第502回/どこかできっと交わる幸せ - 夜半の夏、地下鉄にて(致意 & 陽炎) - 不思議系
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第502回/どこかできっと交わる幸せ - 夜半の夏、地下鉄にて(致意 & 陽炎)

不思議系
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夜半の夏、地下鉄にて

夜半の夏、地下鉄にて準推薦
■制作者/致意 & 陽炎(ダウンロード
■ジャンル/地下鉄で並行世界を語るノベル
■プレイ時間/15分

毎日夫婦喧嘩を繰り返す両親に嫌気がさし、主人公はある夜あてもなく地下鉄に乗り込んだ。同じ車内にいた女性を見て彼は目を疑う、かつてクラスメイトだった仲夏がそこにいたのだ。やがて言葉を交わし始める2人だが、仲夏は驚くべき事を口にし始めた。読めば、他の物語に対する見方もちょっと変わるかも知れない、不思議な地下鉄の物語。

ここが○

  • 動く立ち絵がとても美しい。
  • 声がまたイメージに合っている。
  • 地味な物語だが、語られている内容の深さとラストに感じさせる救い。

ここが×

  • ウィンドウサイズの変更がほぼできない。
  • 声を飛ばすことができず、ストレス。
  • 人によってはすっきりしないかもしれない物語。

■どこかできっと交わる幸せ

またも短編のご紹介。短いのですが、その短さの中にかなり密度の高い内容が詰まっています。地下鉄は、下車駅で降りて階段を上ると全く別の場所ですし、乗車中は景色が見えない事から、乗っていると時に現実との解離を感じさせますが、そんな雰囲気もこの作品には合っていたように思います。「夜の汽車や電車」よりは、地下鉄が雰囲気に合っているように感じました。

冒頭、主人公が自宅の雰囲気に嫌気がさし、将来にも希望が持てずに、何となく地下鉄に乗り込みます。背景画像は写真ではなくCGのように見えますが、不自然なところもなくとても美しく、雰囲気によく合っています。そして地下鉄の中で、かつてのクラスメイトである仲夏(読み方が分からない……)。この作品は元はどうやら台湾の方が作ったもののようで、それを訳者さんが日本語にしたものらしいので、この名前は台湾風なのかも知れません。

夜半の夏、地下鉄にて仲夏の立ち絵は、これまたアニメっぽくない独特の絵柄。水彩画風の彩色もとても上手く、彼女のミステリアスで儚げな空気感を高めています。そして物語は終始、地下鉄車内で仲夏との会話だけで進みます。そんなところは、少し名作「それじゃあ、またね」を思い起こさせますね。

会話内容は、しかし男女のムードは全くありません。仲夏がいきなり難しい理屈を語り始めるので、読んでいる側も「??」となるかも知れません。その上仲夏が「実は」と語り始める事実が荒唐無稽で、更に何の前触れも伏線もないので、面食らってしまうでしょう。ここはもう少し、前提となる描写があっても悪くはなかったような気がしますが、どうでしょうか。

そしてその後に突然やって来る終局。来るのが予告されていただけに唐突で悲しいのですが、仲夏が語っていた事実の為に、普通の悲劇的な結末の作品に比べると、知覚できない他の世界では、仲夏との幸せな結末もあったのではと、読み手にほのかな期待を抱かせます。この、読み手に対する期待の抱かせ方の塩梅がとても素晴らしく、これはなかなか狙ってできるものではありません。舌を巻きました。このラストだけでも準推薦に値します。

ただやはりどうしても、尺の短さから語り切れていないところはあるので、若干の消化不良感は残るのですが、そこはそれそういう物語なのだと納得しましょう。もちろん、主人公と仲夏との過去の出来事など、回想シーンででも見せてくれていればと少し思ったのですが、しかしこの作品は、地下鉄の中で二人の会話だけで進むところに独特の味がありますので、そんな事をしたらかえって蛇足になったかも知れません。

翻訳作品ですが、文章に不自然なところは見られません。かなり小説寄りの文章ですが、ワイド画面に縦書きというレイアウトも手伝って、読みにくさは感じませんでした。このレイアウトなら、ワイド画面もありだなと感じさせられます。ただ、ダウンロード版だとウィンドウサイズがフルスクリーンに近い大きさのままほとんど変更できず、これはちょっと参りました。今の大きなデスクトップのディスプレイで、ほぼフルスクリーンに近いウィンドウがずっと出られると、若干の困惑が(苦笑)。その意味では、ブラウザー版の方がプレイしやすいかも知れません。こちらは自由にウィンドウサイズが変更できます。

それと、仲夏はフルボイスで喋り続けます。演技もちょっとハスキーな抑揚に欠ける声で、仲夏に合っていて好演だと思うのですが、この声が一切飛ばせないのです。これも困りました。私はフルボイスの作品でも全部声を聞く事はまずしません(時間がかかりすぎるので。でもここぞというシーンでは全部聞きますよ)。声を聞くかどうかは、やはり読み手に選ばせて欲しいです。飛ばせれば、聞くか聞かないかは読み手次第ですが、飛ばせないと聞かないという選択肢を読み手から奪っているも同然ですからね(これは、エフェクトが飛ばせないなどでも同じ)。

ツールはティラノスクリプトです。相変わらず、正直操作性がいいとは言えません。ただ、15分の短編作品ですから、そこまでは気にならないでしょう。選択肢のない一本道です。人によっては、ラストにすっきりしないものを感じる可能性もあります。が、とにかく「何かを心に残してくれる」という意味では、これほど読後にずしりと重いものを残してくれる短編も、そうはないと思います。プレイ時間はわずか15分です。是非読んでみてください。お勧めします!
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