第460回/大好きだから、僕は旅立つ - 籠の街(稲海) - 日常
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第460回/大好きだから、僕は旅立つ - 籠の街(稲海)

日常
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籠の街

籠の街■制作者/稲海(ダウンロード
■ジャンル/田舎町思い出共有ノベル
■プレイ時間/1時間

ここは何もない小さな田舎町。しかし少年ウェイトにとってこの街は、何にも代え難い宝だった。ウェイトの保護者である祖母、町外れの屋敷に住む病弱なお嬢様、そしていたずら好きの坊や。今日も彼らとの変わりばえのない、それでいてかけがえのない交流の日々が始まる。柔らかい色調の絵が素敵な、田舎町での日常ノベル。

ここが○

  • 柔らかい筆致の絵が大変美しい。
  • 生き生きと描かれたキャラクター達。
  • 意外なトゥルーエンドと心に響く手紙演出。

ここが×

  • トゥルールート以外はあっさり終わり過ぎのような。
  • 3人のキャラのエンドの分岐の意義があまりない。
  • 大きなイベントがある訳ではないので、少々平坦。

■大好きだから、僕は旅立つ

最近は、絵だけで「おおっ!」となる作品には、そうそう出会えるものではありません。何せみんなレベルが高いですからね。そんな中、この作品の絵は一際目をひきました。柔らかいタッチはもちろん、色使いが水彩風で、なんとも暖かい絵柄なのです。いかにもデジタルの、アニメ風の絵柄の作品は山ほどありますが、こういう絵柄の作品はそうある者ではありません。

そういう訳で私は、絵で作品を選ぶ事はまずないのですが(絵が上手くない作品でも、意外と内容が濃かったりするのはよくある事ですし、逆もまた珍しくないので)、この作品は私にしては珍しく、絵に惹かれてダウンロードしてみました。

籠の街舞台は、小さな田舎町。そこでおばあさんと暮らすウェイトという少年が主人公です。立ち絵だけでなく、背景写真も柔らかな雰囲気の加工がされており、とても雰囲気のいい作品です。音楽は、クラシックやよく知られた曲を使っており、これがまた絶妙でした。坊やのテーマとして使われていた、ジョプリンのメイプルリーフラグは、いい選曲でしたね。

物語は、選択肢でおばあさん、お嬢様、坊やの誰とその日を過ごすかを選び、それを繰り返して進んでいきます。さほど大きな事件が起きる訳ではないので、ドラマティックな物語を求めていると、ちょっと退屈するかも知れません。しかし、田舎町でのんびりと交流を楽しむ様子が上手く描写されており、プレイヤーにこの街での思い出を作ってもらうという意味では、上手く行っていると思います。

が、最初にプレイするとあまりにも呆気なく終わってしまうので、拍子抜けしてしまうかも知れません。特に起承転結がある訳でも、どこかに盛り上がりどころがある訳でもなく、いきなり終わってしまうのです。この作品のメインというか真髄は、トゥルールートにあるのは間違い無いのですが、下手をしたら最初のプレイで「何だ、大した事ないな」と思ってしまう人がいても不思議ではありません。それは勿体無い事です。

攻略対象キャラは3人で、3人にはそれぞれ2つのエンディングがあります。3人のエンドを一通り見ると(3人を1回ずつで大丈夫です。6種類見る必要はありません)、新たな選択肢が追加され、そこで新しい出会いがあります。これこそがトゥルールートへの分岐点となります。

このトゥルールートも2種類に分岐します。ここで、この街の秘密が明らかになり、ちょっと素っ気ない終わり方をしていた各キャラルートでの伏線もいきてきます。そしてトゥルーグッドは、最後の手紙の演出がとてもいいですね。手紙の演出って、よほど下手な使い方をしなければ、十分効果的になるものですが、ここの手紙演出の効果は、過去の作品と比べても非常に秀でていたと思います。

旅人の正体は作中では明かされませんが、多分そういう事なんじゃないだろうかと思います。そこまで踏み込んで語って欲しかった気もしましたが、そこは想像にお任せします、という事なんでしょうね。全体に描写は薄味風味の作品で、もうちょっと深く描いて欲しいところもあるのですが、普段はさらっと流し、ここぞというところでぐっと踏み込む、その緩急がこの作品の良さという気もします。

キャラクターはみんな魅力的です。特にお嬢様は可愛いですし、ウェイトの事を思いながらもつい口うるさくなるおばあさんや、坊やとの交流もとても微笑ましく、プレイした人は登場キャラみんなを好きになる事でしょう。ただ、上で書いたようにこの3人のルートは非常に薄味で、特にメインではない方のエンドは更にあっさりしています。これなら、この3人のルートは無理に分岐させず、単一エンドで、もうちょっと充実させた方が良かったのでは……。

ツールは非常に珍しいRen'pyですが、とても快適にプレイできます(最近、プレイし辛いティラノがやたらに増えているので、余計にそう感じます)。エンディングは8種類。Ren'pyの既読スキップは非常に優秀なので、全部のエンディングを見ても1時間というところだと思います。主人公と、街での思い出を共有できる物語。味わってみては如何でしょうか。
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