第448回/猫と古都と金魚鉢 - 雪花 -きら-(tinsmith) - 不思議系
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第448回/猫と古都と金魚鉢 - 雪花 -きら-(tinsmith)

不思議系
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雪花 -きら-

雪花 -きら-■制作者/tinsmith(公開終了)
■ジャンル/古都で吸血鬼との出会いノベル
■プレイ時間/25分

斗一は、木造住宅が立ち並ぶ古都へ引っ越してきていた。雪が舞うその日、飼い猫を追いかけてある家の前まできたが、そこで舞子という少女と出会う。やがて2人は「夜だけの友達」になるが、舞子にはある秘密があった。舞子の秘密とは一体? 古都の情緒漂う名作短編ノベル。(注・この作品は18才以上推奨です)

ここが○

  • 雰囲気たっぷりの1枚絵。
  • アニメ風ではなく、あくまでノベルゲーム風を貫いた演出。
  • 美しい文章。

ここが×

  • 展開が性急すぎる。
  • 操作性は色々良くない。
  • 全体に説明不足。

■猫と古都と金魚鉢

夏をテーマにした作品が3本続いたので、今度は冬です。そしてこの作品はかなり古いです。公開が2002年くらいではないでしょうか。今から15年以上前です。実はこの作品、既にプレイ済みで、あえてレビューをしていませんでした。

が、この作品は2018年の8月いっぱいで公開を停止するとの事。古い作品ながらオリジナリティのある佳作ですし、最近ノベルゲームを始めた方の中には、プレイした事のない人も多いでしょう。古い作品にも、今の作品と全く遜色のないストーリーの作品が多数あるという事をお知らせすべく、公開停止まで1月を切った今、あえてレビューを書く事にした次第です。ですから、気になった方は、二度とダウンロードできなくなる前に、一刻も早くダウンロードしてください。

雪花 -きら-舞台は冬の古都(京都かな?)です。引っ越してきたばかりの斗一は、逃げてしまった飼い猫の「しろ」を追いかけ、とある家の前まで行きました。そこで舞子という不思議な少女と出会います。典型的な、ボーイミーツガール型の序盤です。季節は冬っぽいのですが、文中に「小春日和」という表現が出てきて、「え、11月!?」と面食らってしまいました。

雪の背景写真や、ピアノを主体にした落ち着いたBGMは、古都の雰囲気をしっとりと醸し出してくれます。ヒロインの舞子が喋るのは、もちろん京都弁(同じ関西弁でも、京都と大阪では全然違うのです)。この方言も、柔らかな雰囲気を読者に与える一要素になっていると思います。

さて、中盤以降斗一と舞子は急速に仲良くなっていくのですが、あまりに急速に仲良くなりすぎではないでしょうか。「夜だけの友達」になった以降、ほとんど交流の場面の描写もないまま、18禁描写に突入した時は、正直画面の前でちょっと固まってしまいました。せっかく魅力的なヒロインなのに、これはちょっと勿体無いです。ここはもう少し丁寧に筆を割いて描写した方がよかったように思うのですが……。

そして、舞子が実は吸血鬼である云々という事実が分かり、またも物語は急展開。ラストは色々な解釈ができるでしょうが、結構衝撃的です。ですが、ちょっと脈絡がないというか、説明不足なきらいがあるため、人によっては「何のこっちゃ?」となってしまうかも知れません。じっくり読むと、意外に前半から伏線が張られている事に気がついたりするのですが(ですから、できれば2回読む事をお勧めします)。

ただ、今作の演出は一見の価値があります。流行りの、アニメよりの演出ではなく、絵と字の出し方にこだわり、あくまで「ノベルゲーム」としての演出を貫いています(2002年リリースという、時期的なものもあるでしょうが)。立ち絵を動かすなどと言ったアニメ風の演出も、時には面白いものですが、アニメ風の演出は当然アニメそのものに勝てるはずはありません。文章と絵で楽しませるノベルゲームには、やはりノベルゲームの流儀というのがあるんだなと、この作品を読むと感じさせられます。

また、文章が大変美しいのが特長です。と言って、変に小難しい言い回しを多用している訳でも、自己満足なレトリックに耽っている訳でもありません。簡潔で、それでいて綺麗。機能美を感じさせる美しさです。だからこそ「小春日和」は気になりましたが。あとは、ルビが一切振られていないのが、ちょっと不親切でした。おかげで、作品名すら「ゆきはな」なのか「せっか」なのか、はたまた「きら」なのか分からないという(一応作品リストでは「きら」と読むものとして分類しています)。

ツールはNScripterですが、ごく初期のもののため、マウスホイールでのテキスト送りもできず、文章の読み返しもできません(読み返したいタイプの文章なので、これはかなり痛い)。無造作にテキストを送らないように気をつけましょう。プレイ時間は30分弱で、選択肢はありません。すっきりしないと言えばすっきりしない物語なのですが、逆に非常に強い余韻を感じさせてくれます。こういう作品を夏に読んで、寒い季節に思いを致すのもいいかも知れません。
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