第505回/やがて色付く君との思い出 - MONOCHROME(NOSTALGIC GARDEN) - 日常
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第505回/やがて色付く君との思い出 - MONOCHROME(NOSTALGIC GARDEN)

日常
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MONOCHROME

MONOCHROME■制作者/NOSTALGIC GARDEN(ダウンロード
■ジャンル/夏休みに少年少女山登りノベル
■プレイ時間/40分

夏休み、祖父の田舎へと帰省中の小学生松葉皓平は、汽車の中で大きな荷物を持った少年と出会う。駅に着くなりその少年を見失い、皓平は成り行きからその少年の行方を追う。少年が向かったのは山の中。皓平の助けを拒むような態度の少年は、一体山で何を探そうとしているのか。夏の思い出を探しに行く、ノスタルジックな短編物語。

ここが○

  • 白黒の画面が懐かしさを刺激する。
  • 短編だが適度なメリハリの効いたストーリー。
  • 余韻十分で開放感のあるラストの演出。

ここが×

  • 主人公の皓平があまり小学生らしくないような。
  • 少々文字が読みにくい。
  • 白黒の背景があまり夏っぽくない。

■やがて色付く君との思い出

私は時折、意図的に古い作品を探しに行ったりします。この作品は2005年の公開ですから、13年前。制作者さんの名前に見覚えがあると思ったら、「本当の願い事」の作者さんでした。あちらとは随分雰囲気の違う作品ですが、主人公の性格設定に、少し近いものも感じさせてくれます。

この作品の舞台は、夏の田舎。お馴染み「夏に帰省もの」です。もう例を挙げるまでもなく、同様の舞台の作品は山のようにあります。一番最近であれば「花は誰そ彼に死折れる子。」「探しものは、夏ですか。」がそうですが、それ以外にもたくさんありますね。この舞台設定だけを集めても、立派な作品集が出来上がりそうです(?)。

MONOCHROMEこの作品は、タイトル通り立ち絵や1枚絵が終始白黒です。これがなかなかいい雰囲気ではありますし、ラストではこれが演出としても効いてくるための準備となっているのですが、「夏の田舎」を表現するには、ちょっとこの白黒の画面は味気ない感じもします。夏っぽさが、画面から感じられないのですよね。同じ単色調でも、白黒ではなくもうちょっと違った色味にしてみても良かったように思うのですが……。

さて、主人公は小学生の皓平です。が、この主人公があまり小学生らしくありません。ひねくれた高校生くらいに見えてしまいます(笑)。「本当の願い事」でも、主人公はちょっとそんな感じで、読み手の感情移入を拒むようなタイプでしたから、これがこの作者さんの作風でもあるのかも知れませんが、もうちょっと子供らしさを前面に出しても良かったような気がします。

ただその主人公も、汽車(「電車」ではなく、この手の作品では「汽車」という表現がふさわしいように思います)の中で出会った少年を放って置けなかったり、面倒見のいいところも垣間見せます。もう少し、その辺りを心情描写でアピールしるというのも、ありだったかも知れませんね。ま、皓平は別に終始醒めた奴という訳ではないので、これはこれでありなのかも知れません。

後半には意外な謎(というほどでもないですが)が明らかになります。長い物語であれば少し唐突に感じたかも知れませんが、短編ですから、ちょうどいいバランスだったと思います。前半であまり伏線を出し過ぎず、前半をぱたっと締めて、間髪入れずに秘密を公開する、その配分が非常に良いのですね。物語の適度な起伏との相乗効果で、読み手の感情を適度に動かしてくれます。この辺りの巧みさは「本当の願い事」でも見せてくれたところで、流石と言えます。

物語というのは、やたらイベントを起こしたり、印象的な場面を盛り込めばいいというものではありません。物語が取り立てて動かない日常シーンと、物語が動くイベントシーンのバランスが肝です。そのバランスを間違えると、退屈になったりどぎつくなったりするものですが、今作はそのバランスがとてもちょうど良く感じました。短編物語を作りたい方は、この作品をプレイしてみると、色々と勉強になるところがあると思います。

そしてラスト。ラストシーン自体も前向きで希望を感じさせてくれるものですし、それまでの白黒の、ちょっと閉塞感のある画面から、ここで一気に解き放たれるという演出も見事でした。この対比を狙っているならば、白黒の画面もありかも知れないと思わされました。ただ、古い作品でウィンドウの大きさは640x480なのですが、にも関わらず文字サイズが小さめで、さらに透過率高めの全画面テキストウィンドウの後ろに白黒の絵が来るものですから、文章が読み辛いです。文字を大きくするか、画面下部のテキストウィンドウを使うという手もあったような気がします。

ツールはLive Makerで、バージョンはかなり古めですが(冒頭にヒューマンバランスのロゴが出てきますし)、プレイに支障は全くありません。選択肢で3種類のエンディングに分岐しますが、分岐条件はそれほど難しくないので、さほど苦労はしないと思います。13年前の作品ですが今プレイしても古さは感じさせません。短編のお手本とも言えるシナリオ構成の作品です。
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