第451回/明日から吹く風は、私の歌声 - 幸福のラルカ(Libretto) - 日常
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第451回/明日から吹く風は、私の歌声 - 幸福のラルカ(Libretto)

日常
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幸福のラルカ

幸福のラルカ準推薦
■制作者/Libretto(ダウンロード版ブラウザー版
■ジャンル/四季折々カフェ交流ノベル
■プレイ時間/30分

ある雨の日に、カフェ・エスタシオンのウェイトレスであるリリィは、店の前でずぶ濡れの客を見つけた。取り急ぎその客を店の中に案内し、店員たちで体を拭き温かい紅茶を振る舞った。それからその客はすっかり常連になり、足繁くカフェ・エスタシオンに足を運ぶように。カフェで店員のお話を聞きながら交流を深める、ほのぼのノベル。

ここが○

  • 少女漫画風の立ち絵が綺麗。
  • 動きを伴った演出が凝っている。
  • 魅力的な登場人物に、キャラにぴったり合った声。

ここが×

  • 地の文が一切存在せず、ちょっと読み応えに欠ける。
  • 動きの演出は凄いが、ちょっと演出過多に感じるところも。
  • なので、ノベルゲームというよりRPGのデモでも見ている気分に。

■明日から吹く風は、私の歌声

ノベルゲームと喫茶店って相性が良いようで、喫茶店を舞台にした作品って、結構あります。「挽歌の候、如何お過ごしでしょうか」とか、「くらげカフェ日和」とか。この作品も、舞台は終始カフェの中。現代日本ではなく、ちょっとファンタジー風の設定のようです。

前回、「KiTAN」のレビューで、台詞が一切ないと書きましたが、この作品は逆に、いわゆる地の文が一切存在しません。そして、「猫になりたい」同様、立ち絵が動きます。単に上下左右に動くのではなく、アニメのような動きです。こういう演出は賛否両論でしょうが(やりすぎると、「音や絵の演出のもと、文章を読む」というノベルゲームの楽しさを失う気がして。後述)、凄い事は確かで、初めて見ると驚きます。

幸福のラルカこの作品の立ち絵は、流行りのアニメ風ではなく、少女漫画風のよく書き込まれた絵柄ですが、画力も高く大変綺麗で、それが動くのですから、驚かないはずがありません。しかもこの作品はフルボイスです。この声がまた、キャラのイメージにぴったりの好演です。コーデリックの声なんて、大塚明夫を思わせる渋さ。私は、声入りの作品で声を残らず聞く事はまずないのですが、この作品は全部の声を聞きたくなりました。

この作品、それほど大げさな展開はしません。冒頭で、カフェ・エスタシオンの面々と知り合った主人公が、季節毎にエスタシオンに立ち寄り、店員のそれぞれと会話をする中で、主人公が生きる上のヒントをもらえるというか、そういう感じのお話です。一応、ラストでは主人公の秘密が明かされるのですが、それは結構な確率で途中で気付くでしょう。まあ、この作品においては、そういう秘密がどうとかいうよりも、店員との交流が物語の主軸です。

この店員との交流で、それぞれの店員が色々なお話を聞かせてくれるのですが、これがどれも含蓄に富んでいて、味わい深いです。また、その際のカフェの中での描写や、店員とのやり取り、更には章毎に見られるちょっとした動く演出も効いており、プレイ時間以上に内容は充実していると思います。

語られるエピソードの中には、店員の体験談かと思しきお話もあるのですが、そこは深入りはされていません。もう少し、語られるお話と店員を絡めて、店員の描写を深く掘り下げてみても、面白かったかも知れませんね。そうすると、このプレイ時間では収まらなかったでしょうし、この長さで一気に読め、かつ閉鎖空間の物語でありながら季節感まで感じさせてくれるところが、この作品の良さのような気もしますが。

この作品は、上にも書いた通りに地の文がありません。更に、主人公の台詞もありません。加えて、キャラが動いたり、雪が舞ったり、視点が移動したりという、動く演出が、特に心情を語る訳でもありません。なので、文章を読んで想像を働かせるという、ノベルゲームならではの楽しみがちょっと薄い気がします。特に主人公の台詞もないので、なんだかノベルゲームというよりも、RPGのデモでも見ている気になってきます。もう少し、文章面でも演出があればと思わされました。

この辺りのバランスがノベルゲームでは難しいですね。文章の読み応えは大事ですが、あまりに文章が凝って難しければいいというものではなく、それなら小説を読んだ方がいいですし、逆に動く演出にばかり凝ると、それならアニメやドラマ、映画、あるいは動画を見た方がいいという事になってしまいます。「文章を、音や絵の演出で楽しむ」という、ノベルゲームならではのスタイルを、考えさせられました。この作品の演出については、スクロールを伴った室内の視点移動については、ワイド画面のメリットが出ているなと思いました。

ラストは、特に驚く展開がある訳ではないですが、主人公が、店員達との会話から、自分がこれから生きていく指針を見出すという、前向きな終わり方です。選択肢は、4ヶ所あります。選択肢には、恐らく正解不正解があり、その数で分岐していると思われます。エンディングは3種類。正解不正解を見分けるのはそれほど難しくないと思いますが、グッドエンド以外はどうにも消化不良な終わり方ですので、あえて全部見なくてもいいかも知れません(最後がちょっと変わるだけですし)。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は30分くらいですが、台詞を残らず聞けば45分〜50分くらいになるかも知れません。ティラノは、既読スキップに難がある作品が多いのですが、この作品は、既読文章は色が少し変わり、未読部分ではきちんとスキップが止まります(ただ、一部でクリックしないのに勝手に文章が流れる箇所がありました。読み返せば済むことではありますが)。一風変わった雰囲気の「カフェノベル」。気軽に味わってみてください。
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