第395回/雨音は君のメッセージ - モノラル虹彩(現屋) - 学園・青春
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第395回/雨音は君のメッセージ - モノラル虹彩(現屋)

学園・青春
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モノラル虹彩

モノラル虹彩■制作者/現屋(ダウンロード
■ジャンル/豪雨惜別青春ノベル
■プレイ時間/15分

その日は朝から酷い豪雨で、学校も休校になるほどだった。そのため、本来なら別れを告げられないはずの相手に、最後会う事ができる。そう思った少女は、雨の中外に飛び出した。彼女はずっと、彼に嘘を吐いていたのだ。彼女と彼の、わずかな最後のひと時が、ゆっくりと流れて行く。整った文章と静かな雰囲気の短編青春ノベル。

ここが○

  • 綺麗で読みやすい文章。
  • 雨から晴れへと移り変わるラストの雰囲気。
  • 綺麗な最後の1枚絵。

ここが×

  • 多少表現に捻り過ぎたところがあるかも。
  • 2人の関係に、あと一歩の描写があれば。
  • 正直「それは流石に気付くのでは」と感じた。

■雨音は君のメッセージ

私は、時々無性に、立ち絵がない文章だけのノベルゲームを読みたくなります。立ち絵があり、システムが凝った同人ゲームもいいですが、文章だけの作品には、立ち絵がある作品にはない味があり、独特のプレイ感覚もあるのです。しばらく立ち絵がある作品が続きましたので、今回は文章だけの作品です。

豪雨の中、主人公の女の子が出かけて行くという序盤です。文章だけの作品は、文章の表示領域が広いため、立ち絵がある作品よりも文章が凝っていて、それだけで読み応えがある作品が多いですが、この作品も御多分に漏れず、整った綺麗な文章が印象的です。中高生の女の子の一人称にしては、ちょっと表現を捻り過ぎかなと思える箇所もありましたが、全体的に読み心地のいい文章で、ストレスはありません。

モノラル虹彩さて物語は、主人公がクラスメイトの男子生徒に会いに行くという展開です。実は主人公にはちょっとした秘密があり、それによって学校で起こっていた出来事も、中盤で明らかになります。短編作品ではありますが、徐々に情報を出して読み手を引っ張るやり方は、上手いなあと感じました。

更にラストで、主人公が彼に対して吐いていた「嘘」が明らかになります。その理由が、何とも中高生らしい純粋なもので、別れのシーンの切なさを強めてくれています。大人の物語ならばちょっと純粋過ぎて現実味がないかも知れませんが、後半の展開や、彼女の嘘が何であるか分かるところなどは、中高生の純粋さがよく出ていて、いいシーンだと思いました。

ただ、主人公の吐いた嘘についてですが、流石に一年いたら気付かれるのではないかと思ってしまいました(仕事柄そういう人をたくさん見てるので……)。あるいは、彼女は生まれつきなので、巧みにカムフラージュできたのかも知れませんが。本当に彼女のような状況であれば、上手く嘘を吐き続けるのは、かなり大変な気がします。

それと、二人の過ごした一年について、少し描写があっても良かったんじゃないかな、という気がしました。彼女が嘘を吐いた理由や、彼が彼女のそばにいた状況なども、会話の中でさらっと語られるだけなので、ここに一つ二つ、回想描写でもあれば、最後の感銘がもっと高まったのではないかな、と。まあ、この辺りは好き嫌いが分かれるところかも知れません。今のままの淡々とした描写こそがこの作品の味である、という気もしますし、終盤まで淡々としているから、最後のシーンが生きるのだ、とも言える気がします。

そのラストシーン。降り続いていた雨が上がり、最後に表示される1枚絵が非常に綺麗で、大変効果的。「1枚絵はこう使え」という、見本のような演出です。別れの物語なので、ちょっと寂しいラストなのですが、雨上がりの爽やかさの演出が、これから先の希望も暗示していて素敵です。

短編であり、物語というよりはほぼ「一場面」くらいの描写でありながら、しっかり流れを作り、中盤以降は意外な事実も提示し、終盤では秘密を読者に示して綺麗に締めるという、大変流れの整った作品です。プレイ時間は短いですが、一本の作品を読んだという「満腹感」は大きいと思います。

プレイ時間は15分くらいで、ツールは吉里吉里です。何故かテキスト表示速度が変えられないのがちょっと気になりましたが、この作品は、飛ばして読まずに、一文一文噛み締めながらじっくりと読む方がいいので、テキスト表示はあえて変えないままの方がいいのかも知れません。雨の日に、しっかり味わいながらプレイしてみてください。
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