第436回/記憶は消えても、思い出は消えない - ephemeral you~閉ざした記憶~(不思議ノベル制作部) - 不思議系
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第436回/記憶は消えても、思い出は消えない - ephemeral you~閉ざした記憶~(不思議ノベル制作部)

不思議系
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ephemeral you~閉ざした記憶~

ephemeral you~閉ざした記憶~■制作者/不思議ノベル制作部(ダウンロード
■ジャンル/幽霊と記憶を巡るノベル
■プレイ時間/30分

一人暮らしの高校生、晃の部屋に、ある日女の子の幽霊が現れた。美里と名乗ったその幽霊には、名前以外の記憶がないと言う。美里を成仏させるために、晃は美里を部屋に住まわせた上で、美里と共に情報集めを始めるが、実は晃には失った過去があった。美里の秘密とは一体。そして晃との関係は?

ここが○

  • ヒロインの美里がとても可愛い。
  • 起承転結バランスの良い作り。
  • 寂しくも希望を感じさせるラスト。

ここが×

  • 少し説明不足のところが目につく。
  • 短編にしては、少々要素を盛り込みすぎか。
  • なんだかすっきりしない感のあるラスト。

■記憶は消えても、思い出は消えない

「幽霊もの」は、ノベルゲームでは定番のテーマです。幽霊ものだと、主人公が幽霊になるパターン(こちらは数は多くない)と、主人公以外が幽霊になるパターン(こちらが多い)がありますが、この作者は後者です。古くは「Moonlight Blue」に始まり、「ユウレイのいた道」「Fizz」「幽明界を異にする」などがこのパターンです。

主人公は、高校生なのに一人暮らしの晃。高校生にマンションを買い与えるというのも凄い設定ですが、そこはそれゲームのお約束ですし、実はこの設定も、物語の謎と少し絡んでいますので、そこはそういうものだと納得しましょう。そして、晃の部屋に幽霊の少女、美里が現れるところから物語が始まります。幽霊ものは、新しい展開はしにくいものですが、この作品も定番的な展開です。安心感のある展開とも言えます。

ephemeral you~閉ざした記憶~このヒロイン美里が、実に可愛らしいですね。些細な台詞や、文章から感じられる仕草が、とてもいいです。1枚絵も魅力的。晃がまた結構根暗な男なのですが、晃と美里の凸凹コンビぶりも面白いです。また、短編であるので当然とも言えますが、早い段階で話が動くスピーディさで、心地よく読めます。

反面、この長さ(30分)の物語にしては、ちょっと盛り込み過ぎのようにも思えました。その割りに、少し説明が足りないところがあったり、逆に主人公が気付かないのに読者が先に気付くところがあったりして(主人公と美里の過去の事については回想があるんですが、美里の家庭事情についてはほとんど言及がないので、唐突感が)、テンポはいいんですがそこらのバランスに少々難があり、ちょっと登場人物とシンクロしにくいんですよね。

なので、もう少し過去の出来事を上手く生かすような展開があれば、印象がもう少し違ったかも知れません。一応、流星群のイベントはありますが、過去の説明が不十分なため、今ひとつ効果が上がっていない気がしました。このあたり、もう少し上手く組めば、同じイベントがもっと効果的になったような気もします。

展開は、それほど驚くようなどんでん返しがある訳ではなく、ある意味この手の幽霊ものの定番、王道とも言える展開を見せます(時間制限がどうとか)。そこに、主人公と美里の過去を配し、ちょっとした味付けをしているため、作品全体が締まっています。上に書いたような事は感じましたが、幽霊ものの短編としては、とてもよくまとまった物語です。起承転結のバランスが良く、短編物語としての作りが丁寧でいいです。流石に手慣れたものだなと思わされました。

そしてラスト。お約束の成仏エンドかと思いきや……。ラスト近くの展開自体は新しい手法ではありませんし(昔、これと全く同じ展開の商業作品がありましたね)、この終わり方は賛否あるかも知れません。しかし、ただのハッピーエンドではなく、さりとて悲しい成仏エンドでもないこの終わり方は、寂しさの中にも希望を感じさせてくれて、私は結構好きです。読後の余韻も上々だと思います。

欲を言えば、エピローグ的な描写でもう少し先まで見せて欲しかったような気もしますが、それでも、ラストで美里が、キーホルダーを見て少しだけ思い出すところは、名シーンだと思いました。たとえ美里の記憶が戻らなくても、きっと二人は、新しい思い出をまた一から刻んで行くと信じたい、そう思わせてくれるラストでした。

なお、この作品はBGMの選曲が素晴らしいです。あまり聞き覚えのない曲がほとんどなんですが、日常シーンも、ピアノの旋律を中心にした耳に残りやすい名曲揃いで、作品の雰囲気を非常に高めていました。曲選びってともすれば等閑にされがちですが、こういう作品をプレイすると、曲の選び方も、ノベルゲームの非常に大事な要素であると、改めて思わされます。

ツールは吉里吉里です。吉里吉里はやはり遊びやすいなとしみじみ感じました。プレイ時間は上で書いた通り30分で、選択肢はありません。気軽に読める作品ですから、立ち絵が可愛いと思ったら、安心して楽しめると思います。新しい物語よりも、定番、王道がお好きな方は、是非どうぞ。
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