第479回/苦くて甘い、血の惨劇 - BLOOD SUGAR(Unreality) - ミステリー・サスペンス
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第479回/苦くて甘い、血の惨劇 - BLOOD SUGAR(Unreality)

ミステリー・サスペンス
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BLOOD SUGAR

BLOOD SUGAR■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/異世界の校舎で殺し合いノベル
■プレイ時間/30分

寮生活をしている女子高生千智は、生徒会役員の愛音を脅かそうと企む姉のアリサに引っ張られ、夜の校舎に忍び込む。そこで出会ったのは生徒会長の有希。ひょんな事から意気投合した4人は、生徒会室でのんびりコーヒーを飲むのだが、突然響く悲鳴。校内で女生徒の遺体が発見された。そして幕を開ける恐るべき惨劇。謎が謎を呼ぶサスペンスノベル。

ここが○

  • 短いながら濃厚なサスペンス。
  • 思わず2度目をプレイしてしまう謎多きシナリオ。
  • 緊張感を維持しながら進む展開と、意外なラスト。

ここが×

  • ちょっと説明不足のところがあり、しっくり来ない点も。
  • 謎がきちんと明かされる訳ではないので消化不良感。
  • ハッピーエンドでもないので人を選ぶかも。

■苦くて甘い、血の惨劇

つい先だって「桜ノ叙事詩」を公開した作者さんの、過去の作品をプレイしてみました。この作者さんは、中長編では読者の予想もしない超展開、短編では変わった舞台設定とラストのどんでん返しで読者の裏をかく展開が持ち味の様な印象ですが、この作品でも独特の作風は健在です。

この作品の登場人物は、全員女子高生。主人公は寮生活をしている千智。千智の部屋に、姉のアリサが訪ねてくるところから物語が始まります。千智はクールで感情をあまり表に出さないところがありますが、対照的にアリサは社交的で、陸上部のエース。この2人が、生徒会室で居残りをしている愛音(あやね)を驚かそうと、夜の学校に忍び込みます(実際はアリサがほとんど強引に千智を引っ張り出すのですが)。

BLOOD SUGARこの作品は、序盤から千智視点と、生徒会長である有希視点が交互に進みます。この視点変更は、同じ物語を別の角度から見るという点からすると、それほど効果的とは言えない気もするのですが(この物語では、全員同じ現場にいますし)、細かな心情描写はなかなか興味深く、特に千智の頭の良さには最後まで感心させられました。

そして何故か4人は異世界(?)に囚われ、すぐに1人目の犠牲者が出ます。ホラーというよりサスペンス寄りの物語で、そこまでグロテスクなグラフィックスが出る訳ではないので、苦手な人でもそこまで怖がらなくても大丈夫です。ここの異世界云々のところは、背景描写があまりないので、少し唐突感を感じるところもありますが、短編ですからそこはそういうものだと納得してしまいましょう。

序盤こそコーヒーを飲んでいるだけの、のんびりした展開なのですが、すぐに事件が起き、その緊迫感をずっと保ったまま物語は一気にラストまでなだれ込みます。ホラーやサスペンスで緊迫感を保ちながら読ませるというのは、なかなか難しいものです。ともすれば、お化け屋敷の様な描写が続くだけで一本調子になりかねないのですが、この作品は心理描写も上手く織り交ぜながら、緊張感を程よくキープしています。この描写と展開は見事だと思います。

特に、終始冷静な千智、どす黒いものを秘めた有希、そして狂気に陥るアリサのコントラストが非常にいいです。前半との落差で、一層緊迫感を煽ってくれる展開が大変よくできていました。有希がそこまでして今回の計画に及んだのは何故かと考えると、結構怖くなってきます。要するに、ターゲットの1人を消すために、誰でもいい残り4人を巻き添えにしたという事なんでしょう。これに気付いた時、少し背筋が寒くなりました。

そしてラスト。「え、そういう落とし方をしちゃうの?」と思ったのですが、そう思って本編をもう一度思い返してみると、もしかしてもっと前からもう出ていたのでは、と思える描写もあったりします。なので私は、2回プレイしてみました。少々難解な物語なので、2回読んでもきちんと理解できたとは思えないのですが、逆に色々想像してみる楽しみもあると思います(機会があれば、3度目も読んでみようと思いました)。

反面、きちんと全部の謎が解けないとすっきりしないという人もあるでしょう(私もどちらかというとそのタイプです)。しかし、謎がすっきり解けていないからこそ、ラストシーンがじわりと恐怖感を持って迫ってきますし、すぐに2回目を読んでみようという気になりました。ループものでもないのに、2回目を読んでみようと思える作品は滅多にない事です。

ツールはティラノスクリプトです。画面サイズは4:3なのですが、やはり4:3の方が収まりがよく見えます。選択肢はなく、ラストまでは30分ほどなのですが、この作品に関しては1回読んで終わりではなく、是非2回読んでみてください。答えが作中で明確に語られていないので、読み手によって色々な考察ができると思います。考え考え読んでみるのも、時には楽しいものですよ(結構怖い物語なのですが)。
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