第419回/ありがとう、そしてさようなら - 透明な街(林檎鳥) - 不思議系
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第419回/ありがとう、そしてさようなら - 透明な街(林檎鳥)

不思議系
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透明な街

透明な街■制作者/イトQソフト(ダウンロード
■ジャンル/現れないのが透明人間ノベル
■プレイ時間/15分

ある日系は、うっすらと透き通っている少女に出会った。「まさか、幽霊!?」と驚きを隠せない啓に、その少女ハルカは、自分は幽霊ではないと告げる。今朝起きたら、突然体が透き通り始めたのだと。啓はハルカと共に街を歩き、何とかする方法がないかと探すが、その時テレビ局のプロデューサー、権蔵と出くわす。小道具の使い方が強い余韻をうむ、超短編。

ここが○

  • 登場人物がみんな魅力的。
  • 小道具の使い方が上手く、上質な余韻が味わえる。
  • 綺麗な背景が大量に出てきて、見応えある。

ここが×

  • ハルカが透明になってしまう理由は何一つ明かされないので、少しすっきりしない。
  • せっかくの小道具に、もう少し伏線が欲しかった。
  • 選択肢に意味がない。

■ありがとう、そしてさようなら

この作品は、超短編も超短編。プレイ時間はわずかに10分です。一応、選択肢が1つあって、そこの文章も読む事を考慮して15分にしましたが、選択肢はその後の展開がちょっと変わるだけで、エンディングが変わる訳でもありません。これ以上短い作品になると、多分レビューが困難でしょう。

そしてこの作品、これだけ短い物語であるにも関わらず、かなり上質な余韻を残してくれるのです。これほど短い作品で、ちゃんとオチがつき、余韻を残してくれる物語にはなかなか出会えるものではありません。

透明な街この物語は、主人公である啓がハルカと出会うところから始まります。ハルカの体は半透明で、向こうが透けて見えます。啓でなくても、「幽霊なのか!?」と驚く事でしょう。ハルカは幽霊ではなく透明人間なのですが、どうしてこうなったのか、全く分からないと言います。

そこで啓とハルカは街を歩いて、解決策を探そうとするのですが、その間にもハルカの体はどんどん薄くなっていきます。短い物語なのに、なかなか緊張感のある展開を見せてくれます。そして、街を彷徨う二人の前に、騒がしいテレビ局のプロデューサー権蔵が現れ、事態は更にややこしい事に。

ハルカのお母さんにはハルカが見えず、権蔵にはハルカが見えるというこの辺りの設定には、特に説明がありません。それどころか、ハルカが何故透明になったのかについても、全く説明がないため、この辺りは少しご都合主義に感じなくもありません。少しでいいから、何か理由に言及が欲しかったところです。

さてこの権蔵、話し方は怪しいし、見るからに悪人なのですが、ラストまでプレイすると、実はとてもいい奴である事が分かります(まあ、お前が問題を大きくしたんだろ、というツッコミもありそうですが(笑))。権蔵だけでなく、啓もハルカもとても真っ直ぐなキャラクターで、10分の物語なのに、非常に感情移入して読む事ができました。

そして、ラスト。ラストはぶつ切りのように突然終わってしまいます。呆然としているところに、たった1シーンだけのエピローグ。このエピローグでの小道具の使い方が絶妙で、唸ってしまいました。ぶっきらぼうな一言が、非常に強い余韻を残してくれます。透明人間をテーマとした作品と言えば、名作「冥王星と透明少女」がありますが、この作品が、もっと尺を伸ばして、伏線も巧妙に張り巡らせたら、もしかしたらあれに匹敵する作品になったのでは、と思わされました。

ただ、このエピローグでの小道具の使い方が、残念ながら少し唐突なのです。何が唐突かと言えば、本編中にこの小道具は出てくる事は出てくるんですが、ただ出てきただけで、特に啓やハルカが使ってみた訳ではありません。それに、ハルカが最後のあの「仕掛け」を、どこで仕込んだんだという素朴な疑問も残ります。非常に見事な小道具の使い方で、素晴らしいエピローグを描き出したのですから、ここにはもう一歩踏み込んで欲しかったように思いました。

それでも、この長さでこれだけの物語はなかなか書けるものではありません。ツールはLive Makerです。この作者さんは、この作品1つだけしか公開されていないようですが、もし新作を公開されたらいの一番にプレイしてみたくなります。注目の作者さんです。
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