第468回/柳の下に猫がいる、だから猫柳 - ようこそ、猫柳堂書店へ。(CF) - オムニバス・その他
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第468回/柳の下に猫がいる、だから猫柳 - ようこそ、猫柳堂書店へ。(CF)

オムニバス・その他
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ようこそ、猫柳堂書店へ。

ようこそ、猫柳堂書店へ。■制作者/CF(ダウンロード
■ジャンル/書店人間模様観察ノベル
■プレイ時間/30分

都心から離れた商店街の中にある小さな個人書店「猫柳堂書店」。店長の橋下一純の元、個性的な店員たちが今日も、訪れる客をそれぞれのもてなし方で出迎える。そんな書店で描かれるほのぼのとした人間模様。書店を舞台にした、オムニバス形式の短編ノベル集。

ここが○

  • 独特の暖かい空気感で織りなされるバラエティに富んだお話。
  • イメージに合った声の演出。
  • 書店のリアリティ。

ここが×

  • ちょっと短すぎる気がする。
  • 文字が小さい上に線が非常に細く読みにくい。
  • 最後まで登場しない猫柳さん。

■柳の下に猫がいる、だから猫柳

最近、立ち絵のない文字だけの作品が比較的多いですが、この作品もそうです。が、この作品が普通の「絵なし」作品と違うのは、何とフルボイスであるという事。絵がない作品で声ありの作品というのは、かなり珍しいです(他には「春椿」が確かそうだった記憶)。

声が付くというのは良し悪しで、豪華になる反面、プレイヤーの想像の余地がなくなってしまい、一概に「声がついたから良くなった」とは言い難い面もあります。ではこの作品の場合どうかと言いますと、絵がなく声だけという独特のスタイルが、意外にもむしろ想像力を掻き立ててくれています。絵がなく声だけで、視覚と聴覚のうち聴覚の情報が与えられている事で、かえって視覚情報に対する想像力が高まるのですね。これは面白い作りです。

ようこそ、猫柳堂書店へ。舞台は「猫柳堂書店」という、個人経営の小さな書店。この書店で働く店長や、個性豊かな店員たちが登場人物です。そして、舞台となるのはこの書店の中だけです。書店の中で起こる出来事など高が知れていますから、退屈な物語になるかと思いきや、店員たちの個性と、派手ではないものの様々な事件が上手く絡み合い、物語としても面白く仕上がっています。

この作品は、短編作品が集まったオムニバス形式です。本編が5本あり、サイドストーリーも同じく5本。それぞれのストーリーでは、基本的に書店スタッフ(または客)の男女一組がメインで取り上げられます(最終話だけはちょっと毛色が違いますが)。ストレートな恋愛模様あり、ちょっと悲しい物語あり、素直になれない男女の物語あり、切り口は色々で、短編ですが、書店の独特な空気感もあり、楽しめる作品集です。

ただ、キャラクターと舞台は面白いのですが、流石にちょっと短すぎのような気がします。普通の速度で読んで、1話はおおよそ3分くらいで読み終わります。3分なのに、ちゃんとそれなりに起伏がついて、きちんとした落ちが付く話ばかりなので、その意味では良くできているのですが、やはり短すぎるせいか、一部のお話は少し急ぎすぎのようにも感じました。もうちょっと尺を長く取ってしっかり語った方が良かったように思います。

何せ読んでいると、舞台の独特の空気感が心地良く、この世界観をもっと味わっていたいと思ってしまったのですね。それだけに、もう少し長く語って欲しかったなと思いました。もう少し尺を伸ばしても、十分耐え得る物語だったと思いましたから。

独特の空気感が心地良いと書きましたが、その心地良い空気感を演出しているのは、やはり店長である橋本一純です。彼自身が物語の主役になる訳ではないのですが、若いスタッフ達を影から支えて優しく導く、とてもいい役どころでした。声がまたぴったりとイメージに合っていて、素敵でしたね。もちろん女性キャラの声もいいのですが、この作品は全体に、男性キャラの声と演技がとても印象に残りました。また、書店の雰囲気がリアルです(私は書店で働いた事はありませんが)。この手の作品は、こういう些細なリアリティで印象が変わったりしますから、こういうのは大事ですね。

そしてラストには、書店の名前にもなっている「猫柳さん」という猫が現れます。この猫柳さんと橋本の掛け合いがなかなか面白く、個人的には、この猫をもうちょっと他のストーリーでも絡ませて欲しかったように思います。上手く絡ませれば、シナリオのボリュームももう少し増えたでしょうし、全体の統一感も出たような気がします。最後で少し出して終わりにするには勿体ないキャラクターだと思いました。

丁寧に作られた作品でとても好感が持てるのですが、ただフォントは見にくくて参りました。書店を舞台にしたという作品イメージには合っているのですが、線が細い上文字サイズも小さいので、読み辛く感じました。ここはもうちょっと大きめに調整しても良かったのではないでしょうか。

ツールはティラノスクリプトです。本編5本、サイドストーリー5本を読んで30分程度です。選択肢はありません。サイドストーリーは、本編のカップルのその後を見られたりして、キャラクター中心のお話で、こちらもなかなか楽しめます。優しくほのぼのとした、この雰囲気はとても私好み。重厚長大で派手な物語ではなく、手軽に優しい物語を味わってみたい方にはお勧めです。
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