第368回/君と一緒にまたこの道を - かえりみち(ばするぅむ) - 日常
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第368回/君と一緒にまたこの道を - かえりみち(ばするぅむ)

日常
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かえりみち

かえりみち■制作者/ばするぅむ(ダウンロード
■容量/225MB

舞台は鹿児島県の霧島。大学受験を控えた圭一とほのかは、いつもと同じように通い慣れた通学路を歩いていた。小学校の頃から2人で歩いた道、2人の他愛ない会話。ずっと続くと思っていたそんな毎日が、ある日突然変わり始めた。どこか懐かしさを感じる、地方都市を舞台にした短編ノベル。

ここが○

  • そこはかとなく懐かしさを感じさせる雰囲気。
  • 地元に愛着を感じる主人公に共感できる。
  • 端折り方とテンポが適切で、快適に読める。

ここが×

  • 読後感がいまいちすっきりしない。
  • 恋愛関係に発展したりはしないので、ちょっと消化不良感。
  • もう少し起伏があっても良かった気がする。

■君と一緒にまたこの道を

つい最近、鹿児島県鹿児島市を舞台にした「灰の降る街」という作品をご紹介しましたが、またも舞台が鹿児島の作品です。今度の舞台は霧島。鹿児島市だと桜島ですが、同じ鹿児島でもかなりイメージが違います。鹿児島は私は中学校の修学旅行で一度行ったきりですが、大変個性の強い街で非常に印象に残っています。ちなみに、作中にあの「ほしのの。」が映画作品として登場するというお遊びがあります。「ほしのの。」を読んだ方なら、「ああ、あそこの場面か」とにやりとできるかも知れません。

この手の実在都市を使った作品は、色々切り口があるんですが、この作品の場合は非常に強く「郷愁」を感じさせる作品です。主人公は受験を控えて県外の大学を受けようと考えている高校3年生の男の子です。幼馴染みであるほのかとの、何気ない日常や、迫り来る受験、故郷を離れないといけないが実感が持てない、変わる事への不安など、どれも物語を構成するにあたっては実に些細な要素で、これを上手く作って物語を作るのは実は大変難しいのですが、この作品はその料理の仕方が非常に上手いですね。

かえりみちいわゆる「カレンダー消化型」に分類される作品で、高3の夏から受験までが描かれるのですが、描かれるのは必要最小限の日だけです。その日その日に、別段大きなイベントとは言えないまでも、物語の鍵となる描写が的確に挿入されるので、全体の骨組みが非常にしっかりした印象を受けます。キャラクター2人だけでこういう物語は、なかなか作れるものではありません。

作品説明を見ると、何でもない日常がだらだら続くだけ、みたいな印象を受けるかも知れませんが、そんな事はありません。盛り込むべきイベントの選択と、端折り方が上手く、短い時間で過不足なく物語を組み上げています。しかも描いているテーマが、大げさとは言えないものですし、そこに懐かしさをも感じさせる筆致は大したものだと思います。作者さんのセンスを感じます。大学を受験した時の、地元を懐かしむ圭一の描写など、端々に「地元愛」を感じさせてくれるのも好感を持てます。

その一方、エンターテインメント性という視点から見ると、少々すっきりしないところがあるのも事実です。圭一とほのかは、ずっと一緒に登校してきたという、ノベルゲームではよくある幼なじみ同士なのですが、恋愛関係に発展したりしません。なのでと言いますか、終わり方にイマイチ満足感を欠くんですよね(一貫して通学路にこだわり、通学路で終わる終わり方自体は綺麗で、余韻があると言えばあるんですが)。

途中、ほのかが進路で悩んで、それまでの日常が一変するところなど、非常にこの手の作品としては上手い作りですし、ここに恋愛要素を入れても全然不自然にならないと思います(恋愛要素が不自然に盛り込まれているようにしか見えない作品も時にはあるのです)。これは恋愛要素を盛り込んでみた方が、絶対にラストがもっと綺麗に決まったと思うのですが……。

あるいは、そこは読者の想像に任せてしまって、あくまで作者さんが描きたいのは「懐かしさ」なのかも知れません。実は「カレンダー消化型」なので、日付が表示されるのですが、最初に表示される日付が2005年なんですよね。つまり9年前です。じゃあ2014年が最後に描かれるかと言えばさにあらず。つまり圭一とほのかの2014年は皆さんで想像してくださいねと、そういう事なのかも知れませんね。

そういう意味で、故郷を離れて今都会で暮らしている人には、かなり響くものがあるかも知れません。幸いにしてというか、私は育った街に今でも住んでいるのですが(笑)。ツールは吉里吉里。選択肢はなく、プレイ時間は45分から1時間くらい。エンターテインメント性に一押しあれば、準推薦にも値する作品だと思います。故郷を懐かしみたい時にどうぞ。
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