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第439回/絵本だけじゃないイブのお話 - 今宵サンタは街角で。(あいはらまひろ)

オムニバス・その他
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今宵サンタは街角で。

今宵サンタは街角で。推薦
■制作者/あいはらまひろ(ダウンロード
■ジャンル/ほのぼのクリスマスイブノベル
■プレイ時間/40分

娘に「サンタさんって本当にいるの?」ときかれた、作家の父。何故か気になる同じ塾の女の子にプレゼントを買った男子中学生。酔って駅のホームに佇むモテない大学生。そしてイブに風邪をひいてデートをキャンセルせざるを得なくなった男。クリスマスイブに送る、心温まる四つの短編物語。

ここが○

  • 変に難しい言い回しのない、読みやすい文章。
  • 文字サイズ、改行幅が適切で、見やすい。
  • 大げさな展開はしないが、心に響くシナリオ。

ここが×

  • 派手な展開をお求めの方には向かない。
  • 凝った伏線をお求めの方にも向かない。
  • 難解な文章をお求めの方にも向かない。

■絵本だけじゃないイブのお話

つい最近、久々にあいはらまひろさんの作品をプレイしましたが、立て続けにご紹介です。この作品は、初出が確か2008年だったような記憶があります。今からもう10年近く前ですね。なぜこの作品を見落としていたのかは謎ですが、2008年から2009年って、1年半の間ほとんどレビューしていない時期があったんですよね。ちょうどその時期にかかってしまってプレイしていなかったんだと思います。

この作品のテーマは、タイトルからもお分かりのようにクリスマス。クリスマスをテーマにした作品は、結構たくさんあるのですが、この作品はその中でも一二を争う出来栄えです。作品としては、オムニバス形式の短編集。10分ほどでプレイできる作品が4本集められています。

今宵サンタは街角で。1本目は、小学校に上がる前の娘に「サンタさんっているの?」と聞かれた作家のお父さんの物語。答えに困ったお父さんは、娘がクリスマス会に出かけている間に、答えを探して悪戦苦闘します。後半のお父さんの独白が非常に素敵で、4本の中では一番地味でオーソドックスな作りながら、一番お気に入りかも知れません。

2本目は、1本目の主人公が公園で落し物を拾ってあげた中学生が主人公。あいはらさんお得意の、ほんのり恋愛ものです。にしては恋愛要素がほとんど描かれていませんので、恋に目覚めかけるかも知れない青春物語とでも言いましょうか。もう少し2人の関係を踏み込んで描写して欲しかった気もしましたが、これもラストが綺麗で印象に残ります。続きが読んでみたくなりますね。

3本目は、2本目の主人公が街で見かけた酔っ払い大学生が主人公(まさかそんなところから繋がるとは)。この作品もお気に入りです。恋愛物語にしようと思えばできたでしょうが、あえてそれをせずにあのラストに持って行ったところに、非凡なセンスを感じます。恋人ができないと嘆くより、まず自分に一番近い人に興味を示す事。いいテーマだと思います。

4本目は、1本目の主人公の編集担当であり、3本目の主人公が駅でぶつかる女性、の恋人が主人公。この4本目は、よくあるというか、比較的スタンダードな恋愛ものです。展開もセオリー通りと言えるものですが、描写が過不足なく丁寧で、また終わり方がとても美しい。本編もちょうどいい終わり方ですし、エピローグの持って来方も上手いです。4本の短編集のラストを締めくくるにふさわしい終わり方だと思います。

以上4本。どれも、特に新しい展開はしませんし、伏線が出てくる訳でもありません。その点、作者さんの作風通りの作品と言えます。が、何気ない台詞回しや情景描写がとても素晴らしく、そしてクライマックスのシーンへ持って行くその導き方が非常に見事です。ですから、シーン自体は何気ない状況なのに、読み手の心を動かしてくれます。この作者さんの手腕が遺憾無く発揮されています。

それと、文章が大変読みやすい。変に難しい言葉を使わない文章もさることながら、文字の大きさや改行幅が非常に適切で、結構画面中に文字が表示されるところもありますが、全く読み辛くありません。ワイド画面で、改行幅が狭く、それでいて画面やテキストウィンドウが文字で溢れて、読むのが嫌になるような作品も多数ある中、こういう読み手に対する細やかな配慮は見習うべきだと思います。

文章に「変に難しい言葉を使わない」と書きましたが、しかし難解な語彙を連発する文章より、よほど文章力があります。分かりにくく書くのは比較的簡単ですが、分かりやすく、それでいて表現が稚拙にならず生き生きと描写するのは大変難しいものです。物語だけでなく、見た目も地味な作品ではありますが、タイトル画面のちょっとした仕掛けなど、遊び心もあります。

ツールはNScripterです。選択肢はなく、プレイ時間は4本全部で40分というところ。1本10分という計算ですが、この短さでも物語としての完成度は非常に高く、1本目と3本目の20分しかなくても、もしかしたら推薦をつけたかも知れません。季節的に今の時期には全然合っていないのが難点ですし(笑)、もうプレイしている方も多いでしょうが、未プレイの方は是非読んでみてください。上手い文章、上手い物語展開というのはこういう事かというのが、味わえると思います。
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