第403回/止まった時間、刻まれる想い - 盗まれた冬(霧氷こあ) - ファンタジー
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第403回/止まった時間、刻まれる想い - 盗まれた冬(霧氷こあ)

ファンタジー
  • comment0
  • trackback-

盗まれた冬

盗まれた冬■制作者/霧氷こあ(ダウンロード
■ジャンル/時の止まった町ノベル
■プレイ時間/20分

この冬を越せないだろうと医師に言われたお婆さん。そのお婆さんの事を大好きなバズ。バズは大好きなお婆さんのため、町にある時計塔のネジを盗み、時計を止めてしまった結果、街の時間も止まってしまう。時間が止まった町にやってきた一人の探偵。止まった時間はどうなってしまうのか。意外な仕掛けに驚かされる短編ノベル。

ここが○

  • 美しく、雰囲気を高めてくれる背景。
  • 適度な筆致で、ほのぼのする日常描写。
  • なるほどと唸らされるラスト。

ここが×

  • 文章だけの作品としてはちょっとウィンドウが大きすぎる気が。
  • 影絵があまり効果を上げていない気がする。
  • やはり文字表示速度を変えられない。

■止まった時間、刻まれる想い

最近レビューを再開してから、頻繁に立ち絵がない作品を取り上げています。立ち絵がない作品は、やはり文章に読み応えのある作品が多いように思います。この作品もやはり、しっかりした描写と、凝り過ぎない適度な筆致で、プレイ時間以上に楽しませてくれる作品でした。「盗まれた冬」という、不思議なタイトルの短編です。

主な登場人物は、余命幾ばくもないお婆さんと、お婆さんと一緒に暮らしているバズ。それに、途中から彼らの街にやって来たエドガーという探偵。後は町長さんというところ。このエドガーという探偵が、なかなかいけ好かない奴で、バズでなくても「誰だこいつ?」と思うかもしれません。

盗まれた冬まずこの作品、背景写真がとても綺麗です。素材なのか、あるいは作者さんが自分で撮ったのかは分かりませんが、特に時計塔の写真は美しいですね。立ち絵ばかりが目立つノベルゲーム界ですが、背景写真の選び方って、やはり大事だなと思わされました。この背景写真をバックに、誰も知らない山奥の小さな町で、物語は静かに進行して行きます。

背景写真は綺麗なのですが、この作品はちょっとウィンドウが大きすぎる気がします。文章だけですから、ウィンドウがあまりに大きいと少し読み辛く感じるのですね。また、立ち絵を使い、文章はテキストウィンドウで表示されていますが、せっかく文章力が高いのですから、これなら全体の画面をもう少し小さくして、全画面にテキストを出した方が読みやすかったような気もしますね。

さて、物語はそれほど大きな展開を見せる訳ではありません。が、読みながらバズとエドガーのやりとりに、終始違和感を感じていました。その違和感の正体が何なのだろうと思っていたら、ラストで違和感の原因が明らかになり、思わず膝を打ちました。これは面白く上手い作りです。完全に視界の外からやられ、一本取られました。

その事実を知った後、物語を改めて眺めると、バズとエドガーのやり取りは実に自然で、何の違和感もありません。バズやエドガーの性格付けが上手かったからこそ、違和感を感じつつも、その事実に思い至る事なく読み進める事が出来ました。また、些細な違和感を感じたからこそ、逆に事実を明かされた時には、「なるほど!」という一種の爽快感がありました。これが、一切の違和感なく書いたとしたら、そこまで爽快な感じはしなかったでしょう。

この仕掛けは、この長さだったからこそ成立し得たと思いますし、そのためにエドガーは、ちょっとお喋りでお調子者の、少し変な奴として描かれた、ああいうキャラクターになったのだと思います。ラスト近くのエドガーとバズのやり取りは、それまでの印象が払拭されて、非常に心が温まりました。

ツールは最近一大潮流をなしているティラノスクリプト。「僕が見届けた世界の終わり」で、「マウスホイールで読み返し、文章送りが出来ない」と書いたのですが、この作品では実装されていました。設定次第なのかも知れません。お陰で快適に読めました。ただ、文章表示速度はやはり選べません。私はどちらかと言うと、ぱっぱと素早く表示される方が好きなので、変えられるといいなと思いました。この作品の場合は、短いのでそこまでの問題には感じませんでしたが。

プレイ時間は、15分から20分くらいだと思います。選択肢のない一本道の物語です。誰にも知られていない山奥の町で、ちょっとした仕掛けのある面白い物語。少しの時間で読めて、心が動かされる作品でした。
関連記事

Comments 0

Leave a reply