第483回/隠れた想いもエミュレート - エミュレーターNANA(MA-LINK) - アクション・ドラマ
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第483回/隠れた想いもエミュレート - エミュレーターNANA(MA-LINK)

アクション・ドラマ
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エミュレーターNANA

エミュレーターNANA準推薦
■制作者/MA-LINK(ダウンロード
■ジャンル/NASA公認憑依ノベル
■プレイ時間/3時間

中学2年生の来宮菜奈は、ある日目を覚ましいつものように学校へ行き、個性的なクラスメイトやぶっ飛んだ担任教師との日々を過ごし、眠りについた。が、次の日に目を覚ますと、何とクラス委員長の信彦になっていた! 更にその次の日には担任の清音先生に。これは一体どういう事なのか? 今プレイしても楽しめるハイスピードコメディ学園ノベル。

ここが○

  • 笑えるキャラのやり取り。
  • しっかりと盛り上がり、徐々に謎がほどけて行く展開。
  • 「ん?」と思ったところに食らわされるラスト。

ここが×

  • 文章にはついていけない人がいる恐れあり。
  • キャラのやり取りでちょっと流れが澱む箇所も。
  • 後半がちょっとあっさり気味の感。

■隠れた想いもエミュレート

今年の5月にレビューを再開し、100本近くの作品を取り上げて来ましたが、流石にそろそろネタ切れの感が。10分以内の作品ならまだ大量にありますが、そんな短い作品は、レビューの書きようがありませんし。なので、今までレビューしていなかった過去の名作を、これからちょくちょく取り上げる事にしました。今回は「エミュレーターNANA」。実は昔プレイしかけたのですが、文章に付いていけなくて挫折してしまったのです。

改めてプレイしてみると、いやいややはり名作だけあって、よく出来ています。公開は確か2003年6月ですから、NaGISA netの開設前です。当時って今ほどフリーノベル&ADVって数が多くなかったですが、その分公開される作品は、非常によく作られた作品が多かった印象なのですが、この作品も類に漏れず。シナリオの細かい作りが大変よく出来ています。

エミュレーターNANA主人公は、中学2年生の来宮菜奈。彼女がいつものように朝目を覚ますところから物語が始まります。序盤から、文章が物凄い勢い。以前プレイした時は、このノリに付いていけなくて挫折しました(笑)。キャラクターも、全員濃いわけではないのですが、ほとんどがぶっ飛んでいます。特に清音先生の「恋するヤンバルクイナ」は、耳について離れません(笑)。最初読むと、「一体どういう展開なんだこの物語は?」と思ってしまうかも知れません。

しかし、物語内で2日目に、菜奈が目を覚ますと何故か見慣れぬ部屋。クラス委員長の信彦になってしまっていたのでした。この2日目から、物語が徐々に動き始めます。そして3日目にはクラス担任の清音先生になってしまう菜奈。一体これはどういう事なのか……。一見、ギャグ全開の作品のように思えて、少しずつ謎を読み手に提示し、だんだん物語に引き込んで行く手法が、とても上手いです。

そして後半になって明らかになる事実。「あーなるほど!」と思わされました。取り立てて新しい手法という訳ではないのですが(そもそも15年前の作品ですし)、読み手の焦点を上手く真実からそらしつつ、それでいてきちんと真実に対する伏線も提示しているという作りが見事です。この辺りの作りの巧さは、今の作者さんにも多いに参考になるところがあると思います。

ラスト前のとあるイベントは、この作品の真骨頂と言いますか、それまでを上回る、めちゃくちゃと言ってもいいほどのぶっ飛びぶり。そこまで読んできたなら、「まあこれもありか」と思える範囲ではありますが(笑)。ただ、そこは少々やりすぎの感がありますし、キャラのやり取りで流れが澱んでいる感無きにしも非ずです。そしてその大イベントの翌日、真犯人に憑依する箇所は、あまりにあっさり流されてちょっと拍子抜けでした。前日の大戦闘シーンよりも、そちらを詳細に描いて欲しかったような気がするのですが。

ですが、そこも終わって、無事に事件が解決してからがこの作品の最大の見どころです。いきなり何でもない日常描写が始まって、「え、まだ続くの?」と思ってしまうのですが、その日常描写からの予想もしない不意打ち。「ああ、そういう作りなのね」と気付いて、二度唸らされました。何より、ラスト近くでの菜奈の可愛らしい事。これは、中盤までが正に「菜奈視点」である事も影響しているはずです。そういう意味でも、構成の見事さには感心させられる事しきりでした。こういう構成の上手い作品は、この作品の公開から15年経った今でも、滅多に出会えないような気がします。

ツールはNScripterで、かなり古いバージョンですので、マウスホイールの下回転での文章送りが出来ません。ですが、それ以外にはプレイに全く支障はありません。むしろティラノスクリプトの最新の作品より、はるかにプレイしやすいです(それは単にティラノがプレイしにく(以下自粛))。ただ、セーブ画面など、右クリックメニューがちょっと見にくいのは気になりました。

それと、ノリの良い文章は好みとして、やはり「15年前」に流行った感じの文章なのですね。ですから、今読むとそこは少々古い感じは否めません。今作品を作られる方も、流行りの文章、流行りのタイトルワークだと、やはり10年後には古びてしまう恐れがありますので、そこは考えてみてもいいかも知れません(逆に、流行りに乗らないと、そう簡単には古びない訳です)。

現在、フリーノベルゲームは下手をしたら1週間に数本の単位で公開されています。そしてよほどの話題作以外は、あっという間に忘れ去られていきます。ですが、良い作品というのは、忘れられようがいつまでも残るのです。これからも、そういう作品を1本でも多く拾い上げ、ご紹介していければと思っています。とりあえず、最近の作品しかご存知ない方は、ぜひこの作品を読んでみてください。「15年前でこんな面白いとは!」と衝撃を受けるはずです。プレイ時間3時間。分岐はありませんが、戦闘シーンなどで選択肢はいくつか存在します。温故知新。最新の作品を蹴散らす面白さがある物語です。
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