第398回/その一段の距離、無限大 - 3段目のきみ、5段目のぼく。(りっと) - 不思議系
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第398回/その一段の距離、無限大 - 3段目のきみ、5段目のぼく。(りっと)

不思議系
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3段目のきみ、5段目のぼく。

3段目のきみ、5段目のぼく。■制作者/りっと(ダウンロード
■ジャンル/ハートウォーミング階段ノベル
■プレイ時間/15分

ある中学校の旧校舎の階段で会話をしている空木くんと寧々ちゃん。特に寧々のちょっと暴走気味な反応に、空木ずれていながらも楽しげな会話が弾む二人だったが、実は二人には秘密が。階段の怪談、という程には怖くなく、むしろちょっと寂しくて心が温まる短編物語。

ここが○

  • 立ち絵がないのに非常によく描けているキャラクター。
  • 短いながら、強く余韻を引く終わり方。
  • 最後まで読めば、ちゃんと救いのあるラストが待っている。

ここが×

  • フォントサイズが小さくて読みにくい。
  • 場面が一切動かないので、単調ではある。
  • ぶっ飛びすぎの感もある寧々。

■その一段の距離、無限大

私は、最近は平日は朝にノベルゲームをプレイしています。もちろん、土日は少し長い作品もプレイしますが、そういう訳ですのでどうしても短編が主体になるのですが、これも短いながら、とても良い読後感の作品でした。朝からこういう作品を読むと、一日気持ちよく過ごせる気がします。

この作品は、冒頭はよくある学園もの風です。中学校の旧校舎の階段で、男子生徒の空木くんと女子生徒の寧々ちゃんの会話からスタートするのですが、寧々ちゃんの反応が、ちょっとというかかなりぶっ飛んでいます。人によってはここで「何だこれは?」と思う人がいるかも知れません。少し「IN A DAY~先輩と小説と」の亜子に似ている雰囲気がありますね。あちらは先輩でしたけど。

3段目のきみ、5段目のぼく。しかし読み始めてすぐに、空木と寧々の秘密が明らかになります。この作品は、全部で3回プレイする事になりますが、1周目のラストは、それまでのドタバタの空気が急にフェードアウトしていって暗転する様子が、非常に寂寥感を醸し出しており、わずか5分の物語にも関わらず、この1周目だけでも完成していると言ってもいいほどです。

と言っても、そこで終わってしまっては、流石に取り上げるほどでもなかったのですが、2周目と3周目が、1周目の余韻を更に高め、読後感を良好なものにしています。要は2周目は、別の視点から事件を語ったものなのですが、こういう事をすると、得てして蛇足になりがちなところを、上手い筆致で1周目を上手に支えつつ、更にこの短編に奥行きを増す事に成功していると思います。

2周目で何より心に残ったのは、寧々の最期のシーンです。1周目での描写の通り、最期の瞬間までちょっとおちゃらけた独白を続ける寧々ですが、だからこそと言いますか、寂しさと後悔が読み手に伝わってきて、心を打ちます。立ち絵も何もないこの短さで、こういう描写はなかなかできるものではありません。むしろ「立ち絵がないからこそ」と言ってもいいでしょう。

そして3周目。この3周目で、この二人にちゃんと救いが訪れます。ifの世界なのか、実際に起こった奇跡なのかは分かりません。そこは読み手の判断でいいと思います。これを蛇足と見るか補足と見るかは人それぞれでしょうが、私は後者の考えを取りたいと思います。こういう物語は、やはりどこかに救いが欲しいですから。

難点ですが、ウィンドウサイズが640x480と小さく、それはそれで全然構わないのですが(文字だけの作品の場合、ウィンドウサイズが大きすぎるとかえって読み辛くなるので)、フォントサイズまでもが非常に小さいため、ちょっと読みにくいです。この手の文章だけの作品の場合、ウィンドウは小さくても全然構わないのですが、このフォントサイズはあまり読み手に優しくない気がします。

また、背景画像は階段のたった1枚しかなく、2枚の画面写真を見ても分かる通り、見た目も内容も大変地味な物語です。なので、動きのある派手な物語をお求めの方には、向きません。個人的には、空木と寧々のキャラクター描写がよく出来ているので、十分楽しめましたし、背景画像の地味さの割りに、意外と物語としては「動く」と思いますが。

ツールはLive Makerです。プレイ時間は15分くらいで、選択肢はありません。これほど短い作品を取り上げることは滅多にないのですが(3分の掌編なんて、感想の書きようがないですから)、この作品はこの短さにも関わらず、充実した読後感を持った佳作だったと思います。空き時間に気軽にプレイできますから、忙しくて心の余裕がない方、心の清涼剤として、時間がある時にちょっとプレイしてみてください。
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