第482回/ブラックホワイトクリスマス - モカブレンドをブラックで。(いねむりスフィンクス) - ファンタジー
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第482回/ブラックホワイトクリスマス - モカブレンドをブラックで。(いねむりスフィンクス)

ファンタジー
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モカブレンドをブラックで。

モカブレンドをブラックで。準推薦
■制作者/いねむりスフィンクス(ダウンロード
■ジャンル/サンタクロース体験ノベル
■プレイ時間/20分

クリスマスシーズンも受験勉強に勤しむ、浪人生のリク。彼の前にある日、コメットと名乗る女性が現れた。この地区の配達を担当しているサンタクロースが急病になったので、代わりに配達を頼みたいという。リクはその申し出を受け、コメットと共にプレゼントを配る事に。変わった設定と、まとまった綺麗な展開が特徴の、クリスマス短編ノベル。

ここが○

  • ちょっと変わった設定が面白い。
  • 短いながらもきちんと起承転結整った作り。
  • 切なさを残しながらも希望を感じる終わり方。

ここが×

  • 設定を語り切れていない感。
  • 一部イベントはもう少し深く描いて欲しかったかも。
  • なので、もう少し長い尺で読んでみたい印象。

■ブラックホワイトクリスマス

クリスマスは、ノベルゲームとしては特に短編で取り上げやすいテーマなのか、短編作品でよく見かけます(逆に長編ではイベントの1つとして終わってしまう感)。この作品は、最近では「ゆきんこ-冬の幼馴染-」をご紹介した作者さんの作品です。意外と、前作とは違うところから攻めて来ている物語で、「こんな作風もあるのか」と思わされました。

主人公は浪人生という設定ですが、浪人生にありがちな退廃的なところとか、虚無的なところがなく、親しみの持てる好青年なので、まず安心して読めます。その主人公リクの元に、サンタクロースの使いであるコメットという女性がやって来て、サンタクロースの代わりにプレゼント配達をやってくれと頼む、という出だしです。

モカブレンドをブラックで。主人公が浪人生である辺りは現実的なのですが、このサンタクロースの設定がえらく突飛です。本編で語られるところによると、サンタクロース以外にも、今までは想像上の生き物だったものが、この世界ではあれこれ現実で存在するようなのですが、かなりの短編でもあることから、この設定を語り切れていないような印象を受けました。説明し切れず、読者が設定に馴染めないうちに物語が進む、というか。もしかしたら、「ゆきんこ-冬の幼馴染-」も包含する設定なのかも知れませんが……。

冒頭では、リクと幼馴染の美結の幼少時のエピソードが挿入されます。なので、典型的な幼馴染ものなのかと思ったら、実は別の方向から攻めて来ている物語です。大筋としては正攻法の造形の中に、上手く切なさを絡めて、しかもこの短さの中にきちんと起承転結をつけており、短編としては完成度の高い物語に仕上がっています。

ただ、美結とのエピソードは、冒頭でちょっと回想される他は、主人公の口から簡単に語られるだけです。もう少し、リクと美結のエピソードを全体に織り交ぜても良かったのではないでしょうか。せっかく、優しさと切なさを上手くブレンドさせた物語なのですから、その方が、隠し味であり、かつこの作品の一番大事な要素である「切なさ」を、もっと生かせる味付けになったかも知れません。

また、美結の子供に何をあげたのかも別に語られておらず、一番の盛り上がりどころであるこのシーンが、少し弱いのですね。もちろん、リクが過去にやってしまった事をコメットに話しており、だからリクはあの行動に出たんだろうとは思いますが、それだけではこのクライマックスのシーンに「特別感」を付けるには弱いように思います。何をプレゼントするのか、何故プレゼントするのか、そこらを過去回想でもう少し深堀りしてみれば面白かったのでは。

と言う訳で、「短編としてとてもよくまとまっているが、このテーマ、このプロットならばもう少し長い物語で読んでみたかった」というのが、正直な感想です。そうすれば、この作品のテーマがよりしっかり描かれ、深みも増し、切なさもより強く感じられたように感じます。

とは言え、本編だけなら15分の物語で、これだけちゃんと起承転結をつけ、読後感の良いラストを持ってくるというのが、まずなかなかできる事ではありません。ただ切なく後悔を感じさせるだけの物語ではなく、主人公の側にもちゃんと救いと希望を持ってきてくれており、後味も全然悪くありません。プレイ後にはおまけも2本読めますが、本編の世界観を崩す事なく、ほのぼのと楽しめました。

ところで、タイトル画面から各種設定ができるのですが、設定後に「戻る」をクリックしてもタイトル画面に戻らず、ウィンドウを閉じるしかないという謎現象が(読了後にはこの現象は起こりませんでした)。そして、プレイ中にも設定は出来ますが、今度は設定変更が出来ないという、これまた謎現象が。ティラノって、主要ツールの中ではこういう基本的なところでの「謎挙動」が、何故か飛び抜けて多いような気がします……。

ツールはそのティラノスクリプト。選択肢のない一本道の物語です。本編とおまけ2本で20分くらいの掌編。タイトルのコーヒーが本編ではほとんど活躍していない気がしますが、「苦味を感じさせる物語」という意味では、タイトルと内容は合っているのかも知れません。短い時間で軽く読める物語ですから、疲れた作業の合間にコーヒーで一服する気分でプレイしてみてください。
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