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第432回/恋と友情を秤にかけりゃ - 恋をする生き物だから(浦田一香)

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恋をする生き物だから

恋をする生き物だから■制作者/浦田一香(ダウンロード
■ジャンル/恋で友情破壊ノベル
■プレイ時間/45分

中学生の大地、正吾、遥、和の4人は、幼い頃からいつも4人一緒の親友だった。しかし、ある日遥が大地に告白した事で、4人の歯車は少しずつ狂い始める。そして大地は、遥の告白を保留していた。彼女の事をまだ異性としては見られなかったのだ。果たして4人の関係は一体どうなるのか。短時間でプレイできる鬱展開の学園恋愛ノベル。

ここが○

  • テンポ良くイベントが起こり、飽きない。
  • 予想の斜め上を行く鬱展開。
  • 起承転結整った作り。

ここが×

  • 特に和エンドはどこにも救いがない終わり方。
  • 一部展開がちょっと唐突すぎる。
  • なんだか主人公の影が薄い。

■恋と友情を秤にかけりゃ

私は基本的に、ハッピーエンドの物語が好きです。特に長編だと、何時間もかけて読んで、救い様のない終わり方だと、どっと疲れてしまいますからね。現実の世界が必ずしもハッピーエンドで終わるとは限らないからこそ、作り事の物語くらいは、ハッピーエンドを楽しみたいのです。フィクションでまでいたたまれない終わり方を楽しめるほど、私は心に余裕がありません(笑)。

そんな中、この作品は見た目に似合わず(失礼)、かなりヘビーで鬱な終わり方をします。中学校を舞台にした、青春恋愛ノベル、というと響きはいいですが、そこらの大人の恋愛ノベルより、よっぽどどろどろとして救い様のない展開、終わり方をするので、特に和ルートは読み終えてしばらく呆然としてしまいました。

恋をする生き物だから主人公は、ソフトテニス部の部長(主将?)を務める大地。勉強は普通ですが、ソフトテニスの実力は皆も認めるほど。そんな彼に、幼馴染の遥が告白するところから物語がスタートします。この辺りは、いきなり告白されて戸惑う大地や、それでも4人の関係を崩すまいとする遥の様子がなかなかよく描けていて、よくある出だしですが、掴みは良好です。

そして物語は、何でもない日常を交えつつ、徐々に危ない(?)方向へ。この作品、かなりテンポが良く、だらだらした日常描写で流れが緩まないのは好印象でした。何かしらのイベントがバランス良く配置されているので、起承転結きちんと整った作りで、飽きずにどんどん読み進められるのです。

ただ、各種の設定に少し奥行きが足りない気がします(例えば、大地の父親の事とか)。大事な設定でシナリオ展開にも関わってくるのに、その根底に関わる設定描写が一行で終わったりしているんですよね。なので、一部の展開がかなり唐突に感じました。後半では4人の友情が崩壊していくのですが、そもそも4人の友情シーン自体があまり描かれていません。なので、後半に少し置いて行かれたような感覚を感じました。

また、和ルートの家出イベントも、たったの1日で、大した展開もなく大地が少し諭しただけであっさりと解決してしまっています(しかも、これでいい方向に話が進むのかと思いきや、その後とんでもない方向へ(汗))。テンポがいいのは美点でもありますが、もう少し設定に説得力を持たせる描写に分量を割き、1つ1つのイベントを丁寧に描けば、より良い物語になったのではないでしょうか。遥と和が、大地に好意を持つきっかけとなった過去イベントの描写は良かったですし、ああいう感じの描写をもう少し増やせば良かった気がします。

さて、物語は2つに分岐します。遥ルートは、正吾が遥の事を実は……というところに、もう少し事前の仕込みが欲しかった気がします。後半、手段を選ばない正吾がちょっとあんまりですよね。大地の父親の事を暴露して大地を怒らせて、遥に大地を嫌いにならせようという作戦でしょうが、そんなのどこからか真実が伝え聞こえるに決まってますし。その遥も、最初は正吾の策略に乗りかけてしまってますし。大地でなくても、「彼女なのに信じてあげないんかい」と言いたくなりました。

またこのルートでは、大地が最後まで遥に明確に恋愛感情を示していません(一応言葉にはしているけど)。この辺りの大地の感情の変化(友情→恋愛)をきちんと描き、イベントに説得力があれば、より良い物語になったと思います。しかし、展開自体は良く、面白く読めました。

和ルートは、途中からとんでもない事になり、4人の関係が完全に崩壊します。こちらも、和がいきなり性格が変わってしまうところに説得力があれば、もっと良かったでしょうね。最後は誰も幸せになっていないという、救いようのない終わり方ではありますが、物語としてのまとまりは、遥シナリオより実はこちらの方がよく出来ている気がします。十分語り切れていないところはあれど、作者さんの訴えたい事が非常に強く伝わってきて、こういう作者さんの思いを感じさせるシナリオ、フリーならではで私は好きです(後味は悪い物語ですが)。

ツールは「Light.vn」という耳慣れないツールですが、操作性もよく既読スキップもきちんと実装されていて、プレイ感覚は快適です。選択肢は一箇所だけで2種類のシナリオに分岐するので、全然難しくありません。プレイ時間は2つのエンドで45分。爽やかな恋愛ものではないのですが、短時間でちょっと刺激的な学園ものを読んでみたい方、手軽な鬱物語をお探しの方は、どうぞ。
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