第489回/絆を信じ、ただ北へ - ある母子の亡命(夜は行く) - シリアス・感動系
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第489回/絆を信じ、ただ北へ - ある母子の亡命(夜は行く)

シリアス・感動系
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ある母子の亡命

ある母子の亡命■制作者/夜は行く(ダウンロード
■ジャンル/革命からの母子亡命ノベル
■プレイ時間/30分

19世紀末、大国シガでは度重なる戦争と重税に怒った民衆のクーデターが勃発した。将校であるジルは、最後まで国のために戦う事を決意するが、妻のクロエと息子のオーギュスト、それに生まれたばかりの赤ん坊は、生きていくために亡命しゃの国ノルブリンカへと亡命する事を決意した。1枚絵だけで展開される、映画のような短編物語。

ここが◯

  • 大量の1枚絵だけで展開される映画のような雰囲気。
  • 短編とは思えない濃厚な展開。
  • 演出がとても凝っている。

ここが×

  • 字が小さすぎる上にフォントが見にくい。
  • 複数の文章が一度に表示されるため、非常に文章が読み辛い。
  • 終わり方が呆気ない。

■絆を信じ、ただ北へ

フリーのノベルゲームでよく取り上げられるジャンルと言えば、学園ものと決まっています。そんな中、19世紀の革命が起こったヨーロッパ風の国を舞台にしたこの作品は、一際異彩を放っています。最近取り上げた作品では「落日」が近い雰囲気を持っています。

そしてこの作品は、立ち絵がなく、全て1枚絵で展開するというのが、なかなか凄いです。「罪咎オペレッタ」「太陽がまた輝く時」「桜月夜に舞い降りたピンク」が同様の作りですが、この作品はそれら三作とはまたジャンルが全然違うのが面白いところ。この作品の場合は、舞台設定や凝った演出も相俟って、映画でも見ているような気にさせてくれます。1枚絵も、水彩画風であまりデジタルっぽくないのですが、どれも力作で、この作品の雰囲気によく合っています。

ある母子の亡命舞台となるのは、大国シガ。シガの将校、ジルとその妻クロエ、一人息子のオーギュストの一家が主人公です。シガで民衆により起こされた革命により、将校たちは次々亡命を始めました。ジル達の身にも危機が及びます。そこで、クロエはオーギュストを連れて亡命する事を決意するのですが……。出だしから、何とも壮大で悲壮感漂うストーリーです。

凝った設定とは裏腹に、展開はさほど捻ってはいません。しかし、少し込み入った人間模様も絡んで、プレイ時間からは考えられないほどの濃密な時間を過ごせました。大変充実感のある物語です。クロエとオーギュストが、辛く冷たい旅路の果てにたどり着いたノルブリンカの街の灯火が、特に印象に残りました。ラストシーンの色使いの暖かさで、読んでいる方の心も温まります。母子の絆の強さを感じさせられる素敵なラストシーンでした。

が、ラストシーン自体は綺麗なのですが、ストーリー展開として見ると、どうも終わり方が呆気ないというか、投げっぱなしというか、「ジルはどうなったんだ」という消化不良感が。中盤まではとても濃い展開なのですが、もう少し終わり方にも工夫をしてみても良かったのではないでしょうか。とは言え、ラストシーンの爽やかさもあって、読後感自体はいいですね。寂しさの中にも希望を感じさせてくれます。

ちなみにこの作品、ほとんど音楽が流れないんですよね。それはそれで、後半音楽が流れるシーンを一層際立たせているとも言えますが。そして後半にシベリウスのヴァイオリン協奏曲が使われます。この曲は私も大好きで、とても効果的に使われており、このシーンを一層盛り上げています。が、私の中ではこの曲は雪の降りしきる光景という曲ではなく、「北欧の夏の高原を渡る風と、風にそよぐ花」みたいなイメージなので、「イメージと違う!」となってしまいました。クラシック曲を使うと、時たまこういう事が起こります(笑)。

難点なのですが、文章が読み辛いです。フォントが普通のゴシックではない上にサイズもちょっと小さいのです。加えて句点の度にクリック待ちになる訳ではなく、一度に複数の文章がどばっと表示される上、ウィンドウも横に広く文章が横長で表示されるため、読み手に色々な意味で優しくありません。固有名詞もあれこれ出てきて、決してすらすら飛ばして読めるタイプの物語ではないので、ちょっと辛いものがありました。

あと、ブラウザーでプレイすると、一部のシーンで、文字ウィンドウの上に1枚絵が重なって、文章が読めなくなってしまう箇所がありました。クリックで進めて、後で読み返せばいいんですけど、最初は何が起こったのか分からず驚いてしまいました。なお、ダウンロード版ではこのような不具合は起こりませんでしたので、ダウンロード版を遊んだ方がいいかも知れません(ティラノのブラウザー版って、特にMacでプレイすると様々な不具合が当たり前のように起こります……)。

なお「こぼれ話」と称して、ジルとクロエの馴れ初めの話や、キャラクター設定が読めたりします(最初から読めるようになっていますが、クリア後に読む事をお勧めします)。おまけとしては、とても気が利いていて楽しめます。若かりし頃のクロエが可愛らしいです。ただ、これを読むと一層本編のラストで、もう少しちゃんと語っておいて欲しかった気になってしまうのですが(笑)。

ツールはティラノスクリプトですから、ティラノだなあという感じのプレイ感覚です(要するにあまり快適ではない)。文章の読み返しはちゃんとできるので、そこは有り難いです(上で書いたように、文章が読みにくいので)。選択肢はなく、おまけまで全部読んで、プレイ時間は30分ほどだと思います。30分のプレイ時間ですが、1時間くらい読んでいたように思えるほどの濃い物語でした。学園ものに飽きた方は、たまにはこんな濃厚な物語はいかがでしょうか。
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