第449回/はっきり白黒つけさせて - ダークハーフ(オザキショウゴ) - ミステリー・サスペンス
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第449回/はっきり白黒つけさせて - ダークハーフ(オザキショウゴ)

ミステリー・サスペンス
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ダークハーフ

ダークハーフ準推薦
■制作者/オザキショウゴ(ダウンロード
■ジャンル/陪審員心理バトルノベル
■プレイ時間/1時間半

主人公の東原は、ある事件の陪審員に選ばれた。その事件は、著名なロック歌手が、「想像の中で」殺人を犯した、という風変わりなもの。選ばれた陪審員は、東原含めて合計8人。年齢性別ばらばらの個性的なメンバーとやり合い、果たして全員一致の評決に辿り着けるのか? 「心理バトル」とも言えそうな描写が面白く個性的な物語。

ここが○

  • 個性的な登場人物。
  • しかも、登場人物が多いのに埋没しているキャラがおらず、みんなしっかり描かれている。
  • 心理面の変化の描き方が上手く、緊迫感がある。

ここが×

  • リアリティはあまりないので気になる人は気になるかも。
  • テキストウィンドウ右上のアイコンが小さすぎる。
  • 終わり方があっさりし過ぎている。

■はっきり白黒つけさせて

非常に珍しい作品です。「動脈と静脈」の作者さんの作品ですが、この作者さんの作風は、非常に独特。とある事件の陪審員(裁判員のようなもの)の評決の様子を描いた作品です。似たようなテーマの作品としては「ゲームで裁判員! スイートホーム炎上事件」がありましたが、あちらは弁護士会が制作していたため、結構リアルでした。が、今作はその辺りは完全にフィクション。裁判員裁判であれば、評決には裁判官も色々絡んできますが、今作では裁判官はまるで絡みませんし(弁護士も検察官も。大体2番目の事件では、陪審員達は裁判すら傍聴しておらず事件の概要をファイルで読むだけ)、それに日本の刑法では、作中の事件で死刑になる事はまず有り得ませんし、そもそも裁判には警察は絡みませんからね。

また、事件も突拍子もありません。最初の事件は、麻薬を常用していた著名なロック歌手が、「想像の中で」殺人を犯した、というもの。元々麻薬所持で捕まったその歌手は、警察の取り調べのためのシミュレーターの中で、この「犯罪」を犯したんだそうです。んなアホな、と突っ込みを入れたくなりますが、登場人物達はこの「事件」を、大真面目で論じていきます。

ダークハーフ評決に参加するのは、主人公の東原を含めて合計8人。これだけのキャラクターがいると、十分描ききれず、ただいるだけの存在価値のないキャラクターが出たり、ごっちゃになってしまう事も有り得るのですが、この作品ではその辺りが非常に上手く書かれていました。キャラクターの個性はもちろん、それぞれのキャラクターの立ち位置がしっかりしていてそれなりに役割を持っており、埋没しているキャラクターが1人もいませんでした。

評決は、全員の意見が一致しないと出せません。そして主人公は無罪派ですから、有罪派のメンバーをいかに説き伏せるかが鍵となります。この辺りのやり取りが緊迫感があって面白く、時には敵だと思っていたメンバーが助け舟を出してくれたり、人間模様を描いた物語としてとても面白いです。芝村が最後に自分の考えを変えるシーンは、とてもよく出来ていました。

最初の事件が無事解決すると、2番目の事件に突入します。こちらは、警察の回し者としか思えないキャラクター、新垣が陪審員に入ってきて、これまたリアリティには欠けますが、メンバー同士のやり取りは、1番目の事件以上に面白くなってきています。やはり、明確な敵役がいると、物語は盛り上がるものです。

また、新垣に隠された秘密を、四里元がかまをかけて暴くシーンなども見応えが有ります。閉鎖空間の中だけの物語なのに、かなり読み手の感情を動かしてくれます。サイコサスペンスは、人間の狂気を描いて読者を不安にさせる心理物語ですが、この物語では、普通の人間のやり取りだけで読み手をはらはらさせてくれる点において、ある意味立派にサイコサスペンスだと思います。

ただ、2つ目の事件の後半は、ちょっとくどい感があります。頑なに自分の意見を曲げなかった新垣が折れたきっかけが、意外な証拠の見落としなどではなく、先に十分描かれていた事の再確認だったので、ここにはもう一捻りが欲しかったようにも思いました。まあ、新垣がああいうキャラなので、あそこの描写は、くどくならざるを得なかったような気もするんですけど。

2つの事件は、途中に出てくる選択肢で、実は有罪か無罪かの結果が変わります。そして、選択肢の組み合わせによって、真相解明編とも言える最終話に突入し、この最終話では新垣に隠された真相や、2つ目の事件の黒幕も明らかになります。まさかこんな条件でストーリーが分岐するとは思わなかったので、最終話が始まった時はびっくりしてしまいました。

ただこの最終話は、真実こそ明らかになれ、終わり方は非常に呆気なく、ある意味誰も救われないエンディングです。これなら自力で2つの事件を無罪に導いた方が読後感がいいくらいです(そちらも素っ気ない終わりかたですが)。せっかくの最終話なのですから、もうちょっと最後はきちんと描写して、読後感のいい終わり方をして欲しかった気がしました。それと、テキストウィンドウの右上にセーブなどができるアイコンがありますが、これがあまりにも小さすぎて最初は全然気付きませんでした。もう少し大きくても良かったのでは。

ツールはLive Makerです。選択肢は2ヶ所で、上に書いたように分岐しますが、分岐条件は非常に簡単なので、攻略に困難さはないでしょう。プレイ時間は1時間半から2時間くらい。ほとんど終始同じ部屋の中で、キャラクターのやり取りだけで進む物語ですし、設定等にリアリティがあるとは言えないのですが(起動してすぐその旨は説明がある)、逆に登場人物のやり取りには非常にリアリティを感じさせてくれます。心理描写が面白い人間ドラマを読んでみたい方にはお勧めです。きっと楽しめると思います。
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