第504回/ミクロの夢からマクロの現実へ - 両手に今夜水を持って(こゆび反応) - オムニバス・その他
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第504回/ミクロの夢からマクロの現実へ - 両手に今夜水を持って(こゆび反応)

オムニバス・その他
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両手に今夜水を持って

両手に今夜水を持って■制作者/こゆび反応(ダウンロード
■ジャンル/世界の運命決定ノベル
■プレイ時間/20分

あるところでひっそりと活動している魔法使いの元に、1人の女性がやって来た。魔法使いに叶えて欲しいお願いが会って、はるばるやって来たと言う。女性のお願いとは一体。そして魔法使いの反応は? この他、全身麻痺の女性のお話、父親を無くした少年の話と、合計3本の短編が収められている、オムニバス形式の短編集。

ここが○

  • 高い文章力。
  • 音楽やデザインなどのクールなセンス。
  • なるほどと思わされる全体の構成。

ここが×

  • エンターテインメント性が高い作品ではない。
  • なので人によって合う合わないがあると思われる。
  • ワイド画面が妙にだだっ広く感じられる。

■ミクロの夢からマクロの現実へ

今回は、文章だけで絵がない純粋なノベル形式の作品のご紹介です。しかも、作りがかなり独特です。構成的には、3本の短編が収められているオムニバス形式の短編集ですが、構成が非常に独特です。短編集で構成が独特だった作品というと、真っ先に「こいいろ」が思い浮かびますが、今作はあの作品とはまた発想が異なります。

どう異なるかは読んでみればすぐ分かりますので、ここでは書かないでおきます。今までにこういう構成で作られたフリーノベルゲームは多分ないと思います(私はプレイした事がありません)。とりあえず、まずはプレイしてみてください。2本目が始まった時に、なるほどそういう事かと気付きますので。

両手に今夜水を持って1本目の話は、ファンタジー風です。人里離れたところでひっそりと活動する魔法使いの元に、顔をフードで隠した女性が、願いを叶えて欲しいとやって来ます。この作品、まずは文章力がとても高いので感心させられました。文章力が高いのに、読みにくくありません。もう少し文字サイズを大きくして、一行に表示される文字数を少なくしてもいいかな、と感じるところもありましたが、改行ピッチも広めに取られていて、配置的にもまずまずの読みやすさでした。

1本の話は、多分5分程度で読み終わると思います。読み終わるとシナリオ選択画面に戻ります。そうすると、選べる話が1本増えています。2本目は、全身が麻痺して動かせない女性の話です。読んですぐに、この作品に隠された(別に隠されてはないけど)秘密に気がつくでしょう。何とも変わった構成の物語です。その構成の妙味に、感心させられました。

ただ、感心はさせられましたが、エンターテインメントという意味から判断しますと、この構成だと次の物語に進んだ瞬間、前の物語の感銘や余韻が、何というか「なーんちゃって♪」的にすかされてしまう嫌いもあります。なかった事にされる、というとちょっと大げさですが。それは、3本目のシナリオでより顕著に表現されています。構成は面白くある意味文学的であるとも言えますし、この世界観を考えていくと大変深いとは思うのですが、エンターテインメント的であるとは言えない気がします。

もっともこの作者さんは、その硬めの文体からもうかがえるように、最初からエンターテインメント性の高い物語など目指していないように見えます。物語を表現したい訳ではなく、作品を通して、哲学的な思想を表現したかったように思えるのです。そう思って読めば、独特の構成と文章が、読み手一人一人の思想を刺激してくれる、とても面白い物語であると思います。

そういう訳ですので、読み手によって合う合わないがある作品だと思います。文章を読む事で思考を刺激されるのが楽しいという方ならば、かなり思考を刺激してくれる作品です。ただ「起承転結のある面白い物語を読みたい」であれば、ちょっと合わないかもしれません(ある意味、起承転結がちゃんと備わった物語でもあるのですが……)。私は「物語を楽しむ」という観点では、それほど楽しんだ訳ではないのですが、適度に思考を刺激されて、なるほどそういう意味では楽しい時間を過ごせました。

そして、見れば分かる通りのワイド画面なのですが、文章だけなのでかなりだだっ広く感じます。特に文章だけの作品にワイドが適しているとは、私はあまり思わないのですが、どうなのでしょう。レイアウトはなかなか面白いです。ちょっと角度を傾けたフレームの後ろから、シンプルな背景画面が覗いていて、ワイド画面を採用したのはこのレイアウトのためなのかも知れません。音楽も含め、全体にクールな雰囲気が漂っています。

ツールは吉里吉里です。プレイ時間は、3本読んで20分程度。選択肢はありません。想像力を刺激されるのが好きな方、文章をじっくり読むのが好きな方にお勧めします。私は、読了後しばらく考え込んでしまいました。創作活動をした事がある方なら、この作品を読めば、きっと何か感じるところがあるかも知れませんよ。
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