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第353回/終わらない夏の終わりに - 夏祭りの夜の夢(夏祭りの夜の夢制作委員会)

不思議系
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夏祭りの夜の夢

夏祭りの夜の夢■制作者/夏祭りの夜の夢制作委員会(ダウンロード
■容量/79.9MB

ある離島の村。今年も夏祭りの季節がやって来た。島の中学生、雨宮隆二は幼馴染み2人と、祭りに参加するはずだった。しかし隆二はここのところ見る妙な夢が気になっていた。そんな中、隆二の目の前に現れた謎の女性。彼女の正体は? そして隆二の夢の秘密は? 夏と祭、黄金の組み合わせの短編ノベル。

ここが○

  • 短いがメリハリのある展開。
  • 主人公の素朴さと、来栖のクールさの面白いコンビネーション。
  • 短編ながらしっかり作られた分岐。

ここが×

  • 尺の割に色々詰め込んで、説明不足なところが。
  • 幼馴染み2人の影がちょっと薄い。
  • 状況伏線にもう少し凝っても良かったのでは。

■終わらない夏の終わりに

フリーのノベルゲームと言えば、これぞ黄金のパターンとも言える、「夏」「離島」「夏祭り」。このキーワードを全部満たすと言えば「君と僕の夏休み」ですが、「夏の離島」「夏祭りと別れ」みたいなテーマだけでも、挙げるのが大変になるくらいの作品が出て来るでしょう(最近では「あの灯りの向こうに」「夏祭りの夜には」辺りか)。物語の作りやすさというか、「何か事件が起きる感じ」と言えば、やはり夏なんでしょうか。

さて今作ですが、のどかな夏の物語かと思っていると、実は結構突拍子もない話です。SFという程サイエンスではないので、どちらかと言えばファンタジーとか伝奇寄りの、ちょっと不思議ストーリーという感じです。序盤で、来栖という謎の女性が現れますが、彼女の姿は主人公隆二以外には見えません。ここのところ見る夢に不安感を持っていた隆二は、来栖の後を追いかけ……。こんな感じで物語が動き始めます。

夏祭りの夜の夢主人公の隆二は、この手の物語ではありがちと言えばありがちな朴念仁なのですが、薄味な性格が多い主人公の中で珍しく主張が強いキャラで、かつ嫌味を感じさせないキャラ造形です。クールな来栖とのやり取りはなかなか楽しめます。主人公に立ち絵があるのはあまりないと思いますが、立ち絵がまた素朴をそのまま絵に描いたような外見で、イメージぴったりです。

シナリオは短いです。短いのですが、一場面だけ描いて終わり、みたいな物語ではなく、ちゃんと盛り上がりどころもあり、落としどころもあります。ただ、長さの割りに設定とか展開を盛り込み過ぎた感もあるので、若干説明不足を感じたり、唐突感がある箇所もあります。いきなり組織とか案内人とか出て来ますし、更に敵の存在などについても十分な説明がないので、下手したら読み手が置いてけぼりを食らう可能性も否定しきれません。

それと、隆二と来栖のコンビネーションは面白いのですが、反面幼馴染みの2人との絡みがちょっと薄いのが気にかかります。もしもうちょっと尺があればそこらも十分描写できたのではないでしょうか。特に表ヒロインの加奈子とのエピソードは、もうちょっと何か描写があって良かった気がします。ある意味加奈子の想いが物語の中枢に関わるんですが、あんまり前半にそういう描写がないんですよね。

せっかくグッドエンドでは良いラストシーン(そしてバッドエンドの怖さも結構なものである。ラストの1枚絵が怖い)を見せてくれるのですから、少しそこが惜しまれます。せめて過去のエピソードについては、序盤から何か伏線があっても良かった気がしますね。こういう「あるシーンを生かすための事前の仕込み」を、私は勝手に「状況伏線」と呼んでいますが、そこに凝ってみれば面白かったように思います。

しかし全体としては、堅実に組まれ、かつ十分エンターテインメント性のある物語に仕上がっています。分岐もラスト一発で分岐するだけのような適当なものではなく、3つのエンドはどれもしっかり作り込まれています。バッド、グッド、トゥルーという感じでしょうか。グッドエンドが一番綺麗な終わり方ですが、トゥルーエンドも「ifストーリー」みたいな感じで、あっさり終わるながらも良い余韻があります。どうやら作者さんは女性の方のようですが、立ち絵や一枚絵も女性らしい丁寧さがあって、特に1枚絵は物語性が感じられて素敵です。

プレイ時間は40分程度。ツールはLive Makerで、エンディングは3つです。既読スキップを使えば攻略は難しくないでしょう。ただしプロローグの時に右クリックが使えないのが、ちょっと不便に感じました。プロローグをスキップする時はctrlキーを使いましょう。短い時間でしっかり起伏を楽しめる作品です。
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