第441回/丘の上から、大切なみんなへ - あの丘の上まで2(優凪) - 病院・闘病
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第441回/丘の上から、大切なみんなへ - あの丘の上まで2(優凪)

病院・闘病
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あの丘の上まで2

あの丘の上まで2準推薦
■制作者/優凪(ダウンロード
■ジャンル/友情サブカル闘病ノベル
■プレイ時間/4時間

親導ゆいは、生まれつきの吃音症で、人と関わるのが極端に苦手だった。その日も、大学で悪意のないからかいの言葉を投げかけられていたが、同級生の友生達美に助けられる。趣味や嗜好の会う二人は次第に意気投合し、かけがえのない友人同士となっていくが、達美は持病のため、入退院を繰り返す生活だった。色々な人に支えられ、達美は病と向き合えるのか。

ここが○

  • 情景や心情描写が非常に丁寧。
  • メインサブを問わず、キャラクターが皆しっかり描かれている。
  • 達美とゆいの関係の描き方が、とても良い。

ここが×

  • 画面がワイド過ぎて、文章が読みにくい。
  • 描写が丁寧過ぎて冗長。
  • なので展開にメリハリが少々欠ける。

■丘の上から、大切なみんなへ

久々に、かなり重厚な病院・闘病ものの作品です。タイトルから分かるように、「あの丘の上まで」の続編であり、前作の主人公新海進や、その他のキャラクターも登場します。もちろん、前作をプレイしていなくても全く支障はないのですが、今作の主人公である友生達美も、実は前作の登場人物と関わりがあるので、可能であれば前作をプレイしてからの方が、楽しめるかも知れません。

この作品、出だしはヒロインである親導ゆいの視点で物語が始まります。なのでゆいが主人公かと思いきや、しばらくすると達美視点に変わり、以降ずっと達美視点です。この序盤は、ゆいの吃音症というコンプレックスと、悪意なくゆいを傷つける同級生、それを助ける達美という展開がテンポ良く、読者を引き込んで興味を持たせるのに十分な展開です。

あの丘の上まで2が、実はこの達美には色々と秘密があります。病気持ちである事はすぐに明らかになるのですが、もう一つの秘密があり、彼がゆいを助けたのも、その秘密ゆえの事でした。この辺りの展開も、少しずつ隠された事実を出して読者の興味を惹きつける、その展開バランスが良好でした。心情描写や情景描写も丁寧で、達美とゆいが徐々に仲良くなる展開にも、説得力があります。

しかし描写が丁寧な反面、丁寧過ぎて冗長な箇所が、特に中盤以降で散見されました。もちろん、大事な箇所ではしっかりと描写するべきと思うのですが、さほど大事とは思えない場面でも、非常に微に入り細を穿った文章が続くため、ちょっと疲れてしまいます(それはそれで、キャラクター同士の関係を読者に印象付ける事には成功しているとは思うのですが)。達美とゆいが、趣味を通じて仲良くなる描写そのものはこの作品において大事な要素であるとは思いますが、あそこまで詳細に描く事もなかったような気がします。

病院・闘病ものには全てそういう傾向があるのですが、どうしても場面が限られるため、単調になりがちです。そこへ加えて非常に長い描写が来るため、中盤はちょっと胃にもたれてしまう人が出るかも知れません。もう少し、進行上あまり重要ではない箇所ではさらっと流し、重要な場面をしっかり描くようにした方が、メリハリがついて良かったように思います。これは前作でもそうでしたし、更にその前の「あまやどり」でもそうでしたので、これがこの作者さんの作風なのかも知れませんが。

終盤にかけては、さほど突飛な展開はしないものの、「病院ものらしい」盛り上がりを見せます。それに大いに寄与しているのが、前作にも登場した進、灯、それに明。彼らは、それぞれの方法で達美に接触し、それぞれの方法で達美の事を支えてくれます。その距離感や、前作の出来事があるからこその、行動に対する説得力が、後半の盛り上がりを支えています。

そしてラスト。達美とゆいの、ある意味やきもきさせられるような関係の変化。これが早く来すぎると、興ざめしてしまうようなところもありましたが、「これ以上引き伸ばしたら読者がついていけなくなる」という、そのぎりぎりの点を狙い撃ちにしていて、その狙い撃ちが見事にプレイヤーの心を撃ち抜いてくれます。ここの展開から、一気にエピローグへ持っていく流れは見事でした。

前作でも登場した「丘の上」については、今作ではさほど有効に利用できていたとは言い難い気もします。ここをもう一つ上手に使っていれば、更にラストの感銘が上がったような気もしますが、しかし前作のラストで感じたような、登場人物の行動に違和感を感じるような事は、今回はありませんでした。エピローグで語られる、達美とゆいのその後にも、非常に納得でき、気持ちよく読み終えることができました。

難点ですが、ウィンドウサイズがかなりの横長で、もちろんテキストウィンドウも横長なので、ちょっと文章が読みにくいです。ワイドは諸刃の剣なところも多いですし(ワイドならではと思わされた作品は、ほとんどない)、ワイドになると文章が読みにくくなるのは当然の事ですから、ワイドを採用する場合は、文章についてはもう少し配慮が必要なのではないかと感じました。

ツールは前作同様「Cat System 2」。ウィンドウサイズの問題を除けば、プレイしにくいところはありません。選択肢はなく、プレイ時間は4時間くらいだと思います。中盤がちょっと間延びするところもありますが、純粋なハッピーエンドではないにしても、非常に気持ちのいい読後感を味わえる作品です。「ただのハッピーエンドは飽きた。でも読後感の悪い作品はいやだ」という方にお勧めします。
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