第444回/絆を武器に、永遠の時を断つ - とある吸血鬼ちゃんの人生(Unreality) - 伝奇
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第444回/絆を武器に、永遠の時を断つ - とある吸血鬼ちゃんの人生(Unreality)

伝奇
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とある吸血鬼ちゃんの人生

とある吸血鬼ちゃんの人生準推薦
■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/中二病的吸血鬼バトルノベル
■プレイ時間/30分

通称、「毒蜘蛛」。病気の妹の治療費を稼ぐために、暗殺者として生きてきたその男は、破格の報酬で、森の奥に住むという吸血鬼の暗殺依頼を受ける。吸血鬼の居城にやって来た毒蜘蛛が目にしたのは、妹よりも年下に見える少女だった。かくて、暗殺者と吸血鬼の、想像を絶するバトルが幕を開ける。メリハリの効いた短編伝奇バトルノベル。

ここが○

  • 戦闘シーンの迫力ある描写。
  • テンポよく、メリハリがしっかりした展開。
  • 毒蜘蛛とエルの絆の描写が素敵。

ここが×

  • 気になる人は気になるかも知れない、中二的な描写。
  • バトル物が好きでないと、退屈かも知れない。
  • 吸血鬼エルのバックボーンの描写がもう少しあれば。

■絆を武器に、永遠の時を断つ

私はあまりバトルものって読みません。理由は簡単で、バトルものの主なジャンルとなる伝奇ものが、非常に苦手だからです(ジャンル別作品リストの、「伝奇」の少なさ! 少ない代わりに、「準推薦」「推薦」が出る率も高いのですが)。この作品は「永遠の紡ぎ」「Remembers-果てなき記憶の輪舞-」の作者さんの最新作です。

前二作は、いわゆる地の文が少なく、会話主体の文章が特徴でしたが、今回はがらりと作風が変わっており、かなり凝った難解な描写を多用した、三人称の文章です。作者さん自ら「中二風」と書いておられますが、「月姫」とか、ああいう系統を想像していただければ分かりやすいでしょう。ここまで極端に作風を変える作者さんは、なかなか見ません。作者さんの引き出しの多さを感じさせてくれます。

とある吸血鬼ちゃんの人生ただ、そういう文章が苦手な人には、ちょっときついかも知れません。私個人も、難しい語彙や言い回しは、連発する物ではないと思っていますから。しかし、恐らく作品の半分以上を占めると思われる戦闘シーンの描写は大変テンポが良く、スピード感や迫力も十分。特殊効果による演出も効果的に働いており、戦闘シーンだけでも読み応え十分です。文章だけで読み応えある戦闘シーンを描くというのは難しいものですが(私も自信ない)、圧倒的に強い敵に、技と知力で挑む様子が非常によく書けていると思います。

主人公の「毒蜘蛛」は、病気の妹の治療費を稼ぐために暗殺者稼業に身をやつしているという設定です。黒ずくめのなかなか渋い男。対する吸血鬼エルは、見た目完全な少女です。このミスマッチが興味をひく上、バトルの熱い描写も相俟って、中盤までは一気に読み進められます。

そして中盤からいきなり「え!?」という展開。この辺りは、超展開を得意とする作者さんならではというところ。そして再びのバトルも、最初の戦いとはまた趣が違う読ませ方をしてくれます。作者さんが、こういう戦闘描写をよく研究しているなというところが窺えます。

難点というほどの物でもないのですが、吸血鬼エルの背景というか過去というか、読み手がもっと感情移入できるような描写でもあれば、より良かったような気もしました。特に中盤での振る舞いはとても可愛らしいので、そこの描写だけでも十分に魅力的なのですが。とは言えそれを入れてしまうと、短編とは言えない長さになりかねませんし、リズムを損なう恐れもあります。このくらいがちょうどいいのかも知れません。

ラストでは、ちょっとびっくりするような事実が明かされます。「そう言えば、そんな感じの描写があったな」と、その時やっと気付きます。上手いミスリードのさせ方でした。ただ、毒蜘蛛が病院に行った時の、妹云々の件については、ちょっと謎が残りました。ラストの説明通りであれば、あそこの描写は一体どういう意味だったのか、機会があれば再読してみようと思っています。

もう少し中盤の日常描写が長ければ、もっとラストの感銘が深まったような気がしなくもありませんが、この作品は、この尺の長さで戦闘シーンと日常シーンを効果的に使って、ラストの驚きを見せてくれるところが美点ですから、これもこのままがいいのでしょうね。毒蜘蛛とエルの絆の描き方が、素敵です。ただ、中盤の展開の前に、エルがああいう申し出をするに至った心境くらいは、描写しても良かった気がします。そこだけはちょっと唐突感を感じてしまいました。

ツールはLive Makerです。選択肢はなく、プレイ時間は30分程度だと思います。30分のプレイ時間ですが、戦闘シーンのテンポと、短編らしからぬ超展開とラストの驚きで、プレイ時間以上の満足度を感じさせてくれる一作です。伝奇ものが苦手な方でも、これくらいの長さであれば気軽に楽しめると思いますよ。
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