第402回/世界の終わりは一人じゃない - 僕が見届けた世界の終わり(琥珀色シンドローム) - 日常
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第402回/世界の終わりは一人じゃない - 僕が見届けた世界の終わり(琥珀色シンドローム)

日常
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僕が見届けた世界の終わり

僕が見届けた世界の終わり■制作者/琥珀色シンドローム(ダウンロード
■ジャンル/世界の終わり系日常ノベル
■プレイ時間/30分

中学生受験に失敗し、公立中学校に入学したばかりの康輝は、人生にやる気を失い、自殺すら考えていた。ある日ふと踏み入れた洋館で、儚げな雰囲気をたたえたお姉さんと出会う。彼女は美味しい紅茶をご馳走してくれた後、「世界の終わりを見たくない?」と言った。アナログな雰囲気の絵が独特の雰囲気を醸し出す日常ノベル。

ここが○

  • 独特の絵柄の立ち絵や背景。
  • 主人公とお姉さんの心温まる関係の描写。
  • 前向きになれるラスト。

ここが×

  • 主人公や両親の変わり方が急すぎるような。
  • 中盤からの展開が非常に急ぎ足。
  • 操作性がいまいち。

■世界の終わりは一人じゃない

立ち絵があるノベルゲームでも、背景画像は普通写真を使うものですが、この作品は背景画像までもが手描きという、珍しい一作です。全部手描きで、立ち絵も背景も、流行のデジタル風の絵柄ではなく、アナログ風。これが非常にいい味を出していて、絵本でも読んでいるようです。お姉さんの一枚絵は複数枚あって、短編にしてはとても豪華です。

主人公は中学生になったばかりの北瀬康輝。中学受験に失敗した事で両親からも責められ、入学した公立中学校でも友達を作れず孤立しており、自殺を考えながらとある洋館へ足を踏み入れる、というスタートです。

僕が見届けた世界の終わりそこで出会ったお姉さんと、しばらくお茶会と雑談を楽しんだ後、お姉さんが「世界の終わりを見てみない?」という一言。これだけ見ると、いわゆる「セカイ系」の物語かと思いきや、実は普通の日常物語です。このお姉さんとのお茶会の様子が、適度に紅茶の事も詳しく描写されていて、和みます。

また、お姉さんのキャラクターがいいですね。この手のちょっと人嫌いタイプの主人公の場合、下手をすると読み手が疲れる事があるのですが、この作品は主人公が中学一年生である事に加え、お姉さんの「聞き上手」なところが、上手く主人公と読み手を「いなして」、軽快な読み心地を実現しています。事実、序盤から主人公が自殺を考えている重めのテーマではあるんですが、それを思わせず、すいすいと読めるのが美点です。

反面、主人公の問題が、お姉さんの一言であっさり解決してしまったのは、ちょっと気になりました。両親も一言であっさり心変わりしてしまいますし。まあ、人生が上手くいかない時なんて、些細な食い違いな事が多いですから、案外そんなものなのかも知れませんが、そこはもう少し文字数を割いて描写して欲しい気もしました。

後半は、物語は更に重めの展開となり、タイトルの意味も分かってきます。ここのお姉さんの行動(康輝に「世界の終わりを見せる」と言った言葉の真意云々)も、読了後に冷静に考えると「何じゃそりゃ?」と首を傾げなくもないのですが、読んでいる最中は不思議とほとんど気になりません。現実味という意味では少し問題のある設定、言動でも、物語の雰囲気に上手く合わせられれば、読んでいる間はそれを読み手に気にならせない事ができるという、いいお手本です。この辺りの描き方は、とても参考になる事が多いと思います。

ラストは寂しい終わり方ではあるのですが、ラストシーンとその後のエンドロールがとても綺麗で、希望を感じさせるエンディングです。短編としては、非常にいい読後感、爽やかな感動を味わわせてくれる作品で、中盤の展開にやちょっと難があったりするのも、結構どうでもよくなってきます(笑)。そう言う意味で、とても作りのいい作品だと思いました。

難点ですが、操作性がどうもよくありません。ティラノスクリプト(ティラノビルダー)なのですが、マウスホイールが読み返しや文章送りに使えず、文字表示速度も変えられません。久々にノベルゲームの世界に戻ってきているので、これがティラノスクリプトというツールの仕様なのかどうかは分かりませんが、このツールの作品をいくつかプレイした感じだと、どうも共通して抱える点のようです。新しいツールのようですので、これからの発展に期待します。

プレイ時間は30分弱だと思います。選択肢はありません。上でも書いたように、冷静に考えるとちょっとおかしいところもあるのですが、プレイ中はそれがあまり気にならないという、巧みな作りの短編物語です。短くても、前向きな感動系物語が読みたい方は、読んでみてください。
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