第408回/その1日の価値、プライスレス - えんどれす・ばれんたいん(Enharmonic☆Lied) - コメディ
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第408回/その1日の価値、プライスレス - えんどれす・ばれんたいん(Enharmonic☆Lied)

コメディ
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えんどれす・ばれんたいん

えんどれす・ばれんたいん■制作者/Enharmonic☆Lied(ダウンロード
■ジャンル/無限バレンタインノベル
■プレイ時間/40分

照代は、生徒会長も務める憧れの同級生、加納英斗にバレンタインのチョコを渡すも、受け取ってもらう事すらできずに玉砕した。失意の中帰宅すると、照代の兄湯太郎が、何とタイムマシンを発明したという。半信半疑で時間を飛び越えた照代。かくて、照代は成功するまで何度でもバレンタインを繰り返す事を決意した。気軽に読める、ループコメディノベル。

ここが○

  • 気軽に読めて様々なオチが楽しめる。
  • 友人の詩織を始め、キャラクターがよく出来ている。
  • 綺麗で将来の可能性を感じさせるトゥルーエンド。

ここが×

  • 馬鹿馬鹿しいと言えば馬鹿馬鹿しいノリ。
  • 英斗があまり魅力的ではないような。
  • 同じパターンの展開ばかりなので、途中でちょっと飽きが来る。

■その1日の価値、プライスレス

ループものの作品は何度も取り上げていますが、ループものというのは、読み応えを重視して作ろうとすると、どうしても長くなったり難解になったりしますし、手軽に読めるようにすると、物語としての面白さが犠牲になりかねません。今作は、気軽に読める作品でありながら、物語としての読み応えも存外しっかりしており、単なるコメディ以上の読後感を持っています。

バレンタインチョコ+ループというと、「ちょこっとループ」がありましたね。あちらは、主人公がチョコをもらう側であったのに対し、こちらの主人公照代は、チョコをあげる側です。シナリオとしてのループの利用方法は全く異なり、今作ではただひたすら色々な作戦で照代が英斗にチョコレートを渡すべく挑戦し、その度に玉砕するという内容。照代の馬鹿馬鹿しい作戦と、それに対する親友詩織のツッコミ、そして玉砕の様子を楽しむコメディです。

えんどれす・ばれんたいん照代が想いを寄せているのは、生徒会長も務めるイケメン男子ですが、この英斗があまり魅力的でないというか、はっきり言うとちょっと変な奴です(笑)。もうちょっと魅力的な男だったら、と思わなくもないのですが、しかしこの作品において、彼のちょっとおかしな性格は、重要な一要素でもあります。そう考えると、このキャラクター付けは正解なのかも知れません。

英斗だけでなく、照代の兄である湯太郎も変な奴で、つまり男性キャラは変な奴しかいないのですが(笑)、そのちょっと変な男性陣含め、キャラクターは全般によく描けています。ツッコミを入れつつ、毎回ちゃんと照代に付き合ってくれる詩織や、英斗の妹である花恋も、しっかりキャラが立っており、男性がプレイしても感情移入しやすいと思います。

選択肢は、ほとんど全部が「そんな作戦、上手く行くはずないだろう!」というもので、詩織もその通りのツッコミをし、そしてお約束通りに上手くいかずにバッドエンド、というものばかりです(笑)。特に「NASAに依頼」は面白い。NASAに依頼した結果の衝撃メイクを、是非グラフィックスで見てみたかった(笑)。ただ、分岐はほとんど、単に同じようなパターンで失敗して終わるものばかりですので、少し飽きがくるところがあります。

唯一そのパターンではない分岐、英斗の妹花恋が登場するシナリオ「頼れる先輩」は、短編学園ノベルとしてもまとまった内容で、トゥルーエンド以外では一番気に入っています。このシナリオで見せる照代の言動が、なかなか素敵です。全体に繰り返しの面白さで笑わせる、ドリフのようなコメディなのですが、時折照代や詩織がいいところを見せてくれるのが、心和みます。こういう、バラエティに富んだ分岐があと2、3本あればもっと良かったですね。

そして、一通りの作戦を試すと、最後の2つのエンディングへの道が開けます。超バッドは、なかなか怖い終わり方ですが、トゥルーエンドは非常にいいまとまり方のエンディングです。安直に、無事にチョコを渡し、2人が付き合ってハッピーエンドなんて終わり方ではなく、その前段階で何をすべきか、照代がちゃんと考えて結論を出しているのが素敵です。

しかも照代の、チョコを渡すための作戦が賢い。本編とは別人のようです(笑)。加えて「チョコをちゃんと渡せたが、照代の恋愛は成就していない」というのが、先々への可能性をも感じさせ、安直なハッピーエンドではないにも関わらず、読後感も爽やかな、とても見事な幕引きです。単なる一発ギャグ連発のコメディかと思っていたら、このラストで見事に裏をかかれました。このトゥルーエンドでは、英斗も少しだけいい奴になっている気がします。

肩肘を張って読むような作品ではないかも知れませんが、オチが綺麗で、こういう短編を読むと「いいひと時を過ごしたな」と思わされます。エンディングは全部で10種類ですが、プレイ時間は全部読んで40分。ツールはNScripterです。肩の力を抜いて楽しめば、きっとラストで「いいひと時」を味わえますよ。
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