなじみ、「夏に帰省」ものです。この手の作品の定番の展開としては、夏に久々に田舎に帰省した主人公が、幼馴染みの少女と会うが、主人公は少女の事を断片的にしか(あるいは全く)覚えていない、というもの。「ポックリが鳴った夏」がまさにそのパターンです。が、「ポックリ」と今作では、同じ夏に帰省ものでもだいぶ雰囲気が異なります。

この作品で地味ながら優れているなあと思うのは、背景画像の使い方です。選択眼もいいですし、長い階段の上に神社があって、その神社から一望できる村の全景、更にラストでは神社の階段にろうそくがともるなど、背景も交えてストーリーに色づけをしていますし、プレイヤーも単なる「舞台が変わった表現」以上に、長い階段の上にあって、景色が最高な神社という明確なイメージがしっかり持てます。こういう点はなおざりにしがちですが、意外と作品の印象に関わって来るものです。

あの灯りの向こうにさてこの作品は、10年ぶりに幸生村にやって来た主人公の真澄が、いきなり美少女から「真澄くんっ!」と抱きつかれるところから始まります。で、当の真澄はその少女、葉月の事を、名前くらいしか覚えていないと。この葉月は村でも有力な家の一人娘ですが、祖父から祭には絶対行くなと言われたり、真澄の祖父清照の話の矛盾が気になったり、何やら大きな秘密がありそう、とすぐに感じさせます。

後半の展開としても、さほど目新しい捻り方をする訳ではありません。が、引っ張りすぎず、さりとて唐突すぎず、ちょうどいいタイミングで事実が明かされるので、プレイヤーが置いてけぼり感を食らう事がありません。この辺りは、作者さんのバランス感覚だと思います。この作品はいわゆるカレンダー消化型ですが、作中の日数で3日の物語ですので、だれたりもしません。

ただ、少々説明不足を感じるところがあったのも事実です。「化け狸って要するに何」とか、「そこまでして化け狸を排除する理由は」とか、「真澄と葉月はどうやって出会ったの」とか。ストーリー自体は王道で堅実な作りですが、あとはそこらで王道のストーリーに上手く隠し味を効かせてみれば、より魅力的な物語になったのでは。特に、真澄と葉月の過去には、もう少し筆を咲いても良かった気がします。また、ラストがちょっとあっさり落ち過ぎで余韻に欠けるかなあ、と。ハッピーエンドではない物語ですので、何かもう一押しがあっても良かったのでは。

なお、この作品はテキスト表示速度が変更できません(メニューには表示速度の項目があるにも関わらず)。NScrならば珍しくない現象ですが(そんな現象が珍しくないというのも、どうかと思うが(笑))、この作品は吉里吉里です。ま、不都合を感じるほどではありませんが、全画面一気表示が好きな人だと、ちょっといらいらしてしまうかも知れません。それと、バックログで発言者の表示位置が妙だったりします。これも困るほどではないので、慣れてください。

絵は、立ち絵、1枚絵ともレベルが高いです。特に水彩画風の塗りの1枚絵は好みですね。アニメ風もいいですが、1枚絵は立ち絵と違って色々なチャレンジができますから、こういう工夫は面白いと思います。背景画像の件も含めて、シナリオ自体は王道ながら、そこら辺で細かく小技が効いています。

それと、主人公の祖父清照が強烈です(笑)。強烈なじいさんと言えば「夏祭りの夜には」の、レモンじいさんこと源吉に匹敵するキャラの濃さ。立ち絵ももちろん素敵ですので(?)、きっと皆さんもお気に入りのキャラになるでしょう。気に入らなくても責任持ちませんけど(笑)。

ツールは吉里吉里。選択肢は序盤に1つあるだけで、プレイ時間は1時間程度。悩みましたが、玄人好みの細かい工夫に敬意を表して「準推薦」。夏に帰省ものは人気のあるジャンルですが、「思い出を探す」系物語が好きという方も、楽しめるのではないでしょうか。
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