第480回/思い出はまた時をかける - 探しものは、夏ですか。(ワンダーフォーゲル) - 不思議系
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第480回/思い出はまた時をかける - 探しものは、夏ですか。(ワンダーフォーゲル)

不思議系
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探しものは、夏ですか。

探しものは、夏ですか。準推薦
■制作者/ワンダーフォーゲル(ダウンロード
■ジャンル/夏の田舎で探し物ノベル
■プレイ時間/1時間半

夏休み、母方の田舎に帰省してきた恭平は、子供の頃よく通った雑貨店の前で、気の強い高校生くらいの少女と出会う。その少女真琴は、探し物があるから手伝って欲しいと言ってきた。その探し物は小さなビー玉だという。恭平はしぶしぶ真琴の探し物に付き合うのだが。ビー玉と思い出を探す、田舎での一夏の物語。

ここが○

  • 水彩画風の立ち絵が美しい。
  • 夏の田舎の雰囲気がよく出ている。
  • 盛り上がる後半の展開。

ここが×

  • ちょっとだれる前半の展開。
  • ワイド過ぎて、特に文章がかなり読みづらい。
  • 嫌がらせとしか思えないバックログの見辛さ。

■思い出はまた時をかける

以前にも書きましたが、ノベルゲームの時期を季節で分けると、ダントツに多いのが「夏」です。私の書いたレビューのタイトルリストを、「夏」で検索しただけでも、かなりの数が見つかりますから、その多さが窺えようというものです。そして、「夏に田舎」も定番。この作品も「夏に田舎に帰省」ものです。ひぐらしやミンミンゼミ(私の故郷にはミンミンゼミは存在しませんでしたが。クマゼミならたくさんいた)の声が、郷愁を誘います。主人公の祖父の方言からすると、舞台は東北辺りでしょうか。

主人公は都会の大学生で、夏休みに母方の実家に帰省して来ているという設定ですが、やたらと田舎を見下している感じなのが、開始してすぐはちょっと鼻につきます。まあ後半には主人公も成長して、そういう言動もなくなるのですが。また、ヒロインの真琴とのやり取りも、なんだか無駄な衝突が多い感じで、これも最初はちょっと疲れます。これも慣れの問題ではありますが。

探しものは、夏ですか。物語は、主人公が幼い頃によく通った雑貨店で、ヒロインの真琴と出会うところから始まります。そして、彼女の探し物を手伝うという、非常に地味な出だしです。探し物がビー玉1個なので、物語が向かう方向がいまいち不明瞭で、序盤はあまり強く読み手を惹きつける力があるとは言えません。そこへ来て恭平と真琴のやり取りが、あまり見ていて気持ちのいいものではないため、序盤はちょっと辛いものがあります。

が、中盤以降に真琴の目的が明らかになる辺りから(まあ、真琴の正体は誰でもすぐに分かりそうなのですが)、徐々に物語は盛り上がっていきます。序盤で感じた、主人公のちょっと駄目な点も、ぎくしゃくしていた祖父との関わりで、少しずつ改善されていく様子がしっかり描かれており、ここは上手い点だなと思わされました。

そしてラスト近くは、ある意味定番のイベントを織り交ぜながら、キーパーソンである直田のおばあさんが意外な形で絡んでおり、ここのラストの展開はなかなか見応えがあります。ただ、直田のおばあさんがどうしてああいう事を知っていたのか、その背景については何ら描写がありませんから、そこはもう一つ踏み込んだ描写があっても良かったような気はしました。

テーマとしては、さほど斬新ではないのですが、組み合わせ方が絶妙で、特に後半は先が気になるエンターテインメント性と、夏の田舎という独特の風情が上手くマッチしていて、レベルの高い物語に仕上がっていたと思います。欲を言えば、エピローグでもう少し先が見たかったような気もしました。そこはご想像にお任せしますという事なのかも知れませんが、若干もやもやするものが(笑)。

真琴の正体については比較的序盤からバレバレなので、もっと堂々と分かりやすい伏線を張ったりしても良かった気がしました。行方不明の女の子の事や主人公の思い出など、あまり踏み込まれた描写がなされていないんですよね。もっと序盤からしっかり語った方が効果的だったように思います。主人公が女の子を傷つけたシーンの回想だけは頻繁に入りますが、その他過去のシーンの回想がもうちょっとあっても良かったように思いました。

システム面で気になる点ですが、かなりのワイドサイズのウィンドウで、それがさほど生かされているとは思えない上、テキストウィンドウも非常に横長なので、視線移動距離が多くなり、ずっと読んでいるとかなり疲れてきます。ワイドの採用は好みの問題もあるでしょうが、テキストウィンドウの横幅には、もうちょっと配慮が欲しいように感じました。あるいは、改行をもっと頻繁に入れるとか、方法はあったように思います。

もう一つは、バックログです。字のサイズが小さい上、背景画像が邪魔をして、もう「バックログは使うな」と言われているようにしか思えない見難さです。それと、これはティラノの作品の多くに共通する難点ですが、文字表示速度の変更などがタイトル画面からしか出来ず、かなり不便です。ティラノはかなり普及しているツールのはずですが、この辺りはもうちょっと何とかなりませんかね……。

選択肢のない一本道の物語で、プレイ時間は1時間半くらいだと思います。上に書いたように、とにかく驚くほどバックログが見難いので、それは覚悟してください。真琴の髪型のイベント、そしてそれに対する過去の思い出との絡みで発した主人公の一言は、とても印象に残るシーンでした。もう夏は終わりですが(北海道はもう落ち葉の季節が始まっています)、夏の思い出に是非読んでみてください。
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