第431回/切ってみせるぜ血の縁(えにし) - FeARy-電子妖精の囁き-(アクアポラリス) - 学園・青春
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第431回/切ってみせるぜ血の縁(えにし) - FeARy-電子妖精の囁き-(アクアポラリス)

学園・青春
  • comment0
  • trackback-

FeARy-電子妖精の囁き-

FeARy-電子妖精の囁き-準推薦
■制作者/アクアポラリス(ダウンロード
■ジャンル/妖精アプリ洗脳ノベル
■プレイ時間/1時間半

スマートフォン全盛の時代、高校2年生の五十嵐晃は、未だにガラケーを愛用していた。そんな晃に、幼馴染のヒナと陽介は「FeARy」というスマホのアプリを見せてくれた。なんと、仮想現実の妖精により、言葉を使わないコミュニケーションが可能というのだ。やがて起こる、生徒全員の失踪事件。FeARyとの関連性は? コミュニケーションをテーマにした学園ノベル。

ここが○

  • 面白いテーマ。
  • 展開のテンポが良く、程よい緊張感を持って読める。
  • 作中の設定に、この作品ならではの真実味を感じられる。

ここが×

  • 前半の交流シーンに、もうちょっと時間をかけても良かったのでは。
  • エピローグしか変わらないのがちょっと。
  • なのに複数回プレイがしにくい仕様。

■切ってみせるぜ血の縁(えにし)

なかなか面白い設定の学園ノベルをプレイしてみました。「さよなら、リアル」の作者さんの作品です(こちらの方が公開は先です)。「さよなら、リアル」も独特の設定の物語でしたが、この作品も変わっています。この作者さんは、ちょっと凝った設定やテーマの作品が得意なようです。

この作品の主人公五十嵐晃は、典型的なアナログ型人間。スマホ全盛のご時世に、未だにガラケーを愛用しています。そして、スマホの最新アプリ「FeARy」を、クラスメイトの2人に見せられます。そのアプリは、アプリ中の妖精とやり取りをする事で、妖精が勝手に相手の妖精とやり取りし、その結果を知らせてくれるというもの。つまり、言葉など使わなくてもいいのです。晃は、「こんなのはコミュニケーションじゃない、大事なのは人と人のダイレクトな繋がりだ」と反感を持ちます。

FeARy-電子妖精の囁き-そして「生徒全員失踪」というとんでもない事件が起こります。晃は、同じくガラケーを使っていた後輩のこはる、藤崎と共に、事件の調査に乗り出す、というストーリー。この辺りは、テンポよくぽんぽんとイベントが起こります。メールで犯人と思しき相手から連絡が来たり、なかなか緊迫感のある展開を楽しめます。

中盤から、生徒達がどんどんFeARyに操られる描写は、結構真に迫っていて怖さを感じさせます。意外と、今現実にこの作品のような状況になっていると言っていいのかも知れません。そういう点もあって、結構突拍子のない展開もするのですが、この作品ならではの真実味(「現実性」とは違う)を感じさせてくれました。荒唐無稽な設定でも、この真実味を感じさせてくれるだけで、一気に物語に引き込まれるものです。

特に後半の展開は、怖さと熱さを感じさせてくれました。あれだけのアプリを開発する力がある「魔王」に対し、晃の対処法がアナログ過ぎるような気がして、そこは「おいおい、それで上手く行ったら苦労しないでしょ」とツッコミを入れたくもなったのですが(笑)、しかし晃のシンプルな行動原理があるからこそ、物語が動いているとも言えるわけで、これはこれでいいのでしょう。

ただ、後半の展開と比べると、ちょっと序盤が駆け足気味のようにも感じました。後半で事実が明かされても、「まあそりゃ君が犯人だよね」「いや、そもそも動揺するほど交流してないよね?」となってしまうのです。前半でもうちょっと「ガラケー部」の3人の交流や、特に藤崎が心をだんだん開く様子でも描写していれば、より後半の展開が劇的になったのではないでしょうか。

それと、この作品は選択肢による分岐があるのですが、分岐と言ってもエピローグが変わるだけです。あれならいっそ、エピローグじゃなく、本編に入れても良かったのではないでしょうか。それに、選択肢分岐があるにも関わらず、既読スキップがなく(無条件スキップはあるが、一度スキップすると、選択肢を選んでもお構い無しに文章がすっ飛ばされたり)、お世辞にもプレイしやすいとは言えません。さらに、フラグ立てがちょっと分かりにくいのです。選択肢がある作品にしては、ちょっと辛い仕様でした。

3つのエピローグは、ヒナエンド、こはるエンド、友情エンドという感じ。友情エンドが一番綺麗で、これがトゥルーという扱いですが、ちょっと到達が難しいです。ヒナエンドは無難で本編の展開に沿った終わり方。こはるエンドは、おまけというか、付け足しっぽい感じ。攻略が難しければ、作者さんのブログに攻略が載っていますから、そちらをご参照ください(私も見ました(笑))。

少し荒削りな物語ではあるのですが、道具立てやキャラクターが、「コミュニケーションの大切さ」というテーマと上手くマッチして、とてもいい感じの読後感を残してくれます。キャラクターだけでも、設定だけでも、シナリオだけでもこうは行かなかったでしょう。「さよなら、リアル」でも、この作者さんは様々な工夫を凝らしていましたが、この作品では、盛り込んだ工夫が相乗効果で物語を盛り上げてくれていると思います。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は、スムーズに行けば1時間ちょっとだと思いますが、全部のエピローグを見ようと思ったら2時間くらいかかるかも知れません。ちょっと展開が急ぎ気味のところもあるのですが、逆に退屈せずに一気に読める物語です。少し変わった、緊迫感のある学園ものがお好きならば、きっと楽しめるでしょう。
関連記事

Comments 0

Leave a reply