第422回/9個のお菓子をつまみ食い - ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション(TGF2016MC企画委員会) - オムニバス・その他
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第422回/9個のお菓子をつまみ食い - ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション(TGF2016MC企画委員会)

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ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション

ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション準推薦
■制作者/TGF2016MC企画委員会(ダウンロード
■ジャンル/短編小説詰め合わせノベル
■プレイ時間/2時間半

バイクで空を飛ぶ事に命を賭ける女性。打ち捨てられた世界に足を踏み入れる少年。同窓会に出席する北国の青年。そして忘れられない4月の物語を綴った日記。ティラノゲームフェス2016参加者による、短編小説風作品を9本集めた作品集。

ここが○

  • バラエティに富んだ作品を9本楽しめる。
  • どの作品も文章力が高い。
  • 余韻が持続する作品が多い。

ここが×

  • 文章だけなので、ワイド画面に意味がないどころか、かなり読みにくい。
  • 終わり方が呆気ない作品が多い。
  • 作品に統一感がない。

■9個のお菓子をつまみ食い

私はよく知らないのですが、ティラノゲームフェスというイベントがあるようです。ティラノスクリプトというツールで作られた作品を集めたイベントのようなものらしいですね。この作品は、そのティラノゲームフェス2016に参加した作者さんによる、短編作品集です。

この企画の事もよく知らない上、実は参加している作者さんのうちで私が知っているのは、「猫になりたい」の作者さんだけなのですが、こういう企画に参加するのは、みんな実力がある人に決まっています。なので、楽しみながら読み進めました。

ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクションこの作品集、立ち絵も1枚絵もなく、100%文字だけです。その上、どの作品もゲームというより小説寄りの堅い文章で、文章力はあるものの、ゲーム寄りの作品が好きな方だと、ちょっときついかも知れません。そういうコンセプトの作品集なのでしょうが、もうちょっと柔らかい作品もあれば疲れずに読めたかも知れません。私も、1週間くらいかけてじわじわと読みました。続けて読むと、かなり疲れると思います。

それと、文章だけなのにウィンドウがワイドなので、かなり読み辛いです。普段から私は、ノベルゲームにはワイド画面は向いていないと強調しています。絵があればまだワイドを生かした演出も有り得ますが、文章だけの作品にワイドは、ちょっと、と思いました。視線の移動量が多くなり、明らかに読んでいて疲れるのです。この作品は文章量が多い上、文章の堅い作品ばかりで、すらすら読み飛ばすという訳にはいきませんから、なおのことそこが気になった次第です。

さて、収められた9本の作品は、どれも個性的です。ゲーム風の文章がお好きな方にはちょっと辛いかも知れませんが、逆に文章を読むのが好きな方であれば、楽しめる作品が多いと思います。個人的に気に入ったのは、「コカク」「Role:play」「エイプリルラブストーリー」の3本です。

「コカク」は、主人公の性格には難が有りますが、主人公達2人の交流が面白いです。近未来なのでしょうが、描写される人々や出来事の様子には、ぞっとさせるほどのリアリティがあり、現代人が便利さの果てに失ったものを鋭く描写しています。「Role:play」は、後味の良くない話ですが、短編にも関わらず伏線がよく効いており、感心しました。ただ、全く救いようのない話ですので、これは長編で読んでみたいお話ですね。

「エイプリルラブストーリー」は、「猫になりたい」の作者さんの作品ですね。最初は何のこっちゃと思いながら読んでいましたが、途中で仕掛けに気付いた瞬間、声が出そうになりました。物悲しい恋愛物語ですが、非常に強い余韻を残してくれる一本です。この作者さんは、こういう仕掛けを上手く使った物語が大変上手いなと思わされました。

全九作は、どれも文章力が高く、感心させられました。反面、終わり方は呆気ない作品が多く、どれも「了」の1文字が出るだけで終了というのは、ちょっと寂しい感じ。反面、文章力の高さが成せる技か、どの作品も読み終えた後の余韻が長続きします。余韻が持続するというのは、なかなか狙ってできるものではありませんから、参加した作者さん達の実力を窺わせます。

ただ、九つの作品には特に統一されたテーマがある訳ではないため、次々読み続けるのには、ちょっと根気がいります。この寄せ集め感に、テーマパークのような面白さがあると言えばあるのですが、何かテーマのようなものでもあれば、もっと作品としての統一感が出て、一作読み終わったとき、「次の作品は同じテーマをどう料理しているんだろう」という興味が沸いたかも知れません(収録されている作者さんを知っていれば違うかも知れませんが)。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は、作品によりますが、短いものならば5分から、長くても30分弱程度だと思います。選択肢はもちろんありません。続けて読むより、時間が空いた時に、一作ずつ味わって読むのがいいと思います。文章を読んで想像するのが好きな方なら、全九作、お菓子をつまみ食いする感覚で、どれも楽しめると思いますよ。
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