第410回/正義を拳に、愛を胸に - 太陽がまた輝く時(セイナルボンジン) - アクション・ドラマ
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第410回/正義を拳に、愛を胸に - 太陽がまた輝く時(セイナルボンジン)

アクション・ドラマ
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太陽がまた輝く時

太陽がまた輝く時準推薦
■制作者/セイナルボンジン(ダウンロード
■ジャンル/おっさんの復讐ノベル
■プレイ時間/40分

ベテラン刑事のコガには、ミハルという一人娘がいた。製薬会社で働くミハルとの再会を楽しみにしていたコガだが、ミハルは何者かに殺されてしまう。怒りに燃えるコガは、復讐を誓って犯人を追う。ミハルを殺した犯人は誰なのか。そして背後で暗躍する黒幕の正体は一体。一枚絵の多さが映画を思わせる、サスペンスアクション。

ここが○

  • 大量の一枚絵によって醸し出される映画のような雰囲気。
  • とにかくおっさんが渋くてかっこいい。
  • 短編とは思えないボリューム。

ここが×

  • いわゆる「地の文」皆無なので、人によっては物足りないかも。
  • 終わり方がちょっと唐突。
  • 尺の短さから来る消化不良感。

■正義を拳に、愛を胸に

短編作品って、多くは「気軽に作りました」という物が多くて、それはそれで読む側も気軽に楽しめるのは魅力ではあるのですが、気軽すぎて物語を読んだという満足感は、どうしても長編に比べたら薄いものがある作品が多い気がします。長さの問題ではなく、物語に込められたメッセージの密度が、薄い気がするのですね(ですから、「推薦」「準推薦」は短編になればなるほど出る率が下がっています)。

と思っていたら、短編にも関わらずとんでもなく「濃い」作品に出会ってしまいました。込められたメッセージも濃ければ、手間も凄いです。なんと、ほとんど全編を1枚絵だけで演出してしまったという、驚愕の作品です。同様の手法で作られた作品には「桜月夜に舞い降りたピンク」がありました。あちらは恋愛ものですが、こちらは映画を思わせる刑事物のアクションです。

太陽がまた輝く時主人公は、ベテラン刑事のコガ。このおっさんが、物凄くかっこいいのです。拳法の使い手で抜群に強く、群がる敵をばったばったと倒していく様は爽快です。多くを語らず、背中で見せるハードボイルドな昭和の男、という感じ。萌え系でもないのにこれほど魅力的な主人公には、久々に出会いました。

そしてこの作品でもう一つ驚くのは、いわゆる「地の文」が一切存在しない事です。普通のノベルゲームでは地の文で描写するところを、全て1枚絵でやっています。それがまた、この作品の雰囲気にぴったり合って、絶妙な効果をあげているのです。

普通は、地の文で心情などを描くのですが、この作品ではコガの心情などは1枚絵から想像するしかありません。それがまた、コガの渋いキャラクターとも相俟って、作品の雰囲気を高めています。ミハルが亡くなった時なども、文章でくどくど書くと逆に興ざめだったりするのですが(心情をくどくど書いてしまってお腹いっぱいになってしまう作品も多い)、たった1枚の絵が何よりもコガの心情を雄弁に語っています。全編こんな調子ですから、ノベルゲームというより映画でも見ている気分になってきます。

大量の1枚絵は、書き込みが多い訳ではない簡素な筆致なのですが、太めの線でラフに描いた感じの絵柄が、また作品世界にぴったりと合っています。書き込みはされていないものの、デッサン力は高いと思います。何より、構図が、普通のノベルゲームっぽい感じではありません。ノベルゲームの1枚絵が、小説の挿し絵だとしたら、この作品は映画のカット割りという感じで、とても動きを感じさせるのです。大した才能だと思います。特にアクションシーンの躍動感は凄いです。

人によっては、地の文が一切存在しない事で、物足りなさを感じる向きもあるかも知れません。これは作風の問題ですから仕方ないでしょう。しかし、他にはないこういう作風の作品は稀有なものです。是非この作風を今後も追求して欲しいなと思わされました。ミハルが幼い頃の、コガとのエピソードが非常に効いています。過去回想が非常に効果的に働いている典型例だと思います。

ただ、終わり方がちょっと投げっぱなしというか、打ち切りっぽい感じがします。もう少し先まで語ってくれると、気持ちよく読み終えられたのですが。コガの事はもちろんですが、タグチやキタの事ももう少し語って欲しかったですね。まあ、今のままでもこれはこれで色々想像できていい気はするのですが、それでもこれほどの物語なのですから、最後を綺麗に締めて欲しかった感じです。

終わり方もですが、尺が短いためにキリハラの野望の事などもほとんど語られておらず、そこら辺りでは若干消化不良感も感じます。作る手間もかなりのものでしょうから、普通の1枚絵がないノベルゲームのように、簡単に尺を伸ばすのも難しかったとは思いますが、もう少し深く語ってくれればな、とも思いました。それでも、この長さとは思えない充実度の物語で、読後の満足度は高いと思います。

ツールはNScripterです。プレイ時間は40分ほどで選択肢はありません。この作品を、あまり飛ばして読むのは勿体無いです。何せ地の文がありませんので、どんどんクリックしているとすぐに終わってしまいます。大量の1枚絵を味わいつつ、コガの心情をそこから読み取りながらじっくり読みましょう。短編ですが非常に充実感の高い物語。お勧めです。
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