第396回/細くても繋がる絆もある - 世界の煌きを零すように(おかひら) - シリアス・感動系
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第396回/細くても繋がる絆もある - 世界の煌きを零すように(おかひら)

シリアス・感動系
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世界の煌きを零すように

世界の煌きを零すように準推薦
■制作者/おかひら(ダウンロード
■ジャンル/メディカルヒューマンノベル
■プレイ時間/20分

人間の健康を管理し、言葉を喋り、身の回りの世話をするメディカルヒューマンロボットという存在が一般的になった世界の事。ロボットなのに、ロボットとは思えない感情を表に出すこともある彼ら。そんなロボットと、人間の織り成す4つの小さな物語。

ここが○

  • 大げさ過ぎず、それでいて整った筆致。
  • 描写量は少ないながらも魅力的なキャラクター。
  • バラエティ豊かな4本の物語が、ささやかに繋がっている構成の上手さ。

ここが×

  • 地味と言えば地味な物語。
  • せっかくだから、構成にもう一工夫あっても面白かったかも。
  • 2本目の物語は、もうちょっと交流を踏み込んで描いて欲しかった。

■細くても繋がる絆もある

今回も、絵がない作品のご紹介。絵がない作品は、文章力がなかったらお話にならないため、おしなべて文章力が高い作品が多いような印象ですが、この作品も例に漏れず、非常に整った文章です。とは言え、変に捻った文章ではなく、大変読みやすい文章でもあります。

この作品は、一つのテーマを元にしたオムニバス短編集です。人間の健康を管理し、世話もする「メディカルヒューマンロボット」という存在が一般的になった世界の、小さな物語。3本のシナリオを読めば、4本目のシナリオが選択肢に現れるという作りです。

世界の煌きを零すように最初の物語「オンリーワン」。自分の世話をするロボットに「カレン」と名付けた女性と、カレンの交流のお話。取り立てて大きなイベントが起こるわけでもなく、お話は淡々と流れて行きますが、淡々と流れるからこその美しさを感じます。大げさ過ぎない文章が、非常にマッチしています。

2本目の「震慄」。これと同じようなとは言わないまでも、似たような事例は、実は現在でも起こっているのではないでしょうか。そう思うと、ちょっと怖くなるような気もします。ただ欲を言えば、あれだけの描写で「恋愛」と言われても、少し説得力を欠く感があるので、2人(1人と1台?)の交流の様子を、もうちょっとしっかり描いて欲しかったような気もします。

3本目は「見えなくとも」。盲目でありながら素直な少年が、彼を守るロボットに感謝の品を送ろうとするという、心がほんのり温かくなる交流の物語。短いながら、オチも綺麗で良好な読後感です。表現も過不足なく、これはとてもいい話だと思いました。ちょっとO.ヘンリーっぽいところを感じました。

そしてその3本を読んだ後に選択できる、4本目の物語が「世界の煌きを零すように」。作品タイトルになっているだけあって、この作品で一番表現しなかった物語であると思われます。この4本目の物語によって、この作品の短編が緩く繋がっている事が分かります。単体のエピソードとして感動的であるのもさる事ながら、全体に一本の筋を通す、締めくくりとしてとてもよくできたお話でした。

このように、短編3本の後にまとめのエピソードで全体が緩く繋がるという構成が、とても良くできていますし、それぞれの短編も、物語としてしっかりできているので、読後感がとても良いですね。悲しい終わり方であると言う事もできますが、どこかに希望も感じさせる前向きな力も感じさせます。

ただ、全体が緩く繋がっているとは言え、全体を読んだ事で、何か特別な謎が明らかになる訳でもなく、あくまで柔らかく繋がるだけです。それに3本目のお話だけは(お話の出来栄えは置いておきまして)、ちょっと蚊帳の外という印象もあります。せっかくここまで良い構成の作品なのですから、全体をもう少ししっかり結んでみても面白かったのではないでしょうか。とは言え、このほのかな繋がりこそがこの作品の味であるような気もしますから、これをあれこれいじるのは蛇足であるような気がしなくもありませんね。このままで十分完成しているのかも知れません。

描写量は少ないながら、生き生きとしていてキャラクターもみんな魅力的。読んでいる間も良い終わってからも心地よい感覚を味わえる小品集です。ツールはLive Makerで、選択肢はなく、プレイ時間は全部で20分ほど。短いながら、とても充実した読みごこちの作品ですし、純粋なハッピーエンドとは言えなくとも、とても読後感が温かい作品です。シリアスでありながら感動できる短編をお探しの方には、広くお勧めします。
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