第474回/いざゆけハートのプリンセス - アリスのいないワンダーランド(マーブルフェアリー) - ファンタジー
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第474回/いざゆけハートのプリンセス - アリスのいないワンダーランド(マーブルフェアリー)

ファンタジー
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アリスのいないワンダーランド

アリスのいないワンダーランド■制作者/マーブルフェアリー(ダウンロード
■ジャンル/幽霊の心残り探索ノベル
■プレイ時間/20分

青年は、気付いたら見覚えのない森の中にいた。現れたのは、チェシャ猫の格好をした女の子。青年はすぐにこれが夢の世界だと気付く。そして出会ったもう1人の少女、ハートの王女。青年は彼女と、彼女の父であるハートの王を探して旅に出る。「不思議の国のアリス」の世界を使った、不思議な物語。

ここが○

  • 手馴れていて読みやすい文章。
  • キャラ同士の掛け合いが楽しい。
  • 意外と凝っている仕掛けと想像力を刺激するラスト。

ここが×

  • 夢の話なので、何でもありになってしまい緊張感に欠ける。
  • なので途中ちょっと置いて行かれ気味に。
  • しかも結局夢オチなので、読後の爽快感が薄い。

■いざゆけハートのプリンセス

既存の作品を元にした作品は時折見ますが、名作を下敷きにした作品ってそうは見ません。私が取り上げた中ですと、「シャーロック・ホームズの事件簿 魂の在り処」くらいでしょうか。そしてこの作品は、誰もが子供の頃に読んだ「不思議の国のアリス」が元になっています。

原作と違うのは、アリスではなく青年が主人公という事です。タイトル通り、アリスは存在しません。青年視点でアリスの世界を見る訳で、これはなかなか新鮮です。チェシャ猫(女の子になってしまってますが)や気違い帽子屋(マッドハッター)、グリフォンも登場します。別に原作を知らなくても、青年のハートの王女の掛け合いがなかなか面白く、ちょっと奇想天外な設定のファンタジーとして楽しめるでしょう。

アリスのいないワンダーランドが、この作品は序盤早々青年が「これは夢である」事を明言してしまいます。夢だと言うことは、どんな展開もありですし、どんなピンチに陥っても何の心配も要らない訳で(青年自身が、作中でそう言ってしまってますし)、ちょっと緊張感を削いでいる結果になってしまっている気がします。夢であると言う設定自体はともかく、もうちょっと引っ張っても良かったように思うのですが。

もちろん、ただ夢の中で適当にやっているだけではなく、夢である事を逆に利用した、ちょっとした仕掛けが仕込まれていまして、そこで後半は「おっ!」と思わせてくれます。主人公も、後半の言動はなかなか格好良く、短編ではありますがしっかり盛り上がりどころを作ってくれています。

ただ、夢の中の物語という事は、ラストはもちろん夢オチな訳で、読後感がどうにもすっきりしません。もちろん、その夢の秘密はラストで明かされるのですが、夢を見ていた人物の、現実での生活がどうだったかなどは、作中ではほとんど語られません。現実での物語や設定などを、もう少し夢の世界でも生かしてみれば、より読後の爽快感が強い物語になったのではないでしょうか。

また、主人公が結局何だったのかについては、何の言及もありません。一応、最後の最後でちょこっと示唆される程度です。ヒロインの事についてもですが、それはそれで想像力を刺激してくれる終わり方であるとも言えますし、短編ですから変に語り過ぎるよりは、こういう方向性の方がいいのかも知れません。

文章は、テーマを考えれば(見た目な童話風のファンタジーですし)、もう少し格調高く美しい方向を狙っても良かったような気もしますが、手馴れている感じで読みやすいです。主人公とハートの王女をはじめとして、ぶっ飛んだ登場キャラクターとのやり取りも、なかなか楽しめます。楽しいやり取りを読んでいるうちに、いつの間にか終わってしまうという感じでもありますが。

立ち絵はなくほぼ影絵だけで、テキストウィンドウは全画面タイプなのですが、文章のみの作品の場合、やはりワイドではなく4:3が読みやすいなあとしみじみ感じさせられました(字だけの場合、ワイドのメリットがほとんどないように感じますので)。視線の移動量が適正ですし、改行ピッチもちょうどよく、読んでいて疲れません。絵のない作品の場合は、この辺りの設定にはやはり気を配った方がいいと、つくづく思いました。

ツールは吉里吉里で、プレイしやすく快適です。プレイ時間は20分くらいで、選択肢はありません。一応ファンタジーに分類したものの、あまりファンタジーとか童話っぽくはないのですが、独特のノリを楽しめます。もちろん、原作を読んだ事なくても何ら問題ありませんから、個性的過ぎる登場人物が織りなす、それでいて意外な仕掛けが隠されている物語を、気軽に読んでみてください。
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