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第427回/残り1分のさよなら - 3時間と1分のホワイトデー(ペットボトルココア)

不思議系
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3時間と1分のホワイトデー

3時間と1分のホワイトデー準推薦
■制作者/ペットボトルココア(ダウンロード
■ジャンル/最期のホワイトデーノベル
■プレイ時間/30分

バレンタインに、憧れの色条さんから「義理チョコ」をもらった僕。ホワイトデーのお返しするため家に急いでいた。が、夜の街で出会った占い師に、あと3時間と少しで死ぬと宣告を受けた。更に家の前で待っていた色条さんを家に招き入れようとしたその時、色条さんは数人の男に誘拐されてしまう。僕は色条さんを助けるべく急いだ。短編ながらずしりと重い物語。

ここが○

  • 短編だがキャラクターがみんな魅力的。
  • 死を覚悟した主人公の凄すぎる行動。
  • 起伏のしっかりしたストーリー。

ここが×

  • 説明不足の上駆け足気味で進むので、ちょっと読み手が置いていかれる。
  • 主人公があっさり死を受け入れ過ぎかも。
  • 主人公とヒロインの関係の描写がもう少し欲しかった。

■残り1分のさよなら

私は、短編だからとか長編だからという理由で、評価を変えたりはしないのですが、ここのところ短編はなかなか評価がつかない傾向にあります。別に「推薦」「準推薦」がつかなくても、楽しめる作品しか取り上げないのですが、「推薦」や「準推薦」は、やはりどうしてもある程度物語としての体裁が整った作品でないと、ちょっと出しにくいのです。ここ最近は、短編(1時間以内の作品)だと10本に準推薦が1回出るかどうか、というペースです。

そんな中、短編ながらかなりしっかりしたストーリーで、読み応えのある作品を読みました。「夏ゆめ彼方」の作者さんによる作品ですが、こちらの方が登場は先です。「夏ゆめ彼方」では、非常によく立ったキャラクターに感銘を受けたので、この作者さんは短編でも力を発揮するはずだろうと思って読んだのですが、案の定の見事な出来栄えでした。

3時間と1分のホワイトデーこの作品も、30分の短編なのですが、キャラクターが非常によく出来ています。主人公や、ヒロインの色条さん、サブキャラの占い師はもちろんの事、ちょい役でしか出てこない叔父さんやタクシードライバーすら、個性を感じます。これはこの作者さんの持つセンスでしょうね。

そして、物語は冒頭に何やら意味深なシーンを描写した後、すぐ本題に入ります。占い師が主人公に「あなたはあと3時間と1分で死ぬ」と宣告し、主人公はそれをあっさりと受け入れます。ちょっとここはあっさり受け入れ過ぎのような気がします。多少は葛藤を見せてくれた方が、後の展開とのギャップを楽しめたのではないかと思うのですが。

また、その後の展開も凄いというか、叔父さんが本物の拳銃を主人公に預けたり、かなりのぶっ飛び展開です。リアリティという意味ではめちゃくちゃです(笑)。また、主人公と色条さんとの過去の思い出回想シーンもあるのですが、ここもちょっと説明不足なため、主人公と色条さんの「絆」を、十分に描写しきれていません。ここにもう少し筆を割き、じっくり書いていれば、もっと完成度が上がったような気がします。せめて1時間くらいの尺で読んでみたかった物語です。

しかし、駆け足気味で説明不足な展開が、逆に有無を言わせず読ませる勢いを生んでいるとも言えます。説明が不十分ではあるのですが、物語としては綺麗に完結しています(ハッピーエンドではありませんが)。私は、終わり方もなんだかぼやかして、「その後どうなったかはみんなで考えてね」というタイプの「考えさせる」物語はあまり趣味ではないのですが、きちんとオチをつけておいて、「あれはどういう事だったのかまでは説明しないから、真実はみんなで考えてね」というタイプは嫌いではありません。

そしてこの物語の場合、読み手が薄々想像できる範囲ながら、そこはあえて説明しないというのが、上手く余韻を生んでいるように思いました。わざわざ説明すると、かえって無粋だったかも知れません。ただせめて、主人公とヒロインの関係くらいは、もうちょっと描いておいて欲しかった気がします。

バッドエンドが3つあるんですが、理不尽な即死バッドエンドという感じではなく、バッドエンドながら、なるほどと思える展開で、バッドエンドも割と読み応えがあります。トゥルーエンドにおける主人公のぶっ壊れぶりも凄く、そこは一番の見どころです。上で書いたように、死を告げられた事を主人公が何の葛藤もなく受け入れたので、ここの主人公にはちょっと感情移入しにくいものもありましたが、物語進行としての見応えは十分です。

ツールは吉里吉里です(ティラノが大流行ですが、やはり吉里吉里って抜群にプレイしやすいなと実感させられます)。プレイ時間は、バッドエンドを全部見ても30分かからないくらいでしょう。ハッピーエンドではないので、プレイヤーを選ぶかも知れませんが、短編ながらなかなか骨太な物語です。短い時間でお腹に響く物語をお探しの方にお勧めします。
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