第471回/生きてる限り、笑顔で楽しめ - select(gawa) - 不思議系
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第471回/生きてる限り、笑顔で楽しめ - select(gawa)

不思議系
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select

select■制作者/gawa(ダウンロード
■ジャンル/我儘なチャンスの神ノベル
■プレイ時間/45分

かつて、幼馴染のユズに裏切られたと思い込んでいたタカヒロは、2年間ずっとユズの事を無視していた。ある日、橋の欄干から身を投げようとしているユズを見て、タカヒロは血相を変えてユズの元に駆け寄る。ユズは無事に助かったが、帰宅したタカヒロの前に、奇妙な「自称神様」が現れた。機会の神が叶える願いとは一体?

ここが○

  • 奇妙な神様とのどたばたぶりが面白い。
  • 程よくじれったい主人公とヒロイン。
  • 短い時間でテンポよく盛り上がる展開。

ここが×

  • 思い込みが強すぎる気がする主人公。
  • もう一捻りがあっても良かった気が。
  • マリのルールが、少し都合よく感じる。

■生きてる限り、笑顔で楽しめ

「推薦」作、「オモイ オモイ」の作者さんの作品です。独特の絵柄を見れば、すぐにあの作者さんだなと分かるのですが、前作と比べると随分絵が上達しているように思えます。前作と今作に2年近くの間がありますが、こういう変貌ぶりを見る事ができるので、取り上げた作者さんの作品は、定期的に追いかけて見たくなります。

今回の作品は、「素直になれない幼馴染もの」です。主人公のタカヒロが、過去の初恋で、ユズに裏切られたと思い込んでおり、それがきっかけでタカヒロは2年間ユズを無視し続けます。この辺りの主人公は、ちょっと思い込みが強すぎるというか、少しはユズの側の事も想像してあげれば、容易に彼女に非がない事くらい気付きそうなもので、序盤からそこがちょっと気になったのですが、あの年頃というのはそんなものかも知れません。

select実際、開始して割とすぐに、2人は仲直りしますし、この辺りのタカヒロは素直に自分の非を認める男らしいところを見せてくれるので、悪い印象を引きずる事もありません。そして自称「機会の神」であるマリが出て来て、日常のどたばた度が加速していきます。このマリが、デザインといい喋り方といい、「一生に一度の、」を思い起こさせました。

この3人のやり取りで面白いのは、「マリは現在取り憑いている相手にしか、姿を現せない」というもの。なのでユズにはマリは見えないのですが、タカヒロの前にマリが取り憑いていたのはマリであるため、話題は共通に通じるものの、ユズにはマリの姿が見えないため、絶妙な噛み合わせを見せてくれます。ここの3人のやり取りは、それだけでもとても楽しく読む事ができました。

そして中盤からの、美化委員の合宿から一気に終盤に向けて話が動きます。この辺の展開は、マリの絡み具合と引き具合が良かったと思います。マリはあくまで「機会を提供するだけ」で、実際に運命を切り開くのはタカヒロ達なのですよね。マリの能力頼みの展開になる事なく、主人公達の力で困難を克服するというのがしっかり描かれており、好印象でした。

ただ、マリの「伝染する」というのが、些か都合のいい条件に感じました。マリが願いを叶えたら、叶えるのに影響を及ぼした人に今度は取り憑くというルールなのですが、そのためラストではタカヒロとユズの間を行ったり来たりする事に。それはそれで、物語展開としては面白いのですが、少し緊張感を欠いてしまったところもあります。2人が、お互いの事を願い続ければ、ずーっとマリは2人の間を行ったり来たりする訳ですからね(ラストでマリも、そういう風なニュアンスの事を言ってますし)。こういうさじ加減って難しいものではありますが。

タカヒロとユズの関係の描き方は、ちょうどいいくらいのじれったさを上手に書いており、それにマリも上手く入って来て、3人のやり取りは心地良いものでした。この手の「素直になれない2人」を描く場合、過剰に「あいつは幼馴染で」というのを強調し過ぎると読み手が付いてこれなくなりますし、すぐにくっ付いてしまうと、今度は緊張感のない物語になります。この作品は、2人の関係の微妙な距離感が、とてもよく描けていたと思います。

ラストも綺麗な終わり方ですが、マリとは別れるでもなく、日常がまだ続く、みたいな曖昧な描写で終了してしまったので、ここはもっときちんと白黒つけて欲しかったような気がしなくもありません。それと、序盤で「嗚咽」という言葉が出てきたのですが、状況からして「むせび泣いた」(=嗚咽)のではなく、「うめき声をあげた」くらいの感じに思えたので、ここの言葉にはちょっと引っかかりました。

ツールはティラノスクリプトです。ブラウザーでも遊べるのですが、なんとブラウザー版ではセーブが出来ませんので、迷わずダウンロード版を選びましょう。エンディングは3種類ですが、選択肢は少なく、迷う事もないでしょう。全部のエンドを見て、おまけまで見て45分くらいだと思います。コミカルなキャラクターと面白い設定の短編ドラマ。次回作でどんな進化を遂げるのか、楽しみです。
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