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第499回/名前を付けて気持ちを保存 - 彼女の気持ちを書き換えて(児玉守)

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彼女の気持ちを書き換えて

彼女の気持ちを書き換えて■制作者/児玉守(ダウンロード
■ジャンル/彼女の気持ち操作ノベル
■プレイ時間/10分

主人公の高校生野辺留(名前任意)には、密かに憧れている人がいた。クラスメイトの宮林世羅。しかし、取り立てて特徴もない野辺留に世羅が振り向くはずもない。そんな野辺留の前に、ある日神様が声をかけた。何でも願いが叶う機械をくれるというが、その条件は驚くべきものだった。レトロな雰囲気のイラストとストレートな物語の短編恋愛ノベル。

ここが○

  • メリハリが効いた展開。
  • 意外と癖になるレトロな作り。
  • スピーディな展開と読後感の良いラスト。

ここが×

  • 心情も情景も、とにかく描写が物凄く少ない。
  • そのため物凄く駆け足に感じる展開。
  • またヒロインの魅力が伝わってきにくい。

■名前を付けて気持ちを保存

靖国にゆく亡霊」「地下アイドルやめますか」の作者さんによる作品です。この作者さんのシナリオは、とにかく展開がスピーディでテンポがよく、どんどん話が進んでいきます。そのため、短編でも要素が十分詰め込まれており、短編とは思えない盛りだくさんの物語になっているように思います。この作品もそうでした。

また、取り上げられるテーマが、どれも一味変わっているものが多いですね。この作品は、普通の学園恋愛ものと思いきや、冴えない主人公の元に神様の声が聞こえてきて、スマートフォンのような「願いを叶える機械」をもらえる、という出だしです。この機械に願いを打ち込むと、神様がそれを叶えてくれるという、夢のようなアイテムです。

彼女の気持ちを書き換えて主人公の野辺留(のべる、と読む。凄い苗字だ)は、クラスメイトの宮林世羅に密かに憧れているのですが、特に目立つ特徴もない彼は、世羅の眼中にありません。なので野辺留は、手始めに「世羅が自分を好きになる」と神様からもらったスマホに打ち込むのですが、何も起きず……というような展開。神様からスマホにメールの返信が来るのがなかなか面白く、姿を見せないながら、この神様がなかなかいいキャラクターをしています。まあ、投げやりであるとも言えますが、どちらにせよ、あまり神様っぽくはありません(笑)。

そしてこの神様スマホ、1つ願いを叶える度にバッテリー表示メーターが減っていく、という秘密があるのですが、実はその度に使った者の寿命が縮んでいくのです。これがあるため、超短編でありながら、後半はその急展開も手伝って、なかなか緊迫感のある展開となります。世羅のために必死に努力する主人公が、ちょっと格好良く見えました。

また、主人公は物凄い機械を手に入れているので、その気になればもっととんでもない願い事をする事もできるはずなのですが、野辺留はそのような事はしません。終始世羅との、現実的なちょっとした願い事しかしないのです。冴えない男ではありますが、この小市民感と、世羅のために後半必死になる様子は読者の共感を呼びます。そのため、気持ちよく読み進める事ができました。

ただ、これは「地下アイドルやめますか」でもそうだったのですが、全体に描写があまりにも少なすぎて、主人公や登場人物の心情が十分に伝わってきません。とにかく、気がついたら次のシーンに移っているという感じで、場面場面の余韻も何もあったものではありません。プロットは面白いのですから、全く同じプロット、同じ展開で、もっと描写を盛り込んでみれば、数段作品のレベルが上がったような気がするのですが……。ここぞというシーンは、もっとじっくり描写すれば、同じイベントでも読み手に与える印象がかなり異なるはずです。

描写が少ない事にも関連しますが、心情描写もほとんどなく、イベントも必要最小限なので、ヒロインである世羅の魅力も伝わってきにくくなっています。もう少し、野辺留と世羅の交流イベントでもあれば良かったような気がするのですが。描写もですが、展開はスピーディではあるものの、緩急に欠けるところがあるんですよね。描写を増やすか、あるいは展開にもう少し緩急をつけてみれば、だいぶ印象は変わったかも知れません。

文章も絵も、なんだか古のパソコンゲーム(PC-8801とか、あの頃)を彷彿させるようなレトロ感がありますが、この作者さんのそのレトロ感と、ストレートでテンポの良いシナリオは、よくマッチしていると思います。これがこの作者さんの魅力なのではないかと。あっという間に終わる作品ですが、その意味でプレイ時間以上の満足度を感じられると思います。オチのつけ方も綺麗で、読後感も気持ち良かったですね。神様はやっぱりツンデレです(笑)。

ツールは吉里吉里ですので、安心してプレイできます(まあ、プレイ時間が短いので、さほどプレイ感覚は気になりませんが)。プレイ時間は10分。選択肢のない一本道の物語です。10分の短編で、きちんと起承転結をつけるのは難しいものですが、その意味では、短い中にしっかりと起伏が盛り込まれており、その意味では感心させられました。気軽に読める恋愛ものをお探しの方にお勧めです。
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