第415回/黒い翼は僕にはなかった - カラスには、なれない(お茶漬けソフト) - ナンセンス・不条理
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第415回/黒い翼は僕にはなかった - カラスには、なれない(お茶漬けソフト)

ナンセンス・不条理
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カラスには、なれない

カラスには、なれない■制作者/お茶漬けソフト(ダウンロード
■ジャンル/不可解思い出回想ノベル
■プレイ時間/15分

田中秀は、真っ白い世界にいた。ここがどこかも分からずにいると、目の前に懐かしい風景が広がり始まる。それは幼稚園の卒園式。秀は「大きくなったら、カラスになりたいです」と言っていた。自分が言った言葉なのにそも意味も分からずにいると、今度は小学生に入学した頃の風景が……。不思議で不可解な味わいの、短編ノベル。

ここが○

  • 想像の余地が色々ある不思議な味わい。
  • 興味を引く出だしと展開。
  • 超短編ながら意外と考えられた作り。

ここが×

  • ちょっとダークな終わり方。
  • 結局この物語で何を訴えたかったのか、いまいち伝わってこない。
  • なので、読後感はあまり良くない。

■黒い翼は僕にはなかった

10分〜15分程度で読める作品が2本連続です。この作品は、「魂渫」を作られた作者さんによる作品です。この作者さんの作品は何本か読みましたが、ちょっと不思議で不条理な味が持ち味。今作もその持ち味は健在です。

この作品は、言ってみれば「過去回想もの」です。主人公が冒頭、真っ白い世界にいて、過去のイベントが時系列に沿って、少しずつ再生されるという作りです。超短編でありながら、この作りが奏功していて、テンポを保ちつつ、読み手の興味を引きつけて読ませる辺りは、なかなか上手い作りだと思います。

カラスには、なれない主人公の他には、竹松剛毅君という同級生が登場します。主人公は、小学校に入学後、クラスで孤立しているという設定ですが、剛毅はそんな主人公に接触してきて、二人は友人になります。この辺りの流れも、しっかり作られていますし、主人公の秀と剛毅のキャラクターの対比も面白いです。

と思っていたら、それから月日が流れるにつれ、二人の関係にも微妙な変化が。そしてあのとんでもないラストに突入します。これは流石に見ていて「えっ!?」と絶句してしまいました。いいのかそのオチは、というか、そんな怪しいものを中学生がどこから持ってきたんだ、という疑問が(汗)。

と、短い作品でありながら、かなり強烈で刺激的な展開をする物語です。途中のラムネボトルがちゃんと伏線になっているのは、なるほどねと思わされました。凄い終わり方のため、読後感はちっとも良くないのですが(汗)、短編ですからこういうのもありかも知れません。

とは言え、読み終わった後に決定的な「納まりの悪さ」が残ります。要するに「カラスって何」という……。冒頭で主人公が「大きくなったら、カラスになりたいです」で始まって、「どういうこと?」と思わせて引っ張るのは上手いのですが、解決方法がいまいち上手くないというか、結局この言葉については解決しないので、終わり方の不条理さも相まって、読んだ後になんとももやもやしたものが残ります。

ここに何か一つ、読者が納得の行く理由付けがあれば、同じオチでもかなり読んだ時の印象と言うか、読者の中での納まりの良さがかなり変わった気がします。今のままでは、作者さんがこの物語を通じて何を訴えたかったのか、伝わってこないんですよね。せっかく、作りとしては面白いシナリオなのですから、少々惜しまれます。

しかし、こういう不条理ものというのは想像力を刺激してくれますし、私みたいに「作中の謎は、全部きちんと作中で解決いてくれないと」と思うプレイヤーばかりではありません。読んだ後色々思いを巡らすのが好きだという方ならば、この作品から刺激をもらえると思います。そういう意味で、読後感が良いとは言えない物語なのですが、間違いなく読んだ後に心に残る作品です。しかもそれが結構持続します。読んだ直後に内容を忘れるような作品も結構多い中、これはこの作品の美点だと思います。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は10〜15分くらいで、選択肢はありません。ハッピーエンドでも美麗グラフィックスの作品でもありませんが、こういう苦くて渋い味わいも、たまにはいいものです。
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