第510回/ダークでシニカルな短編集 - 題名はない(ARIS VALENTINE) - ナンセンス・不条理
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第510回/ダークでシニカルな短編集 - 題名はない(ARIS VALENTINE)

ナンセンス・不条理
  • comment0
  • trackback-

題名はない

題名はない■制作者/ARIS VALENTINE(ダウンロード
■ジャンル/超短編13本詰め合わせノベル
■プレイ時間/20分

戦争が起こり、民間人がどんどん召集される時代のお話や、ちょっと捻った浦島太郎やシンデレラのパロディなど、様々なテーマ、様々な文体を2分程度で読める、ショートショートが12本。ちょっと皮肉っぽく、暗めの展開が多いものの、オチにひねりが効いている作品が収められた短編集。

ここが○

  • 全部読むと、ちょっとした真相が明らかになる。
  • 捻りが効いた「考えオチ」の作品が多い。
  • テーマも文体もバラエティに富んでいる。

ここが×

  • 文章が読みにくいところがある。
  • 暗くて皮肉っぽい作風が多いので、合わない人もいるかも。
  • 地味すぎる見た目。

■ダークでシニカルな短編集

今まで短編集も何度かご紹介しましたが、これはまた独特な作風の一作です。12本(+1)の短編が収められていますが、それぞれ読了に要する時間は1分少々。超短編、ショートショートが多数収められた作品集と言えます。それぞれの作品の間には、世界観や登場人物に何か関連がある訳ではなく、全ての話は基本的に独立した存在です。

文章やセンスが、独特です。皮肉っぽく、少しダークな展開の物語が多く、またどの話もちょっとした捻りが効いている「考えオチ」が付いています。こういう、オチで一瞬考えて、その後腑に落ちるような作品、結構好きです。短編であっても、考えさせられるのが好きという方であれば、楽しんで読めると思います。凄く短いので、「?」と思ったら、もう一度頭から読み返してみましょう。それほど難解な話はないはずです。

題名はない全12本は、舞台もテーマもばらばらです。上から順番に読む必要もないのですが、読んだ作品に何か印が付くわけでもないので、上から順番に読んだ方が分かりやすいでしょう。文体も、共通化と思いきや、意外と各作品で変えてきており、それが独特のリズムを生んでいます。短編集として、単調にならずに一気に読ませる力のある作品だと思います。

ただ、こういう作風は好みが分かれそうでもあります。合わない方には合わないかも知れません(私自身も、暗くて皮肉っぽい作風の物語は、全面的に好きという訳ではありません)。また、感動するとか心が暖かくなるとか言った作風でもありません。それでも、短くてすぐに読める話ですから、たまには「自分に合わない」という作品でも、味わって損はないでしょう。私は、12本の作品それぞれから刺激をいただけました。

12本の話を全部読むと、13本目の話が現れ、真相(というほどのものでもないですが)が明らかになります。真相を読んだからすっきりするとか感動するとか、そういう事はないのですが、上手いまとめ方だなと思わされました。作風がある意味ばらばらだったのも、この真相を読むと納得させられます。あえて意図的に作風をばらけさせているんでしょうね。

13本の話のうち、「劣等生」「おっちょこちょい」「そういう事もある」が特に印象に残りました。13本分でnscript.datの容量が3KBですから、1本辺りの文字数は千文字ちょっとでしょう。自分で描いてみれば分かりますが、千文字できちんとオチをつけて、話としてまとめるというのは大変な事です。どの話も、わずか千文字で話としてまとまっており、その文章力と構成力には終始感心させられっぱなしでした。

その文章。文書は整っていて読みやすいのですが、一部読みにくく感じるところもありました。上のスクリーンショットの箇所など、ずーっと改行がなく文章が並び、更に感嘆符(「!」)の後に空白が入っていないので、かなりのごちゃごちゃ感があります。感嘆符の後には、やはりスペースを入れた方がいいです。決まりだからそうした方がいいというよりも、単純にそのほうが読みやすいですから。

あとは、ちょっと地味すぎると感じる人がいるかも知れません。本編中、背景画像は全くなく、タイトル画面がそのまま後ろに表示されているだけです。それはそれで想像力を高めてくれるとも言えますが。あと、BGMも「え、こういう曲使うの?」と、若干ミスマッチを感じたシーンもありました。これも、そのミスマッチがそれはそれでちょっと皮肉っぽいイメージを増してくれている気もしますので、これでいいか、と思ったりもするのですが。

ツールはNScripterです。プレイ感覚は普通のNScrですが(文字表示速度が変えられなかったり、クリック待ちカーソルが出ないのは、ちょっと不親切のようにも感じましたが)、メニュー画面が全部「栞をどうの」になっていて、最初は何事かと思いました(笑)。全13本を読んで、プレイ時間は20分程度だと思います。選択肢はありません。大人な風味のショートショート作品集です。あえてゆっくり読んでみるのがお勧め、かも知れません。
関連記事

Comments 0

Leave a reply