第473回/今ひとたびの逢ふこともがな - 君と紡ぐ物語(乙女組) - 不思議系
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第473回/今ひとたびの逢ふこともがな - 君と紡ぐ物語(乙女組)

不思議系
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君と紡ぐ物語

君と紡ぐ物語準推薦
■制作者/乙女組(ダウンロード
■ジャンル/幽霊の心残り探索ノベル
■プレイ時間/1時間15分

高校生の一樹は、幼馴染でクラスメイトの光希からある噂を聞かされる。体育館裏の欅の木の下に、女の人の幽霊が現れるというその話を聞いて興味が湧いた一樹は、件の欅の木の下へ行ってみた。そこで一樹が見たのは、美しい着物姿の女性の幽霊、杏子だった。杏子のために、一樹は彼女が愛していた男について調べ始める事に。過去と現在を心で繋ぐ物語。

ここが○

  • 一樹、光希、杏子の3人の関係が良い。
  • バラエティに富んだ3種類のエンディング。
  • 小道具や些細なエピソードを使った演出が上手い。

ここが×

  • もうちょっと杏子との交流シーンをしっかり描いても良かったのでは。
  • 主人公の立ち絵があるのは好みが分かれるか。
  • 海が杏子を裏切った理由の描写が欲しかった気も。

■今ひとたびの逢ふこともがな

幽霊ものも、探せば結構出てきます。一番最近では「ephemeral you~閉ざした記憶~」ですが、他にもヒロインが幽霊だったり主人公が幽霊だったりサブキャラが幽霊だったり、パターンは色々です。この作品の場合は、サブヒロインが幽霊という事になるのでしょう。

主人公の一樹とヒロインの光希は幼馴染同士です。主人公が成績優秀でヒロインがいまいちというのが、ちょっと珍しいパターン。そして一樹は光希から、学校に伝わる噂話を聞かされます。幽霊が出るという欅の木へ、興味本位で向かった一樹は、本当に幽霊に出会うという出だしです。良くあるパターンと言えば良くあるパターンなのですが、一樹と光希の掛け合いが面白く、2人の距離感も心地良いため、まず序盤は気持ちよく読めます。

君と紡ぐ物語幽霊の杏子は、大正時代くらいのいい所のお嬢様です。彼女が亡くなった理由については作中で語られますので、読んでください。彼女の心残りを解消するため、一樹は彼女と彼女が想っていた人について調べ始めます。ここがちょっと要領良くないように見えるというか、今のインターネット社会であればもっと簡単に答えに行き着けるように思えたのですが。

ここは、もう少し杏子との交流を描いてみても良かったような気がしました。シナリオ全体としては、きちんと起承転結もあり、しっかりまとまっているのですが、起承転結で言えば「承」に当たる、この辺りの展開が、ちょっと駆け足に過ぎたように感じました。

そのため、あるエンドでは一樹が杏子の事を好きになって告白するのですが、中盤の交流パートが短いため、「好きになるほど交流してないじゃない」と感じる結果に。ここにもっと筆を割いていれば、物語全体の厚みが増したように思うのですが、しかし杏子には「欅の木からあまり離れられない」という設定上の足枷が。とすれば、この設定にちょっと難があるように感じてしまいます。うまい設定をつけて、近隣であれば出掛けられるくらいにすれば、中盤にもっと色が付けられたような気がします。

エンディングは3種類ありまして、ラストだけ申し訳程度分岐するなんて事はなく、結構がらっと雰囲気の違う展開になります。しっかりとした分岐ノベルは結構少ないので、好印象です。3つのエンドは、ホラーっぽい終わり方をするものあり、スタンダードな終わり方ありですが、一樹と光希が海の孫を訪ねていくエンドが、一番綺麗にまとまっています。この終わり方ならば、一樹が別に杏子に恋心を抱く訳でもないので、中盤のちょっと飛ばした感じもあまり気になりません。

もうちょっと、海側の事情を描写しておいて欲しい気もしたのですが(禁断の関係だったからとは言え、現状では杏子を裏切った事について何の言及もないので)、動物学者であるという設定を生かした、ペンギンの生態についてのエピソードや、和泉式部の和歌を使った演出は、上手いなあと思わされました。このルートは、小道具の使い方も上手で、楽しめる物語でした。途中では、もっと細かい事情(事実)を描写して欲しい気もしたのですが、ラストまで読むと、きちんと描写しない事で、かえって想像力を刺激し、読後の余韻を高めてくれるような気すらしたので、このままがいいのかも知れませんね。

この作品、主人公にも立ち絵があります。これは好みが分かれるかも知れません。主人公の立ち絵があると、感情移入という点ではいまいちになるのですが、その分物語を客観的に見る事ができるというメリットもあります。この作品の場合は、一樹と光希の恋愛物語が主眼ではなく、一樹と光希の、杏子との交流がメインですから、これもありなんじゃないかと個人的には思いました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は、全部のエンディングを見て1時間半はかからないくらいだと思います。全エンディングをクリアすると、おまけシナリオも見られたりします。ここで見られる光希がなかなか可愛くて微笑ましいです。実はこの物語は、杏子でも一樹でもなく、光希が鍵のような気もしてきます。それくらい彼女は魅力的なキャラクターでした。スタンダードな作りの物語ではありますが、随所で小技が効いています。お試しあれ。
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