第490回/黄昏に揺れる白椿 - 花は誰そ彼に死折れる子。(6045*) - 不思議系
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第490回/黄昏に揺れる白椿 - 花は誰そ彼に死折れる子。(6045*)

不思議系
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花は誰そ彼に死折れる子。

花は誰そ彼に死折れる子。■制作者/6045*(ダウンロード
■ジャンル/花の幽霊と宝探しノベル
■プレイ時間/30分

曽祖母の家に遊びに来ていた花之木咲良の元に、ある時見覚えのある女性がやって来た。名前はイコ。幽霊である旧知の彼女を、咲良は「花ちゃん」と呼ぶ。咲良は、イコの提案でちょっとした宝探しごっこをやる事になった。咲良が描いた地図を元に、町を歩き回っての宝探しが幕を開ける。夏の田舎で展開される、ちょっと不思議な物語。

ここが◯

  • 非常に繊細で綺麗な絵。
  • 夏の田舎町の雰囲気がいい。
  • テキストウィンドウの幅を適度に切り、読みやすくする工夫。

ここが×

  • ちょっとあっさりし過ぎの感がある終わり方。
  • 咲良についての背景が前半で語られないので、後半に少々唐突感。
  • 咲良の秘密はすぐに読めてしまう。

■黄昏に揺れる白椿

定番の「夏に田舎」ものです。「誰そ彼」は「たそがれ」と読みます。「黄昏」ですね。詩的な、興味をひくタイトルです。夏の田舎って、やはり舞台として魅力的なのでしょう。たくさんの作品がありますが、この手の舞台はどんな作品をプレイしても、SEとして使われる事が多いひぐらしの声を聞くだけで、わくわくさせられます。ひぐらしなんて、都会では鳴き声を聞けない蝉ですから、ひぐらしの声だけで郷愁を誘いますからね。

私も今は都会(札幌市)に住んでいますが、前は自宅にいながら春は鶯、夏はひぐらし、秋は各種秋の虫の声が聞こえるような環境でしたし、何より亡くなった父の実家が物凄い田舎でしたから(水は山水。玄関や台所は土間。お風呂は薪で沸かす五右衛門風呂。中学生の頃にリフォームして新しくなりましたけど)、そういう「夏に田舎」ものは、やはり思い出を刺激されます。

花は誰そ彼に死折れる子。この作品の主人公は、花之木咲良という中学生の女の子です。夏休みに小学生まで暮らしていた田舎にやって来て、曽祖母であるかず子の家に世話になっています。その咲良の元に、イコという白いワンピースの、あまり幽霊っぽくない幽霊の女性が現れるところからがスタートです。

この作品、とにかく絵が物凄く綺麗です。綺麗な上に非常に繊細な絵柄で、絵を見ているだけでも感心させられました。夏の田舎の雰囲気に、またこの絵がよく合っているのです。1枚絵は、数は多くないですが、効果的な場面に挿入されて今して、演出としてもとてもよく効いていると思います。主人公の咲良とイコという、対照的なキャラクターの対比も、いいと思います。

そしてイコの提案で「宝探し」をする事になるのですが、ここでちょっとした違和感が描写されますので、大抵の人はすぐに真実に気付くかも知れません。にも関わらず、肝心の咲良の過去については、ラスト近くまで語られませんので、「謎にはすぐ気付くが、明かされた時は妙に唐突に感じる」というアンバランスさを感じました。違和感を上手くカムフラージュするか、前半からもう少し咲良の背景事情を少しずつ出していても良かった気がします。

短編なのですが、結構選択肢がたくさんありまして、5種類のエンディングに分岐します。エンディングは、後味が悪いものから、まずまず希望を感じさせてくれるものまで様々ですが、どのエンディングも少し終わり方があっさりしている感があります(いきなりタイトル画面に戻りますし)。せめて、トゥルーエンド(と思しき終わり方)くらいは、もう少し突っ込んで描写してみても悪くはなかったのではないでしょうか。

しかし、咲良とイコが田舎町を巡る描写はなかなかに郷愁を刺激してくれて楽しめます。選択肢で全然関係ない場所に行ってみるのも一興でしょう(なぜかポストの表示が「PSOT」になっていたのが、物凄く謎)。巡る場所は、田舎情緒がある場所という訳ではなく、どこにでもあるような場所ばかりなのですが、それが逆に効果的に働いて、思い出を上手く描き出せていると思います。

また、16:9とかなりのワイドサイズですが、テキストウィンドウは適度に横が切られて、読みやすく表示する工夫がされています(もう少し文字サイズを大きめにして、一行の文字数が少なくてもいい気がしますが)。ワイドウィンドウで更に文章が横幅一杯に表示されていると読みにくいので(そういう作品もかなり多い)、こういう読み手に対する細やかな配慮はとてもありがたいですね。

ツールは吉里吉里で、システム面にも隙がなく、非常にプレイしやすいです。プレイ時間は、5つのエンディングを全部見て30分程度でしょう。難易度は、少し考えれば分かる程度で、それほど難しくありません。夏はもう終わってしまいましたが(北海道はもうすぐ冬の足音が……)、少し不思議な夏の物語を味わってみたい方、お手軽に読めますので、プレイしてみてください。
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