第472回/三日間の憂鬱と温もり - 誘拐犯のくせに優しくしないで下さい!(Honey serious) - アクション・ドラマ
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第472回/三日間の憂鬱と温もり - 誘拐犯のくせに優しくしないで下さい!(Honey serious)

アクション・ドラマ
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誘拐犯のくせに優しくしないで下さい!

誘拐犯のくせに優しくしないで下さい!■制作者/Honey serious(ダウンロード
■ジャンル/誘拐犯とほのぼの同居ノベル
■プレイ時間/45分

テストの出来があまりに悪かった中学生の佐々樹恵美は、ある日衝動的に家出してしまうが、夜の道で怪しい男に、「行くところがないのなら、俺に誘拐されるという選択肢を与えてやる」と言い、恵美を車でとあるアパートへ連れて行く。そして始まる恵美と零の、三日間だけの同居生活が幕を開ける。風変わりな同居型物語。

ここが○

  • 独特の絵柄の1枚絵が可愛い。
  • 実は優しい誘拐犯の零。
  • ちゃんと救いがあるエンディングに心が温まる。

ここが×

  • 恵美の心情変化をもう少し描いても良かったのでは。
  • 舞台がほぼ室内だけなので、起伏には欠ける。
  • 文章読み返しができないのが痛い。

■三日間の憂鬱と温もり

いわゆる「同居型」ノベルは枚挙にいとまがありませんが、この作品はまた設定が変わっています。同居相手が誘拐犯なのです。主人公の家出少女恵美と、誘拐犯の零の三日間を描いた物語です。同居型ではありますが、「ボーイミーツガール同居型」とはちょっと違う印象です。恋愛要素がないですし(エンディングのその先は、どう転ぶか分かりませんが)。

冒頭で、中学生の恵美はテストの点数があまりに悪く、家出してしまいます。そのくらいで家出するのもどうなんだという気がしますが、描写されない色々な問題があったのかも知れません。しかし流石に現状では恵美の行動がちょっと短絡的にも見えますので、少し家出に至る背景を描写してみても良かったような気はします(中盤で少し説明はされますけど)。

誘拐犯のくせに優しくしないで下さい!今作では、まず独特の絵柄の立ち絵や1枚絵が目を惹きます。書き込みが細かい今風の絵ではないのですが、太い輪郭で表情豊かに描かれたキャラクターや場面はどれも魅力的で、1枚絵も結構沢山あるため、絵を見ているだけでも楽しめるでしょう。描き方によっては、ちょっと殺伐とした、あるいはどろどろした物語にもなるところでしょうが、絵柄の影響もあって、むしろ全体から温かみを感じさせてくれます。

設定が設定ですから、物語は冒頭とラストを除いては、ほとんど終始零の部屋で進みます。加えて、零が外出する時は、恵美は拘束されてしまいます。なので起伏には欠け、若干単調な感じがするのは否めません。ですが、多彩で可愛いイラストの影響で、それほど退屈さは感じませんでした。この作品におけるイラストの力は、かなり大きいと思います。

ただ、閉鎖空間が舞台で、イベントで変化を出すのは難しいのですから、もう少し恵美の心境の変化を前面に押し出して見ても良かったのではないでしょうか。一応、零との会話の中で彼から色々とアドバイスをもらい、前向きな気持ちになっていくようには描かれていますが、家出するほど思い詰めていた状態からすると、劇的と言えるほどの変化ではないですし(そもそも恵美自身、家出するほどのキャラには見えない、実に素直ないい子ですからね)。

まあ、それはそれで、3日間の些細な零とのやり取りで、少しずつ恵美が変わっていく物語であるとすれば、これでいいのかも知れません。大げさな展開をせず、大きな心情変化がないからこその、淡い味わいがこの作品の良さであるとも言えます。

零は、過去にも大変な事があり、背負っているものも非常に重いキャラクターです。恵美を助けたいと思った、過去の彼女との出来事については、少し会話で出るだけですので、回想シーンでも入れてみれば良かったかも知れません。それでも、頼るべき人を持たないために他人の温もりを求め、不器用ながら恵美の事を懸命に支え、恵美に前を向かせようとする零は、とても魅力的なキャラクターでした。

難点なのですが、マウスホイールの下回転で文章を送れません。それだけならまだしも、バックログを読む機能がないのです。これには閉口しました。ツールはティラノスクリプトなのですが、ティラノって、他のツールでは当たり前に実装されている機能が、デフォルトではまるでないという事なのでしょうか。今ではティラノはノベルゲームのツールではかなりのシェアを持っているのですから、もう少し読み手に親切な仕様をお願いしたいところです。

プレイ時間は40分くらいです。選択肢はありません。リアルな物語とは言い難いですし、派手な起承転結がある訳でもないのですが、じんわりと心が暖かくなるストーリーです。エピローグは、未来に希望を感じさせてくれる素敵な終わり方でした。恵美と零が、いい友達になる事を切に祈ります。タイトルや冒頭の展開だけ見ると、殺伐とした物語なのかと思われかねませんが、実にほのぼのとしたハートウォーミングなお話ですので、「ちょっといい話」を読んでみたい方にはお勧めです。
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