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第437回/恋はどこにでもある、ちいさなドラマ - ちいさな春のラプソディ(あいはらまひろ)

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ちいさな春のラプソディ

ちいさな春のラプソディ■制作者/あいはらまひろ(ブラウザー版NScr版
■ジャンル/等身大の高校生恋愛ノベル
■プレイ時間/20分

夏に吹奏楽部を辞めてしまった高校1年生の須藤真樹夫は、ある日思い立ち、「春までに彼女を作る!」と決意する。そんな彼に、仲の良いクラスメイトの香月愛美が声をかけて来た。彼に紹介したい人がいるという。渡りに船とばかりに、その話に乗った真樹夫。エイプリルフール企画で作られた、シンプルな短編恋愛ノベル。

ここが○

  • 読みやすいのに、描写が綺麗な文章。
  • 大げさな飾りはないが、整った作り。
  • お手軽で楽しいキャラのやり取り。

ここが×

  • もう少し独自の味付けがあっても良かったのでは。
  • 遥香エンドは、あまりにあっさりし過ぎかも。
  • ブラウザーでもプレイできるのだが、Macでは不具合ありまくり。

■恋はどこにでもある、ちいさなドラマ

Beyond the summer」「Begin with you!」「夏色のコントラスト」の、あいはらまひろさんの作品です。「エイトストーリーズ」でもあいはらさんとはご一緒したのですが、最近また別の企画でご一緒しています。その縁もあって、久々にあいはらさんの作品を取り上げてみました。

と言っても、初出は2011年ですから7年も前。元々はNScripter版だったのですが、割と最近ティラノスクリプトでリメイクされたようです。ティラノは様々なプラットフォームでも遊べるというのが売りらしいのですが、ティラノの作品をMacで遊ぶと大抵大変な事になります。この作品も類に漏れず、バックログを上手く送れないなと思ったら、バックログが出たままいつの間にか本文テキストが送られていたり、謎な挙動が山盛りです。おとなしくWindowsで遊びましょう(汗)。

ちいさな春のラプソディさて、この作品はエイプリルフール企画として作られたものだそうです。なので一応「嘘」をテーマにしているのですが、そこまでテーマが密接に物語に絡む訳ではありません。どこにでもありそうな恋愛模様を、丁寧に描いた、等身大の物語なのですが、作者さんが自ら語っておられるように、中高生の恋愛って、そんなドラマみたいな展開はしないんですよね。

そんな、どこにでもある中高生の恋物語を、軽いタッチで描写しています。この作者さんの文章は、あまり難しい表現は使わないのですが、さりげない描写や台詞回しがとても上手く、心にすっと入ってくるのですね。もちろん、作品によっては、ちょっと難しい言い回しを使う事もありますが、特に一人称の作品であれば、「その言い回しは、この主人公にふさわしいか」に凄く気を遣っておられる印象です。

時々、中高生の一人称なのに、異常に難しい言い回しを使う作品もあったりして、「……これ、主人公は高校生なんだよね?」と思わされる作品もあるんですが、この作者さんは、文体や言い回しといった、「裏」の部分からもキャラクターの性格が出るような書き方をしているんじゃないかと思わされます。

物語としては、特に捻ったところがある訳ではありません。かなり短い作品ですから、あまり凝った展開の盛り込みようもないかなとは思うのですが、もう少し変化球を投げてみても良かったのではないでしょうか。「嘘」というテーマもさほど前面に出ている訳ではありませんし、良くも悪くも「普通の短編恋愛ノベル」です。中高生にとっては、恋愛それ自体が大きなドラマですからこれでいいのかも知れませんが、フィクションなのですから、もう一捻りが欲しかったような気もします。

ただ、恋愛以外の描写、例えばエピローグでの真樹夫の恋愛に対する独白とか、そう言った箇所には、難しくなくさりげない、独自の言い方で時折読み手をはっとさせてくれます。真樹夫と愛美、遥香の会話文ももちろん楽しいのですが、このいわゆる「地の文」がさりげなく読み手に訴えてくるところが、この作者さんらしいところで、読んでいて久々に「ああ、これがこの作者さんの味だよね」と思いました。

エンディングは2種類で、登場する選択肢は一箇所だけで、その結果で分岐します。メインヒロインの愛美エンドと、サブヒロインの遥香エンドです。遥香エンドは、ただでさえあっさり風味のこの作品で、更にあっさり終わるので、少し物足りないかも知れません。「嘘」というテーマも顔を出さなくなってしまってますし。愛美エンドは、ラスト近くの愛美の様子が微笑ましいです。愛美と遥香、どちらのヒロインも、尺が短い中でしっかり個性を出していて、どちらも可愛らしいですね。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は、エンディングを両方見ても20分くらいだと思います。極めて王道、直球の作品ですが、よく読むと文章の細かいところがとても丁寧に書かれているのが分かると思います。超短編だからとさらっと読み流すのではなく、少しじっくり味わって読んだ方が楽しめるかも知れません。もちろん、あいはらさんのファンの方であれば、「あいはら節」をしっかり楽しめますので、是非読んてみてください。
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