第429回/その目には、日の出のオレンジ - 青い欠如(らっこ電位図) - ナンセンス・不条理
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第429回/その目には、日の出のオレンジ - 青い欠如(らっこ電位図)

ナンセンス・不条理
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青い欠如

青の欠如■制作者/らっこ電位図(ダウンロード
■ジャンル/小学生と謎交流ノベル
■プレイ時間/45分

大学生の薫は、ある日花屋で小学生の明日香と出会う。ひょんな事から、明日香と週に2回会う事になった薫。明日香との、つかず離れずの関係。寂れた動物園、大学祭、そして海。明日香が見せる表情の秘密とは一体。高い文章力と難解なシナリオが独特の感覚を生む短編作品。

ここが○

  • 高いがくどくない文章力。
  • 主人公と明日香の不思議な関係。
  • テンポのいい展開。

ここが×

  • 起承転結を持ったゲーム的な面白さはほとんど皆無。
  • 終わり方があまりにも唐突。
  • なので、何を訴えたかったのかがいまいち伝わりにくい。

■その目には、日の出のオレンジ

これはまた何とも形容のし難い物語の登場です。読了したあと、しばらく考え込んでしまいました。「青い欠如」というタイトルも不思議ですが、未だにこのタイトルの意味がよく分かっていません(汗)。「ゲームっぽい」シナリオが好きな人だと、何が何だかわからないうちに終わってしまうかも知れません。

冒頭は、主人公である大学生の薫が、先輩の真由子から告白されたという描写から始まります。そして薫は、花屋で不思議な小学生の明日香と出会います。友人の孝二も時々絡んできますが、物語はほとんど終始、薫と明日香のやり取りで進んでいきます。

青の欠如この作品、一応時々明日香と孝二の立ち絵は出てきますが、ほとんど立ち絵なしと言ってもいいでしょう。その為という訳でもありませんが、文章力は高いです。文章力が高い作品の中には、変に難解な語彙ばかりを使った、妙にくどい文章のものもあったりするのですが、この作品は、文章自体は素直です。何というか、表現が外国の小説の翻訳を読んでいる感じ(これは悪い意味ではありません。そういう独特の雰囲気という事です)。

しかし、時々はっとするような言い回しが使われていて、「おお!」と思わせられました。「難しい語句を使わないのに、表現で唸らせる」というのは、本当に文章力がないとできない事です。作者さんの筆力の高さを、随所で感じました。また、展開バランスも良好です。延々と主人公の心情描写をしたり、不必要と思われる情景描写で流れが止まったりはしません。その意味で、読んでいてストレスを感じる事はありませんでした。

ただ、普通の意味でのエンターテインメント的な物語では、全くありません。展開のテンポ自体はいいんですが、特に起承転結がある訳ではなく、後半に向けて何か物語が盛り上がる訳でもなく、更に終わり方があまりにも唐突。終わったあとスタッフロールが流れるんですが、最後はウィンドウが勝手に閉じてしまい、私はしばし呆然としてしまいました(笑)。

あまりにも難解なため、2回読んでみたのですが、2回読んでもやはり何が何だか分かりませんでした。こういう物語を書いたという事は、少なくとも作者さんには何か訴えたいものがあったはずなのですが、残念ながらそれが伝わってきません。せっかく高い文章力があるのですから、もう少し読み手に何かを訴える力を前面に押し出しても良かったのではないでしょうか。

キャラクターのやり取り自体は、なかなか楽しいです。主人公の薫とヒロイン(?)の明日香とのやり取りだけでなく、友人の孝二とのやり取りもなかなか面白いです。欲を言えば、主人公に告白したにも関わらず、ちょっとしか出番がなく、いつの間にか振られた事になっていた真由子先輩の出番がもうちょっとあればと思いました。

また、シーンとしても印象的な場面が結構ありました。明日香と花屋で出会うシーンや、明日香と寂れた動物園に行くシーン、明日香と大学祭に行くシーン、そしてラスト近くの海のシーン。どの場面も、作者さんの文章力が遺憾なく発揮され、生き生きと描かれていました。ただ、薫には「小学生にお金払わせるなよ」とは思いましたが(笑)。

ツールはNScripterです。プレイ時間は45分くらいでしょう。選択肢はありません。「物語を楽しみたい」だと、ちょっと好みに合わない恐れがあるのですが、キャラクター同士の粋なやり取りを楽しみたい、文章を読むのが好きというのであれば、独特の作風を楽しめると思います。それほど長い作品でもありませんから、お気軽に読んでみてください。
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