過去作プレイバック/第2回 - SOLAR POWER - 過去作プレイバック
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過去作プレイバック/第2回 - SOLAR POWER

過去作プレイバック
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SOLAR POWER意外と好評かも知れない(?)過去作プレイバック。2回目は、「SOLAR POWER」です。有名作ではないかも知れませんが、隠れファンの多い作品だと思います。つい最近の作品だと思っていたら、初出は2012年ですからもう6年も経つんですね。早いものです。

この作品は、典型的な「ボーイミーツガール同居型」です。作りはシンプルなのですが、母親である早苗を、上手くストーリーに取り込んでいるのが上手い構成。中盤での衝撃的なイベントと、そこから明らかになる空の秘密、そして解決方法があまりにも斜め上を行っていて、読み手を驚かせずにはおれないでしょう。

今改めてプレイしてみますと、前半の唐突さがちょっと目につきました。これは作者さんの処女作で、作り慣れていなかったせいもあるのでしょう。リメイク版「SOLAR MEMORY」では、その辺りが見事に解消されていました。登場人物は、主人公の誠、ヒロインの空、それに誠の母親である早苗の3人だけなのですが、その3人だけで見事に、決して短いとは言えない物語を組み上げているのですから、処女作ではありながら、作者さんのストーリーテリングの才能は大したものだと思います。

吉里吉里を使って作られているのですが、エフェクト類が一切スキップできませんので、今プレイするとそこは少し辛いものがあります。ctrlや吉里吉里独特のFキーによる無条件スキップもできません。まあ、完全に一本道の物語ですので、この作品から最初にプレイする分には問題ないでしょう。

SOLAR POWERこの作品の何が秀でているかって、展開バランスの良さです。起承転結(「転」は言うまでもなく、早苗のあのイベント)がきちんと整えられており、それらの時間配分がちょうどいいのです。たくさんある作品の中には、「起承」がえらく長く、「転」がかなり最後の方にならないと来ない作品や、逆に「起承」があっさりと通り過ぎ、「転結」が妙に長い作品もあったりするのですが、この作品はそのバランスがとても良好でした。

こう言うバランスの良さは、プレイした時の印象だけでなく、ストーリーの盛り上がりに直結します。起承転結は、ある程度時間配分も考えるのが良さそうです(作品自体の長さとも絡みますから、画一的に語ることもできないのですが)。ただ、恋愛ものとして見ると、空が誠に惹かれる理由付けが少し弱いようにも感じられました。前半に、1つ何か決定的なイベントでもあれば、と。この辺りも、リメイク版「SOLAR MEMORY」ではある程度解消されています。

わざわざリメイクするくらいですから、作者さんとしてもかなり思い入れのある作品だったのでしょう。そう言う思い入れが、プレイしてもしっかり伝わってきます。そう言う意味で、荒削りではあるのですが、作者さんの創作への勢いが強く感じられる作品で、フリーならではの良さを味わえる作品だと思います。

ラストは、純粋なハッピーエンドではない、捻りの効いたハッピーエンド。こう言う「時を越えて思いが繋がる」という系統の終わり方も、フリーではあまり見ないタイプのものです。短編でもなく、凄く長編でもないのですが(1時間半くらいです)、このラストを今改めて読んでみても、作者さんが渾身の工夫を凝らした物語である事が、今プレイしてもよく分かります。ちょっとした思いつきだけでは、なかなかこんなシナリオが作れるものではありません。

作者さんは、この作品の後に「ポックリが鳴った夏」を公開し、更にこの作品のリメイク「SOLAR MEMORY」を作って、どちらも優れた作品でしたが、残念ながらそれっきり活動を停止してしまいました。デビュー作であるこの作品の完成度からして、まだまだ凄い作品を書ける可能性があった作者さんだったと思うのですが……。私もひょっこり創作界に戻って来ましたし、この作者さんの新作がいつか見られる事を、少し期待しています。

なお、作者のヒビキソラさんとは、合作ノベル「ななつぼし」でご一緒しました。そちらでは「復讐の遺伝子」という作品をお書きになっています。「SOLAR POWER」「ポックリが鳴った夏」とは全く違う方向のサスペンスものに仕上がっており、こちらも読み応え十分です。

「SOLAR POWER」に感動し、この作品のような物語を読んでみたいと思った方が「復讐の遺伝子」を読むと、背負い投げを食らう可能性もありますが(笑)、ヒビキソラさんらしい構成の上手さは存分に味わえますので、この作品を読んでヒビキさんファンになった方は「ななつぼし」も是非プレイしてみてください。私も、自分が書いた共通ルートから、まさかあんな話が出来上がってくるとは思っていませんでした(笑)。

フリーノベルゲームの世界って、多くの場合は公開直後だけ注目され、あとは緩やかに忘れられていく運命にあります。しかし、古い作品にも大量の良作が眠っています。このブログを通じて、そういう作品を1本でも多く紹介し、公開済みの良作をプレイする方が、少しでも増えてくれるといいなと願っています。
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