第418回/私は私を、好きになりたい - 私は今日ここで死にます。(mint wings) - シリアス・感動系
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第418回/私は私を、好きになりたい - 私は今日ここで死にます。(mint wings)

シリアス・感動系
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私は今日ここで死にます。

私は今日ここで死にます。準推薦
■制作者/mint wings(ダウンロード
■ジャンル/生きる意義発見ノベル
■プレイ時間/1時間半

萩原京介はある日、入水自殺をしようとしていた高校生の三島由香と出くわし、成り行きから彼女の自殺を引き止めた。そこから始まる二人の奇妙な関係。由香が自殺したいと考えた理由とは。由香は果たして、本当に自ら命を絶ってしまうのか。そして京介の過去に隠された秘密とは? 真っ直ぐに、生と死について問いかけてくる物語。

ここが○

  • 登場人物の葛藤にリアリティがある。
  • そのため彼らの主張に嘘っぽさがない。
  • 数少ない1枚絵がとても綺麗で効果的。

ここが×

  • ちょっとフォントが小さい気がする。
  • 彩音の態度は、逆恨みにしか思えない。
  • なので彩音だけが何だか浮き上がって見える。

■私は私を、好きになりたい

RIDDLE -piece of memory-」や「ココロ、そらいろ。」を作った、mint wingsさんの作品。そしてタイトルが「私は今日ここで死にます。」。強烈なタイトルです。私は、安直に死を礼賛したり、死に対する憧憬を表現するような作品は苦手です。なので、この作品もタイトルを見た時には、ちょっと危険な香りを感じたので、プレイを躊躇しました。

が、実はこの作品はそういう作品とはある意味対極の、生きていく意義を見出していく、非常に真っ直ぐな物語でした。主人公の京介は、ちょっと取っ付きにくいところのあるキャラクターですが、読み進めるとその意味が分かります。序盤からとある仕掛けが施されており、この仕掛けは後半で明かされますが、この仕掛けには驚きました。驚きましたし、二段構えで読み手を物語に引き込む事に成功している、とても見事な作りだと思います。

私は今日ここで死にます。そしてヒロインの由香。学校で孤立しており、生きていても何も楽しい事はないと悲観して、自殺したいと思っている女子高生の少女です。彼女のこの自殺志願理由について、「甘え過ぎ」「心が弱すぎ」などと評する向きもあるでしょうが、中高生の、特に女の子ってそんなものだと思います。こういう中高生ならではのナイーブな心の弱さというのは、一言で切って捨てられるようなものでもないですし、私はありなキャラクターメイキングだと思いました。

この作品は、二部構成になっています。前半は、ヒロインである由香の自殺したい理由などが語られ、淡々と進んで行きます。そして後半は主人公である京介がメインのシナリオです。実はこの物語、自殺志願の由香ではなく、京介の物語こそが肝なのです。そしてこの後半で、前半で仕込まれていた仕掛けが明らかになり、更に京介の過去をも読者は知る事になります。

この仕掛けと過去が結構衝撃的で、明かされてから「なるほど、あの時の違和感はこういう事か」と絶句させられました。そして、京介にこういう過去があったからこそ、前半で由香にかけた言葉が嘘っぽくないんですよね。京介もまた、辛い現実に叩きのめされているからこそ、由香にかけた言葉に真実味があるのです。

更に、後半では由香が今度は京介にかけられたのと同じ言葉をかけるシーンがあります。京介によって生きる意義を見出し、生きる力をもらった由香が、今度はその力を京介に返し、京介を懸命に支える。ここは素晴らしい名シーンだと思いました。前半後半と緻密に計算して組まれたからこその、見事な結実です。

ただ、京介の昔の彼女である優花の妹、彩音がちょっと浮き上がってしまっているのが気になります。彼女は彼女で重い物を背負っているというのは分かるんですが、どうもそれが伝わりにくいというか、京介や由香と比べると共感しにくいのですね。

その上、彩音の京介に対する言動は、逆恨みにしか思えません。それに彼女は結局、別に京介と和解した訳でも、過去の自分と決別した訳でもないですし、彼女だけは京介や由香と違い、何ら前に進めてないんですよね。そういう意味で、若干彼女はこの物語にはミスマッチのようにも思えました。もう少し、京介、由香と上手いこと絡んで、彩音にも何らかの解決策を提示していれば、更に完成度が上がったような気がするのですが。

とは言え、安易なハッピーエンドではないまでも、どこか未来への希望を感じさせてくれる終わり方は、とても強い余韻を残してくれます。立ち絵はなく、所々で1枚絵が挿入されるだけですが、この1枚絵がどれもとても綺麗で効果的でした。ただ、フォントが少し小さくて読みにくいように思ったので、もう少しフォントサイズは大きくても良かったかも知れません。

ツールはNScripterです。プレイ時間は1時間半前後だと思います。選択肢はなく一本道の物語です。タイトルで尻込みせず、是非プレイしてみてください。生きる意義なんて人それぞれですが、京介と由香なりの生きる意義に、きっと明日を生きる元気をもらえる事でしょう。
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