第458回/雨のバス停、一幕の非現実 - 雨宿りの理由(祟月近衛頼忠) - 日常
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第458回/雨のバス停、一幕の非現実 - 雨宿りの理由(祟月近衛頼忠)

日常
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雨宿りの理由

雨宿りの理由■制作者/祟月近衛頼忠(ダウンロード
■ジャンル/失恋雨宿りノベル
■プレイ時間/15分

佐々木柚子は、好きなクラスメイト木下雅也に告白したが、断られてしまい、雨の降る中を傘も差さずにバス停までやってきた。そこに、同じくずぶ濡れのクラスメイト、柏木陸が姿を現す。柚子の様子を見て、柏木は心配そうに声をかけてきた。雨音が聞こえて来そうな美しい背景と文章が特徴的な、短編物語。

ここが○

  • 背景画像が非常に美しい。
  • 文章も美しく、何気ない描写が非常に綺麗。
  • 二つの意味を引っ掛けた言葉遊びがちょっと面白い。

ここが×

  • 柏木が、ちょっと病みすぎているような。
  • エンターテインメント性のある物語ではない。
  • 言葉遊びに、若干の違和感。

■雨のバス停、一幕の非現実

また短編作品です。そして文章だけの作品。文章だけで立ち絵がない作品は、例外なく文章力が高く、また背景写真に凝っている作品が多いイメージがありますが、この作品もそのイメージ通りに高い文章力、そして美しい背景画像で楽しませてくれます。

この作品、文章は全画面表示ではなく、画面下部のテキストウィンドウに表示される形式です。文章だけの作品の場合、全画面にすべきという意見もありまして、それはそれでもっともな主張であるとは思うのですが、全画面だと背景写真をじっくり味わえなくなります。こういう背景写真が美しい作品なら、立ち絵がなくてもテキストウィンドウ方式は、十分にありな見せ方だと思います。

雨宿りの理由この作品は非常に短い上、物語としては特に捻りがある訳ではありません。エンターテインメント寄りのシナリオではないのです。ですからそういうのがお好みなら、ちょっと物足りないかも知れません。ですが、美しい写真と整った文章で、少年少女の心情を描き出すという点においては、非常に優れたものを持っている作品です。物語ではなく、「場面」を味わう、こういう短編作品も、またノベルゲームの一つの方向性だと思います。

この作品、フォントがちょっと独特です。漢字だけが大きく、仮名はちょっと小さいのですが、これがなかなか面白い効果を生んでいます。読みやすいとは言えないのですが、この作品の雰囲気には合っていると思いますし、私はこのフォントはありだと思います。

さて、この作品には2本のシナリオが入っています。「雨宿りの理由」と「もう一つの理由」。前者は柚子視点、後者は柏木視点です。そして、このシナリオ選択画面がちょっと分かりにくいと言いますか……。画面の上下のどちらかにマウスカーソルを合わせると、そのシナリオ名が表示され、もう一方は消えるという仕様です。これに私は気付かずに、最初に「もう一つの理由」を読んでしまいました。この選択画面は、もうちょっと分かりやすくした方が良かったような気がします。

何故なら、プレイした人なら分かる事ですが、この作品は完全に「雨宿りの理由」→「もう一つの理由」の順に読ませる構成になっています(逆に読んでしまった私って一体(笑))。「もう一つの理由」を読了後、マウスカーソルをぐりぐり動かして気付き、「うわあ!」と頭を抱えてしまいました。

その「もう一つの理由」。これが何ともアレな展開です。ちょっと柏木君が病み過ぎなんじゃないでしょうか。何せ短編で、柏木の行動の裏付けや、彼の異常な心理の奥底が特に描写される訳でもないので、いきなりこんな病んだ行動をされると、ちょっと読み手は置いてけぼりを食らう感があります。意外と言えば意外な展開で、この二面性がこの作品の独自性ですし、驚いた事は驚いたんですが、何とも言えない後味の悪さが残ってしまいました。

それと、「ふられる」「やんでる」のダブルミーニングの言葉遊び。文章で読むと面白いですが、ちょっと違和感を感じました。少し考えて違和感の正体に気付いたのです。「振られる」「降られる」では、音こそ同じですが、声に出して読んだ時のイントネーションが違うのですね(「やんでる」の方も同様です)。試みは面白いとは思うのですが、そういう訳でちょっともやもやしたものが残りました。

ツールはWolf RPGエディター。名前の通りRPG用のツールですから、NScrや吉里吉里と比べると、凄くプレイしやすいとは言えないのですが、短編ですから特に不都合は感じませんでした。選択肢はなく、プレイ時間は2本のシナリオを読んでも15分だと思います。気になった点もありますが、高い文章力で一幕の非現実を味わえる小品です。
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