第409回/乾いた心にプラスワン - 夕焼け空の下(AOL) - 日常
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第409回/乾いた心にプラスワン - 夕焼け空の下(AOL)

日常
  • comment0
  • trackback-

夕焼け空の下

夕焼け空の下■制作者/AOL(ダウンロード
■ジャンル/夕焼け空の交流ノベル
■プレイ時間/15分

小6のケイは、川の土手に段ボールで作った秘密基地をとても気に入っていたが、ある日秘密基地に行ってみると、見た事もないお姉さん、ヒナノがそこにいた。その日以来、ケイの秘密基地はヒナノに「占領」されてしまう。ヒナノは自分の事を「幽霊」だと言うのだが。夕焼けの色が似合う、少年とお姉さんとのささやかな交流物語。

ここが○

  • 少年の「少年らしさ」の描き方と、お姉さんとの暖かな交流。
  • 夕焼けの色がよく似合う雰囲気。
  • 超短編ながら豊富な1枚絵。

ここが×

  • この手のテーマを取り上げるには、ちょっと短すぎる。
  • ヒナノがクラスで無視されている理由に説得力がない。
  • エンディングの一方は、ちょっと投げやり。

■乾いた心にプラスワン

今作も短編です。この作品、1枚絵も柔らかな絵柄でとても綺麗なのですが、その柔らかい絵が、夕焼け空の背景画像ととてもよく合っていて、独特の雰囲気を醸し出しています。

主人公は小6の少年、ケイ。子供の描き方って非常に難しく、下手な書き方をしてしまうと、読み手をいらいらさせるだけにもなりかねないのですが、この作品ではそこがとても上手いです。嫌味がない、いい意味での「子供らしさ」を上手に全面に押し出し、読み手を素直に物語の中に入り込ませてくれます。

夕焼け空の下そして、そんなケイにヒナノというキャラクターが、またベストマッチしています。自分の事を幽霊だと言い、何かとすぐに嘘をつく少女ですが、ケイの素直なところと、ヒナノのちょっと捻くれたところが、あたかもジグソーパズルのピースのように上手くはまって、とてもいいコンビとなっています。ケイのころころ変わる表情と、ヒナノのミステリアスな表情が、とてもいい対比を見せていて、魅力的です。

そういう意味で、少年少女の交流ものとしてはとても良くできた短編なのですが、一本の物語として見ると、やはりこのテーマを取り上げるのであれば、ちょっと尺が短すぎるように感じました。この手のテーマは、リアリティが命です。そのためにはやはりある程度踏み込んだ描写が欠かせません、短編だと、よほど上手く使わないと、なかなか難しいところがあるように思います。

また、ヒナノがクラスで無視される理由も、ちょっと説得力に欠ける気がします。このご時世、あのような理由でクラス全員から無視されるとは、ちょっと想像しにくいのです。そこらにあと一歩踏み込んだ理由付けをして、もう少し尺を伸ばしてみたら、ケイとヒナノの心温まるやり取りはそのままに、より物語としての深みが増したかも知れません。

それでも、ヒナノとケイのやり取りは、なかなか味わい深いです。「生きているだけで減っていってしまう」というヒナノの発言は、彼女の経験してきた苦しみ、辛さから来た発言でしょう。それに対し、「減っていくなら足していけばいい」というケイの発言に、深い意図があるとはあまり思えません。あくまで、「減るなら足せば」という、子供らしい発想でしょう。

しかし、子供らしい単純な、純粋な発想だからこそ、ヒナノの心に響いたのではないでしょうか。素直で純粋なだけに、ケイの言葉には、大人をもはっとさせるところがあります。そういう意味で、この2人のコンビはやはりいい組み合わせだと思います。この2人の10年後を、ちょっと見てみたい気がします。

選択肢で一応2種類のエンディングがあるんですが、トゥルーエンドではない方の終わり方は、少々投げやりな気がしなくもありません。これはこれで、「もしかしたらヒナノは本当の幽霊だったのかも」という余韻は残りますが、トゥルーを先に見た後だと、何とも言えない消化不良感が残ります。見るなら、トゥルーを後からにする事をお勧めします。

プレイ時間15分の超短編ではありますが、1枚絵はやたら豪華で、しかもどれもとてもよく出来ています。特に、ケイがヒナノにマフラーを送る場面は、名シーンですね。ツールはティラノスクリプトです。このツール、基本性能はNScrや吉里吉里に比べるといまいちなのですが、短編ですのであまり気にせずプレイできます。あまり深く考えすぎず、柔らかな夕焼け空の雰囲気を味わいながら、2人の会話を楽しんでください。
関連記事

Comments 0

Leave a reply