第388回/みんな大好きだよ - 幽明界を異にする(奈落3丁目) - シリアス・感動系
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第388回/みんな大好きだよ - 幽明界を異にする(奈落3丁目)

シリアス・感動系
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幽明界を異にする

幽明界を異にする推薦
■制作者/奈落3丁目(ダウンロード
■容量/69.3MB

高校生の早水悠にはある秘密があった。何と彼女には、幽霊を見る能力があるのだ。ある日、世間を騒がせている女子高生連続殺人事件の被害者、新島みちるが「自分を殺した犯人をつかまえて欲しい」と、幽霊となって悠の目の前に現れた。悠は果たして犯人をつかまえられるのか。

ここが○

  • 悠の心の成長や、みちるとの友情がとてもよく描けている。
  • 無駄な要素がなく、作中の設定がほぼもれなく物語で生かされている。
  • 緊迫感のある後半と、綺麗なラスト。

ここが×

  • 序盤の悠は取っ付きやすいとは言い難いので、少し読みにくい。
  • 犯人は読んでいればすぐに分かってしまう。
  • あまり意味がない気がする一部の分岐。

■みんな大好きだよ

最近短い作品が続きましたので、中編は久々ですね。そしてこの作品は、殺人事件の被害者であるみちるが、主人公の悠(名前が「はやみゆう」なので、往年のアイドルを思い出してしまった(笑))に、「自分を殺した犯人を見つけて欲しい」と頼む、という出だし。これは「ユウレイのいた道」とまったく同じです。そして、主人公の女子高生悠の妙にさめた態度と、幽霊ものという器は「幽霊には祈らない」と似た味を感じさせます。

そんな風に書いてしまうと、なんだか二番煎じのように聞こえてしまいますが、今作は上記二作のいいところを併せ持ち、更にこの作品ならではの良さをプラスして、とても素晴らしい作品に仕上がっています。この作品は、Twitterで作者さん直々にプレイして欲しい旨を伝えられたんですが、作者さんとしても自信作だったのかも知れません。

幽明界を異にする冒頭の悠は、「幽霊には祈らない」の桜同様、可愛げがなくて非常に取っ付きにくく、感情移入がしにくいでしょう。文章が固めなのも、その傾向に拍車をかけているところがあります。とは言え、その前半がないと後半が全然生きませんから、前半は我慢して読んでください(笑)。

幽霊のみちるは、悠とは正反対の能天気なキャラクターです。悠とのコンビネーションは前半は良いとは言えず、読んでいてもやきもきさせられます。が、中盤のあるイベントで2人の関係が激変するのですが、そのイベントの描き方が見事の一語に尽きます。それまでクール一辺倒だった悠に心境の変化が生じ、犯人を絶対に見つける事を誓う、そこへ至る描写が非常にいいのです。

それはひとえに、前半での悠のドライとも言える心情描写、そして直前のみちるとの、お互いの価値観のずれによる大げんかによる描写があったからです。伏線に、意外なシナリオ展開を増幅させるための「物語伏線」、特定のシーンを生かすための「状況伏線」があるとすれば、この作品の場合は状況伏線としての使い方に加えて、キャラの心情をより際立たせるための「心情伏線」とも言うべき使い方です。こういう伏線の使い方があるお陰で、自分の言動を後悔してみちるに歩み寄る悠の言動や心情が嘘っぽくないのです。大した筆力だと思います。

これを最も顕著に感じたのは中盤での葬儀イベントなのですが、これは終盤でも随所に使われています。ラストシーンなんかもそうですね。それまでの悠の態度や、みちるとの会話が伏線となって、最後の悠の態度や言動に、凄く自然さを感じさせて、エンディングの綺麗さや悠の成長ぶりが見事に描き出されています。

また、作中に色々な要素を盛り込んで、盛り込んでみたはいいけど消火しきれていない作品も多い中、この作品はほぼ全ての要素が作中できちんと生かされています。祖母との思い出にしろ、母との関係にしろ、上手く物語に取り込まれていて感心させられました。ただ、先輩幽霊の2人のラストでの扱いは、ちょっとあっさりしすぎているというか、みちるの引き立て役になってしまっていたような気がしなくもありませんが(笑)。

それと、ミステリー仕立てではありますが、犯人は読んでいればすぐに分かってしまうと思います。もっとも、ミステリーとしての面白さは多分追及して作られていないのでしょう。トリックがどうこうとかアリバイがどうこうの面白さはなく、その辺りはストレートです。サスペンスものとしても普通と言えば普通なのですが、とにかく悠とみちるの友情や、悠の成長の描き方がとても上手く、それだけでお腹いっぱい楽しめる作品です。

ツールは吉里吉里。プレイ時間は2~3時間で、エンディングは7つ。基本的にはほぼ「即死エンド」ばかりですし、エンド後には登場キャラが一言ヒントを教えてくれるので、攻略は全然難しくありません。即死エンドばかりで、一部のエンディングにはあまり意味がないような気がしなくもないのですが、久々の「推薦」作です。どうぞ楽しんでください。

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