第487回/いつか君と二人の舞台へ - サーカスとキミとカイブツ(空想の工房) - ファンタジー
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第487回/いつか君と二人の舞台へ - サーカスとキミとカイブツ(空想の工房)

ファンタジー
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サーカスとキミとカイブツ

サーカスとキミとカイブツ■制作者/空想の工房(ダウンロード
■ジャンル/サーカスからの脱出ノベル
■プレイ時間/20分

右目から角が生えているという世にも珍しい少年。彼はサーカスの見世物として出されていた。檻に囚われて、自由のない日々を送る彼のところに、ある日花売りの少女が訪ねてきた。その少女ハナは、少年にハルという名前をつけ、ハルの角が綺麗だと褒めてくれた。しかし2人の交流は長くは続かなかった。ダークセピアのイラストが印象的な短編物語。

ここが◯

  • 暗いセピア調の絵が独特の雰囲気。
  • ピアノで統一されたBGMも雰囲気に合っている。
  • ハッピーエンドの際立つ寂しさ。

ここが×

  • 読み返しができない。
  • スキップもできず、エフェクトも飛ばせないなど、システム面はおざなり。
  • 何とも言えない後味の悪さ。

■いつか君と二人の舞台へ

「流行りの絵柄の作品」ならたくさんあるのですが、絵柄が独特で目をひく作品というのは、なかなかありません。この作品の絵柄はかなり独特。絵自体も、絵本のような画風ですし、色がまたダークセピアで統一され、全体からほの暗い雰囲気が漂っています。なかなか他では見ない画面だけで、「どんな作品なんだろう」と思わせてくれます。

主人公は、右目から角が生えている奇妙な少年です。彼は、猛獣のように檻に囚われて、サーカスの見世物にされています。見世物といっても、ただ立っていて、猛獣使いに殴られたり水をかけられたりするだけ。そんな彼の舞台を見に来ていた、花売りの少女ハナ。彼女が夜、檻の中の少年を訪ねてきます。

サーカスとキミとカイブツBGMは、前編ピアノ曲で統一されており、独特の絵本風の絵柄との相乗効果で、とても雰囲気を高めています。前編1枚絵だけで構成されており、これもまた絵本風の雰囲気を高めていますね。右目から角が生えているというのは、結構グロテスクなはずなのですが、絵柄も手伝ってそんな感じは全くなく、むしろ可愛さすら覚えます。

そして物語は急転直下、あっという間にクライマックスを迎えます。あっという間過ぎて、ここはちょっと味気なく感じました。もう少し、ハルとハナの交流が描かれてもいいような気がしました。それがないものですから、ラストでも「え、終わりですか?」という、若干の拍子抜けを感じる結果に。中盤に、あと二つ三つ、日常的なイベントを入れるだけでも、だいぶ印象が違ったと思うのですが。

ラストは選択肢で2つに分岐します。トゥルーエンドとハッピーエンドと銘打たれていますが、ハッピーエンドは「ハッピーなのかこれ?」と頭を抱えてしまうような終わり方(とは言え、この終わり方は演出効果もあってとても心に響きます)。トゥルーエンドも、救い様のない終わり方で、ダークセピアの色使いの通り、かなりダークな幕引きとなります。なので、「ちょっと心の暖まる短編を読みたい」という方には、あまりお勧めできません。読み終えた後、何とも言えない物寂しさを感じますから。

上にも書いたように、中盤でもう少しハルとハナの交流を描いていたら、もう少しラストの印象が変わったような気がします。このままだと、出会った直後にすぐラスト、ですからね。まあ、全編1枚絵で構成されている作品ですから、シナリオの尺を伸ばそうとすると1枚絵を余分に描かねばならないはずで、そうなると簡単には尺も伸ばせなかったんだとは思いますが。

とまあ、物語とすると少し物足りなさを感じるところがあるのは事実なのですが、反面絵と音楽が醸し出す寂しげで不思議な雰囲気はとても心に響きます。物語が短いからこそ、ひと時の夢を見たかのような切なさを味わう事ができます。その意味では、それこそがこの作品の魅力であり、エピソードを挿入するなんていうのは無粋な意見なのかも知れません。この作品はこのままでもいいのかな、とも思いました。ハッピーエンドの時だけ、それまでのダークセピアトーンではなく、少し明るい色調の絵が見られますが、それまでとの対比でそのシーンが大変際立っており、非常に印象に残ります。

ただ、システム面はかなりおざなりです。文章の読み返しが出来ず、マウスホイール下回転での文章送りが出来ず、設定は何一つできず、エフェクトのスキップも出来ず、文章のスキップも出来ず、要するにセーブとロードができる以外は、ただ読むだけです。短編ですからそれでもそこまで不都合はないのですが、もう少し読み手に親切でも良かったのではないかと感じました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は20分から、ゆっくり読んでも2つのエンディングを見て30分程度でしょう。心の暖まる物語ではないのですが、この作品でしか味わえない寂しげで救いのない雰囲気は、合う人には合うはずです。絵柄に惹かれたら、プレイしてみてください。他のどの作品にも似ていない、この作品ならではの作風が味わえます。
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