第423回/不条理なこの世を、それでも生きる - 世界で一番悲しい笑顔(→Quantize_) - シリアス・感動系
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第423回/不条理なこの世を、それでも生きる - 世界で一番悲しい笑顔(→Quantize_)

シリアス・感動系
  • comment0
  • trackback-

世界で一番悲しい笑顔

世界で一番悲しい笑顔推薦
■制作者/→Quantize_(ダウンロード
■ジャンル/お菓子で人生再起ノベル
■プレイ時間/2時間

芹沢雅玖は、仕事を辞め、親からの仕送りで毎日パチンコに明け暮れる日々。そんなある日、公園に佇む女性と出会う。彼女はいきなり雅玖に「そのお菓子ちょうだい」と言ってきた。それから始まる、雅玖と女性の奇妙な関係。日々を無為に過ごす雅玖が、再び人生の意義を見出し、前向きに生きる様子を描いた物語。

ここが○

  • 主人公雅玖の再起の様子。
  • そこに、ヒロイン美羽とのコミュニケーションが上手く絡んでいる。
  • 更に様々な要素が上手に絡み、バランスよく読ませる展開。

ここが×

  • 序盤はちょっと肌に合わない人もいるかも。
  • ちょっと都合良すぎる気がしなくもない展開。
  • 雅玖と美羽が恋愛に至る描写が少し薄い。

■不条理なこの世を、それでも生きる

つい最近ご紹介した、「ラビっとはーと!」の作者さんによる作品です。あの作品は、不思議系のほのぼのするお話でしたが、こちらでは奇跡のような事は起こらない、現実的な物語です。この物語、テーマやプロット自体は使い古されたものなのですが、その組み合わせ方がとても上手く、唸らされました。

まず、出だしからしていきなり「きて」います。主人公の雅玖は、仕事を辞めて毎日パチンコばかりやっている、パチンコ依存症。私はパチンコをやった事はないのですが、パチンコシーンと、そこでの主人公の心理描写が生々しく、「ああ、こうやってパチンコその他のギャンブルに、人は依存するんだな」と思わされました。この序盤にはもう一つ、ちょっと書けないシーンもありますので、序盤で嫌悪感を示す人がいるかも知れません。

世界で一番悲しい笑顔が、そこはどうか我慢してください。序盤の主人公こそ、親を騙してお金を振り込ませ、そのお金でパチンコに行くなど、どうしようもない駄目人間なのですが、美羽と知り合ってから、少しずつ自分と向き合い、自分を変えていこうと努力し始めます。

その努力も最初はなかなかうまくいきませんし、何せ雅玖は筋金入りのパチンコ依存症。何度も誘惑に負けそうになります。しかし、美羽の提案でお菓子作りという趣味を持ってから、事態は少しずついい方向へ進み始めます。この辺りの展開は、少々都合が良すぎるような気がしなくもないのですが、序盤や、それまで雅玖が舐めてきた辛酸との対比もありますし、私はあれでいいと思います。

そして後半。雅玖の生活が軌道に乗ってきたと思った頃、美羽の秘密が明らかになります。この辺りの展開バランスが、とても上手いですね。雅玖が人生をやり直す描写にお菓子作りが絡み、さらに美羽の秘密や夢が入り、それぞれの要素が相乗作用で物語を盛り上げています。

この「盛り込んだ要素を、きちんと作品内で消化しきる」というのはなかなか難しいものですが、この作品はそこをきっちりとやり切っているのが好印象です。雅玖の仕事と趣味、それに美羽の夢という三本の柱がしっかり物語を支えています。この物語は、展開自体は王道で、特に新しい事はしていませんが、こういう作品を読むと、作品の完成度はシナリオの新しさなど関係なく、盛り込んだ要素を有機的に絡ませ、それをきちんと消化する事で高まるというのが、よく分かります。

ただ、雅玖と美羽は、毎日公園で会うだけで、恋愛感情を持つに至る描写が希薄なため、そこにはもう少し説得力が欲しい気がしました。美羽が雅玖の力になろうとする理由は作中でちゃんと語られていて、それはなるほどと納得できるものなのですが、やはり恋愛方面にもう少しきちんとした描写があればと思います。

前半はほとんど公園と、後は主人公の自室くらいしか舞台がありません。そういう、舞台がほとんど動かない作品の場合は、往々にして途中で退屈してしまうものですが、この作品ではそういう事がありませんでした。舞台があまり動かなくても、きちんと心情や行動の変化を描写すると、退屈する事なく読み進められるのですね。感心しました。

それと、「ラビっとはーと!」でもそうだったのですが、ウィンドウデザインや色使いの関係で、文字が妙に読み辛いです。「ラビっとはーと!」は短編だったのでまだ良かったのですが、この作品はそれなりの長さがあるので、この点は少し辛いものがありました。

1枚絵の数は多くないですが、どれも綺麗で、しかもいい場面で挿入されてきます。悲しい終わり方の物語ではあるのですが、ラストには希望も感じさせ、プロットの似た他の作品にはない魅力があります。プレイ時間は2時間、ツールはLive Makerで選択肢はありません。全4章構成です。ハッピーエンドではないのに、読むと元気をもらえる物語です。是非プレイしてみてください。お薦めです。
関連記事

Comments 0

Leave a reply