第428回/思い出はチョコのようにほろ苦く - バレンタインテロリズム(ペットボトルココア) - 学園・青春
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第428回/思い出はチョコのようにほろ苦く - バレンタインテロリズム(ペットボトルココア)

学園・青春
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バレンタインテロリズム

バレンタインテロリズム準推薦
■制作者/ペットボトルココア(ダウンロード
■ジャンル/過去を吹っ切るバレンタインノベル
■プレイ時間/50分

バレンタインに一度もチョコをもらった事がない及川颯太は、クラスメイトの持手木にそそのかされて、チョコをもらった数を競う事になった。バレンタイン当日、勝ち目のない颯太は、放送室を乗っ取って宣戦布告。「バレンタインテロリズム」が勃発した。意味不明なあらすじからすると、意外なほど正統派の学園ノベル。

ここが○

  • キャラクターがどれもよく描けている。
  • 掴み、引っ張りとバランスのいい展開。
  • 嫌味にならないほどのコメディ要素の盛り込み方。

ここが×

  • 後半にもう一捻りが欲しかった感じ。
  • もう少し冬菜側の心情も描いて欲しかった。
  • 前半と後半の噛み合わせがあまりよくない。

■思い出はチョコのようにほろ苦く

前回に続き、「ペットボトルココア」さんの作品。この物語も短編です。前回はホワイトデー、今回はバレンタインがテーマです。バレンタインをテーマにした作品は数多いですが、その中でもこの作品は異彩を放っています。何せ主人公が、放送室を占拠して「バレンタインテロ」を起こしてしまうのですから(笑)。

そう説明すると荒唐無稽な作品のようですが、実は大枠としては比較的よくあるタイプの物語です。いつものように、どこら辺がよくあるタイプなのかに言及するとネタバレになってしまいますので、そこは書きません。勘の鋭い人だと、比較的序盤で仕込まれた仕掛けに気付いてしまうかも知れません(姉妹の名前とかね)。

バレンタインテロリズム主人公の颯太はバレンタインに一度もチョコをもらった事のない、いわゆる「非モテ」。幼馴染の冬菜と投稿した颯太は、モテまくりのクラスメイト、持手木とバレンタイン勝負をする事になります。そこからは、コメディ一直線。颯太は彼を支持してくれるクラスメイト達の助けもあり、色々と小細工に走るのですが、当然そんなものが通用するはずもなく、そのままバレンタインを迎えてしまいました。

そこから始まるバレンタインテロリズム。この辺りの描写は、冷静に見れば非常に馬鹿げた展開なのですが、程よくコメディ要素が盛り込まれ、またテンポも非常によいため、とても楽しんで読めるでしょう。コメディ要素をバランスよく盛り込むというのは、実は非常に難しく、下手をすると読者が置いてけぼりになったり、流れが淀むだけの結果になったりするのですが、この作者さんのこの辺りの感覚は、見事だと思います。

と、ここまで序盤の掴み、それを受けての引っ張り(起承転結で言う「起承」)は非常に上手いのですが、後半がちょっと弱く感じました。よくあるネタだからと言う訳ではありません。前半の面白さと比べると、後半にもう一工夫があれば、と思いました。キーとなるキャラクターの存在は、後半に初めて明かされるので、唐突さも感じてしまいました。

また、ヒロインである冬菜側の心情は後半まで描写されないため、前半と後半で何だか別の物語のように感じてしまいました。持手木との関係についても、前半にはわずかにほのめかすだけで、後半に来て初めて事実が明かされていますし、そう言う点もあって、なんと言いますか、前半と後半の「噛み合わせ」があまり良くない感じがしたのです。そこら含めて、全体を統一感を持ってまとめられれば、全体の完成度がもっと上がったのではないかと思うのです。

しかし、上にも書いたようにキャラクタードラマとしては一級品です。親友の武彦やライバルの持手木は特にいい味を出しています。また、魅力的な脇役を描く事で、ある意味めちゃくちゃな主人公の言動が、読み手にも受け入れられやすいのですね。過去作でもそうでしたが、この作者さんは「脇を支える渋い男性キャラ」を作るのが上手い気がします。

終わり方は、きちんと全てを描いている訳ではないのですが、前向きな希望を感じさせてくれて、読後感もいいと思います。プレイ後にはおまけも読めます。本編ではあまり語られなかった冬菜の心情が語られています。このおまけを、過去回想として、本編に上手いこと挿入すれば良かったのではないか、とも思ってしまったのですが。

ツールは吉里吉里です。プレイ時間は、おまけも含めて1時間弱くらいでしょう。選択肢はなく、一本道です。コメディ要素のある、でもちょっと心を動かされる物語、よくできたキャラクター学園ドラマを読んでみたい方はいかがでしょうか。立ち絵もとても綺麗です。
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